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シュタイン王国元大使視点 叛徒共に降伏勧告を勧める使者になりました
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俺はシュタイン王国の元インスブルク王国駐在大使、ドラクエ男爵だ。
俺様は大使だった時にインスブルクの奴らに呼び出されて散々な目に合わされた上に、書面を持たされてシュタインの王宮の傍の畑の肥だめに転移させられたのだ。
もう散々だった。
お陰でついたあだ名が肥だめ男爵とか本当にしゃれにもならないのだが……
その上、
「貴様、こんな要求をおめおめと受けて帰ってきたのか!」
と陛下と王妃様から御不興を買って、男爵に降爵されたのだ。
もう本当に踏んだり蹴ったりだった。
絶対にインスブルクの奴らに仕返ししてやる。
俺は心に決めていた。
そんな俺が久々に王宮に呼び出された。
すわ、許して頂けるのかと喜んだ俺が連れ出された先は、竜娘に張り倒されて重傷を負わされた王太子殿下の御前だった。
俺は不吉な予感がした。
「貴様がインスブルクから下らん要求をもらってきたドラクエ男爵か」
開口一番王太子の声を聞いて、俺は予感が当たったのを知った。
「殿下がお呼びだ」
側近に促されて
「はい」
と俺は頷くしか出来なかった。本当はそんな要求は陛下と王妃様から聞いただけで俺は見る暇もなく転移させられただけだ。
俺は余程そう言いたかった。
それも転移させられたのは肥だめの中だ!
それでもちゃんと書面を持って報告したことを褒めてほしかった。
尤もこんな事になるのならば書面を肥だめの中にほっておけば良かった。
書面を汚してはいけないと、とっさに自分の身よりも大切だと思った書面を肥だめの上に掲げたのだ。汚れないように!
でも、俺の行為は何一つ俺にとってプラスにならなかった。それどころか男爵位に降爵されることになったのだ。本当にこんな事になるのならば書面を捨てればよかったのだ。
俺はその事をとても後悔していた。
「貴様に挽回の機会を与えてやろう」
「ほ、本当ですか?」
俺は王太子殿下の言葉に食いついた。
「ああ、ここに反乱軍共に対する降伏勧告の文章を作った。これをもって奴らの元に行くのだ」
「えっ!」
俺は王太子殿下の言葉に唖然とした。それって死にに行けというものではないんだろうか?
奴らはシュタインの外交大使である俺にさえ、あんな酷いことを平気でしてくれたのだ。降伏勧告なんて持っていけば下手したら殺されるかもしれない。
「なんだ。挽回の機会は要らないのか? なんならここで叛徒共に内通した罪で処刑しても良いのだぞ」
王太子はとんでもないことを言ってくれた。それは王太子が本気になれば内通のえん罪を着せるのは訳もないだろう。どちらにせよ生きていけないではないか……
俺は何も考えられなくなった。
「ふんっ。心配するな。貴様は我が軍20万を背負っているのだ。貴様に何かあれば我が軍20万がその仇は取ってやる」
王太子は自信を持って言ってくれた。やはり俺は殺されに行くしかないのか?
俺は絶望した。
「なあに、そんなに心配するな。貴様は軍使として反乱軍共の所に行くのだ。いくら何でも殺されはしまい」
王太子はそう言ってくれたが、あいつらにそう言う常識が通用するのだろうか?
俺はとても不安だった。
「反乱軍共は所詮寄せ集めの集団だ。これは機密事項だが、すでに2、3の貴族からは内応の約束を取り付けておる。我が軍20万が攻めてくると知れば奴らは更に動揺するだろう」
王太子は自信を持って言ってくれた。
「貴様が降伏勧告を持って行けば更に内応する貴族が出てくるはずだ。そこを我が軍20万が攻撃すれば敵は内部崩壊してくれよう。そのあと、いくら竜娘が頑張ろうが、もう収拾がつかなくなるはずだ。我が軍の圧勝は間違いないわ」
王太子はそう言うと笑ってくれた。
「しかし、こんな書面を持っていっては、竜娘は怒り狂いましょう」
俺は恐る恐る言ってみた。
「ふんっ。なんだ怖じ気づいたのか?」
王太子は機嫌を悪くしたみたいだった。
「いえ、そういう訳ではございませんが……書面を渡しても投獄されれば復命できませんが」
「案ずるな。貴様が例え捕まったとしても、内応している奴らに手加減をするように伝えてある。我が軍が制圧した時には貴様の身分も元の子爵に戻してやるわ」
王太子が子爵位に戻すと約束してくれた。
俺はその言葉を信じることにした。
まあ、殿下の言うように、この前も殺されはしなかった。されても肥だめに落とされる程度だ。一度も二度も同じだろう。本当に嫌だが、それで子爵位に戻してもらえるのならば、やる価値はあるだろう。
俺は決心した。
どのみち、インスブルクの奴らには前回煮え湯を飲まされたのだ。そして、絶対に仕返しをしてやると心に誓ってもいた。
そのインスブルクの奴らが、内応されてうろたえる様を見るのはとても楽しみだった。
そうなったら横で精一杯笑ってやるのだ。
竜娘が捕まれば横で高笑いしてやる。許されるなら肥だめに落としてやっても良い。
俺はその時、竜娘が驚き慌て泣き叫ぶ様が脳裏に浮かんでとても楽しみになった。
*************************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
少し遅くなりましたが、ついにシュタイン王国の反撃です。
内応者は本当に出るのか、お楽しみに。
俺様は大使だった時にインスブルクの奴らに呼び出されて散々な目に合わされた上に、書面を持たされてシュタインの王宮の傍の畑の肥だめに転移させられたのだ。
もう散々だった。
お陰でついたあだ名が肥だめ男爵とか本当にしゃれにもならないのだが……
その上、
「貴様、こんな要求をおめおめと受けて帰ってきたのか!」
と陛下と王妃様から御不興を買って、男爵に降爵されたのだ。
もう本当に踏んだり蹴ったりだった。
絶対にインスブルクの奴らに仕返ししてやる。
俺は心に決めていた。
そんな俺が久々に王宮に呼び出された。
すわ、許して頂けるのかと喜んだ俺が連れ出された先は、竜娘に張り倒されて重傷を負わされた王太子殿下の御前だった。
俺は不吉な予感がした。
「貴様がインスブルクから下らん要求をもらってきたドラクエ男爵か」
開口一番王太子の声を聞いて、俺は予感が当たったのを知った。
「殿下がお呼びだ」
側近に促されて
「はい」
と俺は頷くしか出来なかった。本当はそんな要求は陛下と王妃様から聞いただけで俺は見る暇もなく転移させられただけだ。
俺は余程そう言いたかった。
それも転移させられたのは肥だめの中だ!
