モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
84 / 174
第二部 学園波乱編 隣国から多くの留学生が来ました

プロローグ 隣国王女視点 赤毛のアンを貶めるために留学することにしました

しおりを挟む
私の名前はテレーシア・スカンディーナ。このスカンディーナ王国の正当な王女だ。

そう、誰がなんと言おうとこのスカンディーナ王国の正当な王女なのだ。

人によってはお父様が前国王を弑逆して王位を奪い取ったという者もいるけれど、お父様は仕方無しにやったのだ。絶対に!



私の父はブルーノ・カッツィア、この国の摂政で大魔術師、おそらく世界最強の魔術師だ。その凛々しい顔立ちで他人に対しては冷たい感じがするが、私はそんな父が好きだった。

母はその父の配偶者でマティルダ。この国の女王だ。凛々しく、40近くなっても体のラインは変わらないしとても美人だ。傾国の美貌とも言われている。母の周りには男の影も多いんだけど、詳しいことは知らない。

そして、兄はドグラスでこの国の第一王子だ。少し、上から目線なところはあるが、王族としては問題ないだろう。父に似て、見目も麗しい。母の血を濃く継いだのか女にはだらしがない。侍女とかにも手を出しているみたいだ。

そして、私は物心ついたときからこの国の第一王女でそのことについて何も疑った事はなかった。

そう、あの時までは。



私が6歳のときだった。私は珍しく、中庭で父と一緒にいた。

父は家庭を省みることは殆どなかったのだが、たまにこうして相手をしてくれた。

「父様。魔術はどうしたら出来るようになるの?」
私はその時は『魔法聖女エリ』の絵本に夢中だった。魔法聖女エリは片手を上げてヒールをかけて魔王を退治するのだ。その姿に私は憧れていた。もっても手を上に上げてやるのは恥ずかしいので今ではやっていないが・・・・。


「そうだな。テレーサが大きくなってこの国の学園に入ったら、先生から教えてもらえるよ」
「ええええ!、だってこの絵本じゃ、子供が使っているよ」
「それは絵本の中の話だからさ。魔術は体が大きくなってからでないと使えないし、危険だよ」
「なんだ、そうなの」
私はがっかりした。まあ世界最高の魔術師の父が言うのだから間違いないのだろう。
私は父の血も引いているから絶対に魔術もそこそこ出来るはずだ。できるだけ早く父に近づきたい。



