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第二部 学園波乱編 隣国から多くの留学生が来ました
王太子視点11 隣国の策謀に嵌められたおのれを呪い、婚約者を追いかける決意を固めました
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俺は夢を見ていた。
夢の中で久しぶりにアンに会えた。
「フィル様!」
アンは久しぶりに会った俺に抱きついてくれた。俺は思いっきりアンを抱きしめた。俺は久しぶりにアンを堪能したのだ。
でも、待てよ、アンが抱きついてくれたことなんて今まで殆どなかったんじゃないか、と言うか初めてのはずだ。アンはいつもと違ってとても積極的だった。
そして、そんなアンが、なんと俺にキスまでしてくれたのだ。
嘘だ! 俺は目を見開いた。信じられなかった。
俺は天国にも昇る気持ちだったのだ。
でも、その気分も長くは続かなかった。
そのアンがとても寂しそうな目をして俺を見つめてきたのだ。
「フィル様、今まで本当にありがとう。本当に楽しかったです」
「えっ、いや、ちょっと待て、何言っているんだ、アン」
いきなりのアンの言葉に俺は慌てた。
「さようなら、フィル様。本当に好きでした」
「アン!」
俺は必死にアンに手を伸ばした。でも、アンには届かなかったのだ。
アンは俺の手をかいくぐって、遠くに去って行ったのだった。
「アン!」
俺は自分の大声でハッと目が覚めた。
病室に俺は寝ていた。
「アン!」
俺は呼んでみたが、俺の病室にはアンはいなかった。
でも、俺の横に横たわった跡があった。
そして、黄色いハンカチが残されていた。
これはアンのハンカチだ。
嘘だ、何でアンのハンカチがここにある?
「フィルどうした?」
そこにバートとルーカスが駆け込んできた。
「アンは、アンはどうした?」
「アンだ? アンがいるわけ無いだろう」
「いや、このハンカチは確かにアンのだ。アンが少し前までここにいたんだ」
バーとの言葉に俺は黄色いハンカチを見せた。
「えっ、お前らどうしたんだ。疫病で苦しんでいたんじゃないのか」
そこに驚いたアルフが入ってきた。
「あれ? アンはどうしたんだ?」
「アルフ、やはりアンがいたのか」
俺は思わずアルフに掴みかかっていた。
「ああ、昨日の深夜にお前の上にいきなり転移してきたんだ。俺と少し看病を代わってくれって言われたから代わったんだけど、どこに行ったんだ?」
「いや、朝起きたらいなかった」
俺は唖然として言った。
「それよりもお前ら熱は」
「熱は下がっている」
「俺もだ」
「俺も下がった」
アルフの問に俺たちは答えた。
「そんな馬鹿な。昨日はあんなに熱が高かったのに、そんなの嘘だろう?」
アルフは驚いて俺達を見た。手をおでこに持ってきて熱を見ていた。
「本当だ。俺と変わらない」
「アンだ」
俺はボソリと言った。
「アン?」
不審そうにアルフが聞いた。
「球技大会の時に、アンがおまじないだと言って魔術をかけてもらって体力が回復したことがあっただろう!」
「そういえば、そんな事があったな」
思い出したようにアルフが言った。
「あれは絶対にヒールだ。そうとしか考えられない」
「でも、アンは聖女じゃないぞ」
ルーカスが言う。
「アンはオールマイティ、全属性持ちだ。聖属性が使えても問題ないだろう」
「それはたしかにそうだが」
「でも、聖女は全然出来なかったんだぞ。何でアンは出来たんだよ」
「それは性格の問題じゃないか」
俺が言うと、
「まあ確かに」
「そらあそうだ。あの聖女の性格の悪さじゃ、ヒールも発動しないのかもな」
アルフとバートは即座に頷いた。
「おいおい、お前ら、そんな理由でヒールが使えないことなんてあり得るのか」
ルーカスだけが否定するが、
「じゃあお前は聖女が性格がいいと思うのか」
「いや、あれは最悪だ」
一顧だにせずにルーカスは言った。
「俺が言いたいのはアンが出来たのに、聖女が出来ないのはおかしいんじゃないかという事だ」
「聖女がわざとやらなかったというのか」
「わざとかどうかは判らないが、その可能性はないか」
ルーカスが皆を見回して言った。
「確かにな。アンが出来て聖女が出来なかったのはおかしいな」
「それよりも、アンはどこに行ったんだ」
俺が気になることを言った。
「王都に帰ったんじゃないのか」
「俺に挨拶もなくか」
バートにアルフが聞く。
「別にお前に挨拶する必要はないだろう」
「でも来た時は会ったんだぞ。普通一言くらい言うだろう」
そう側近が言い合っている時だ。
「失礼します。王女殿下が殿下にお会いしたいと申されていますが」
「何しにだ」
俺は不機嫌そうに聞いた。王女とはほとんど一緒に行動はしていなかったし、近づけるなと近衛にも話していたはずだ。