それでもちゃんと書面を持って報告したことを褒めてほしかった。
尤もこんな事になるのならば書面を肥だめの中にほっておけば良かった。
書面を汚してはいけないと、とっさに自分の身よりも大切だと思った書面を肥だめの上に掲げたのだ。汚れないように!
でも、俺の行為は何一つ俺にとってプラスにならなかった。それどころか男爵位に降爵されることになったのだ。本当にこんな事になるのならば書面を捨てればよかったのだ。
俺はその事をとても後悔していた。
「貴様に挽回の機会を与えてやろう」
「ほ、本当ですか?」
俺は王太子殿下の言葉に食いついた。
「ああ、ここに反乱軍共に対する降伏勧告の文章を作った。これをもって奴らの元に行くのだ」
「えっ!」
俺は王太子殿下の言葉に唖然とした。それって死にに行けというものではないんだろうか?
奴らはシュタインの外交大使である俺にさえ、あんな酷いことを平気でしてくれたのだ。降伏勧告なんて持っていけば下手したら殺されるかもしれない。
「なんだ。挽回の機会は要らないのか? なんならここで叛徒共に内通した罪で処刑しても良いのだぞ」
王太子はとんでもないことを言ってくれた。それは王太子が本気になれば内通のえん罪を着せるのは訳もないだろう。どちらにせよ生きていけないではないか……
俺は何も考えられなくなった。
「ふんっ。心配するな。貴様は我が軍20万を背負っているのだ。貴様に何かあれば我が軍20万がその仇は取ってやる」
王太子は自信を持って言ってくれた。やはり俺は殺されに行くしかないのか?
俺は絶望した。
「なあに、そんなに心配するな。貴様は軍使として反乱軍共の所に行くのだ。いくら何でも殺されはしまい」
王太子はそう言ってくれたが、あいつらにそう言う常識が通用するのだろうか?
俺はとても不安だった。
「反乱軍共は所詮寄せ集めの集団だ。これは機密事項だが、すでに2、3の貴族からは内応の約束を取り付けておる。我が軍20万が攻めてくると知れば奴らは更に動揺するだろう」
王太子は自信を持って言ってくれた。
「貴様が降伏勧告を持って行けば更に内応する貴族が出てくるはずだ。そこを我が軍20万が攻撃すれば敵は内部崩壊してくれよう。そのあと、いくら竜娘が頑張ろうが、もう収拾がつかなくなるはずだ。我が軍の圧勝は間違いないわ」
王太子はそう言うと笑ってくれた。
「しかし、こんな書面を持っていっては、竜娘は怒り狂いましょう」
俺は恐る恐る言ってみた。
「ふんっ。なんだ怖じ気づいたのか?」
王太子は機嫌を悪くしたみたいだった。
「いえ、そういう訳ではございませんが……書面を渡しても投獄されれば復命できませんが」
「案ずるな。貴様が例え捕まったとしても、内応している奴らに手加減をするように伝えてある。我が軍が制圧した時には貴様の身分も元の子爵に戻してやるわ」
王太子が子爵位に戻すと約束してくれた。
俺はその言葉を信じることにした。
まあ、殿下の言うように、この前も殺されはしなかった。されても肥だめに落とされる程度だ。一度も二度も同じだろう。本当に嫌だが、それで子爵位に戻してもらえるのならば、やる価値はあるだろう。
俺は決心した。
どのみち、インスブルクの奴らには前回煮え湯を飲まされたのだ。そして、絶対に仕返しをしてやると心に誓ってもいた。
そのインスブルクの奴らが、内応されてうろたえる様を見るのはとても楽しみだった。
そうなったら横で精一杯笑ってやるのだ。
竜娘が捕まれば横で高笑いしてやる。許されるなら肥だめに落としてやっても良い。
俺はその時、竜娘が驚き慌て泣き叫ぶ様が脳裏に浮かんでとても楽しみになった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました。
少し遅くなりましたが、ついにシュタイン王国の反撃です。
内応者は本当に出るのか、お楽しみに。
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