そんな事を子供心に考えていた時だ。

いきなり、近くの草藪から男が飛び出してきたのだ。

「陛下の敵!」
男はそう叫ぶや、爆裂魔術を父に向けて放ったのだった。

しかし、父は慌てもしなかった。そう、何もしなかったのだ。その男をちらりと見ただけだった。

次の瞬間、爆裂魔術は父の前で壁にぶつかったように止まってそのまま放った男に返って行ったのだ。男が瞬時に弾き飛ばされた。

ズカーーーーン
という凄まじい音を残して。

一瞬の出来事だった。



「お、おのれ、ミラーとは卑怯な」
男は這いつくばって顔を上げた。

「貴様が弱いだけだろう」
父は整然として言いきったのだ。

「おのれ簒奪者め」
父を憎しみに満ちた目で男は見ていた。

「ふんっ、力があるものが王を倒して何が悪い。文句があるならば俺より強くなれ」
父の言っていることはその時はよく判らなかった。

それよりも、私は目の前で起こったことに呆然としていてそれどころではなかったのだ。



そんな男はあっという間に現れた、騎士達によって連れて行かれた。




何が起こったか、私にはよく判らなかったが、何か父が良くないことをしたというのは娘心にも少し判った。

そして、父が前国王を弑逆してこの国を乗っ取ったというのを知ったのはもっと後になってからだった。

「お父上様は、暗君だった、あなたのおじを正すために立ち上がられたのです」
母は、常々そう言っていたが、本当にそうだったかはわからない。

ただ、父は力があるのは事実だった。今も絶対的な力をもってこのスカンディーナ王国を支配している。父の前では皆とても緊張していた。

父が言うように、父に裏切られた叔父がそれに気付けなかったのが悪かったのだ。力があるものが権力を握るのは当然のことだと私は思ったのだ。




そんな事があって父は益々私を構ってくれなくなった。

私はそんな父に少しでも構ってほしくて、必死に勉強に、魔術の訓練に、礼儀作法やダンスのレッスンを頑張ったのだが、父は認めてくれるそぶりはなかった。

私は父にとってまだまだなのだ。もっと頑張らねば・・・・。時に投げ出したくなったが、まだまだ努力が足りないのだ、と思って歯を食いしばって頑張ったのだ。



そんな時だ。私は珍しく父の執務室に呼ばれた。

私は喜び勇んで父の執務室に行ったのだ。



「テレーサ、一度、オースティン王国の王立学園にに留学してみるか」
「えっ」
父の言葉に私は驚いた。

父のいうオースティン王国の王立学園には、父が殺した前国王の忘れ形見の王女アンネローゼがいることが判明したばかりだ。それも、アンネローゼは生まれた頃にオースティンの王太子と婚約していたのだが、それがそのまま続いているのだというのだ。

私はそれを聞いた時にそれが信じられなかった。我が国で無能で殺されたとしている元国王の娘を、婚約者にしたままとは、我が国に喧嘩を売っているに等しい。

新スカンディーナ王国などというふざけた国を支援している隣国エスカール王国ですらそんなことはしていないのだ。もっとも新スカンディーナ王国は前国王の血を継ぐ王子を王太子にしているのは同じだったが。

当然、そんな事をするくらいなのだから、オースティン王国は我が国には当然良い印象は持っていないだろう。

「あなた、オースティンにテレーサを行かすなど、どういうおつもりですか」
母の女王が怒って言った。
そう、私もその意味を知りたい。


「もう、テレーサも16歳だ。魔術先進国のオースティンに行けば学ぶことも多いだろう。スカンディーナの為に親善目的も兼ねて頑張って来て欲しいのだ」
父は何でも無いことのように言ってくれるけれど、それってめちゃくちゃ大変なことなのでは無いのだろうか?

「でも、あなた、オースティンでは、この子が虐められるのではありませんか。あの国には常識が通じないわ。何しろ、王太子の婚約者が亡き兄の娘なのよ」
「テレーサは私の娘だ。そこはうまくやってくれるだろう」
私は父が認めてくれたのが嬉しかった。父は私ならうまくやっていくと信じてくれたのだろう。



「判りました。留学します」
なにか父と母が喧嘩しているけれど、私は父に認められたのが嬉しかったのでそう答えていた。

「えっ、テレーサ、何を言っているの!」
「お父様の目論見、必ずやうまくやってみせますわ」
「そうか、頼むぞ」
私は母は無視して、父に言うと、父は優しく私に微笑んでくれた。


でも、父の与えてくれたミッションは結構難しいだろう。

何しろそこには、隣国の王太子をたぶらかして我が国に復讐しようとしているアンネローゼがいるのだから。学園の生徒の多くは、両親を殺されたアンネローゼに同情しているだろう。

その同情を崩して、少しでもスカンディーナに味方してくれる人を増やすことが私の意義だと思った。その為にはこの母親譲りの美貌と父親譲りの魔術を使うのだ。そして、存在自体が我が国をコケにしてくれるアンネローゼを地面に這いつくばらしてやるのだ。

亡国の王女も静かにしていればまっとうな人生を送れたものを。世に出てくるからいけないのだ。それもスカンディーナ王国に逆らうとは本当に馬鹿な奴だ。

最低でも、修道院に幽閉。うまく行けば娼館に叩き売ってやる。

そして、その取り巻き共にもスカンディーナに逆らうことの無謀さを知らしめてやるのだ。


そのために私は選ばれだのだ。


何しろ私は魔力量はこの国ナンバー2なのだ。当然世界ナンバー2のはずだ。この国では父以外は誰も私には敵わないのだから。

私はどのようにしてアンネローゼを這いつくばらせるか、父の執務室を後にして、早速色々考え出したのだった。

**********************************************************
『魔法聖女エリ』とは

私の別のお話

『ブス眼鏡と呼ばれても王太子に恋してる~私が本物の聖女なのに魔王の仕返しが怖いので、目立たないようにしているつもりです』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/845615056

に出てくる、王妃が書いた魔王を何故かヒールでやっつける少女のお話。
この物語とは何も関係はありませんが、私の自信作のひとつなのでぜひともお読み頂けると有り難いです!
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。

処理中です...