「何でも、スカンディーナからこの疫病に対する特効薬が届いたそうで、殿下に飲ませたいと」
「はあああ? 今頃何を言ってきてやがる」
アルフがムッとして言った。
俺も不審に思ったのだ。このタイミングで特効薬を持ってくる意味を。俺が病に伏せて苦しんでいるタイミングで出してきたことが問題だった。
「取り敢えず、ルーカス、お前が隣室で対応しろ。俺が治ったことは伏せろ。できる限り話を聞き出せ」
俺はルーカスに命じていた。
俺とアルフの2人で物陰に隠れて見ていると聖女とマックスが入ってきた。
「これはテレーサさん、いかがなされたのですか。このような所に」
「ルーカス殿。殿下にさん付けとはいかがかと思うが」
王女に付いてきたマックスが文句を言ってきた。
「ふん、こちらは忙しいのですよ。フィルはあなたとは会わないと思うが」
「何を仰っているのです。我が国の薬師達が血眼になってやっとこの疫病の特効薬を作り出したのです。それを一刻も早くに疫病に苦しんでおられる殿下に飲んでいただこうとお持ちしたのです」
「ほう、特効薬とは。いやはや都合のいいものですな。フィルが病に倒れてすぐに特効薬が出てくるなど、おかしくありませんか」
ルーカスが言うと、
「殿下が倒れられたと聞いて国からすぐに取り寄せたのです」
「それにしては早すぎませんか。フィルが倒れたのは3日前ですが。どんなに急いでも本国から届けられるのに2週間はかかると思われますが」
「そんな事はどうでもいいでしょう。早くしないとフィル様が死んでしまうのよ」
「王家の血筋はご丈夫なのですよ。いまだかつて疫病で亡くなられた方は建国以来いらっしゃらないのです」
それが事実なのかどうかは俺は知らないがルーカスが言うんならそうなんだろう。
「な、何を言っているの」
「そうだ。殿下が大丈夫だとは限らないだろうが」
王女の尻馬に乗ってマックスまでが言う。こいつはスカンディーナの手下になりきったのか?
「先程お見かけしましたが、まだまだお元気そうでしたよ」
「そんなわけなでしょう。この病気は一週間、高熱が出て亡くなるのよ。すぐに薬を飲ませないととんでもないことになるわ」
「そう言うことをおっしゃられても、私は陛下からも、婚約者以外の女性は殿下の部屋に入れるなと指示を受けているのですよ」
ひょうひょうとルーカスが言う。
「何を言っているのよ。赤毛の女はもう婚約者ではないわ」
この女今なんて言った? 俺は唖然と王女を見た。俺はそんな事は聞いていないし、そんな事を許すわけはない。
「何をおっしゃるのやら。そのようなこと私は聞いておりませんが」
驚いてルーカスも言う。
「殿下、それは私も聞いていませんが」
マックスまで驚いて言う。
「殿下が疫病で倒れられたと聞いて、自分では何も出来ないと逃げ出したのではなくて」
「なるほど、スカンディーナが脅したのですな。特効薬を渡す代わりに、婚約者の座を降りろと」
王女の言葉に氷のように冷たいルーカスの声がした。
「そんな訳ないでしょう」
そう言うテレーサに俺はもう我慢が出来なかった。
「テレーサ、貴様アンに何をした」
飛び出して剣を握るとその切っ先をテレーサの首の先に突きつけたのだ。
「今すぐ、話せ。でないとその首胴から離れるぞ」
「ヒィィィ」
テレーサはあまりの俺の剣幕に恐怖に打ち震えていた。
「で、殿下、隣国の」
「マックス、貴様もそれ以上話すな。少しでも話してみろ。利敵行為としてたたっ斬るぞ」
俺は殺気をマックスに向けた。
マックスも怒り狂った俺を見て固まっていた。
もう許さない。
「わ、私は何も」
「そうか、ならば死ね」
俺は切っ先を王女の目の前に突き出していた。
「ヒィィィィ」
王女はあまりのことに失禁していた。
「次はない」
「わ、私ではないわ。我が国の大使が特効薬を殿下に渡すから私をあなたの婚約者にするように王妃様に言って認められたと」
「な、何だと。母上はそれを認めたというのか。俺の承認もなしに」
俺は思いっきりテレーセの襟首を締め上げた。
「ヒッ」
もう、テレーサは失神寸前だった。
「マックス、貴様も今回の件に噛んでいるのか」
「いえ、殿下、私は一切聞いておりません」
俺の氷のような声にマックスが慌てて否定した。
こいつらが王女を学園に入れたからこんな事になったんだ。
こんな事ならばアンを一緒に連れてくれば良かった。俺はとても後悔したのだ。
「貴様ら、アンをどうした?」
「し、知らないわよ。昨日から行方不明だと・・・」
王女は必死に言い訳した。もし、こいつがアンを殺そうとしていたとこの時に知っていたなら、俺は躊躇なく王女を殺していただろう。
俺は王女を地面に叩きつけていた。
「アルフ、この女を地下牢に入れろ。今回の疫病の件、絶対にスカンディーナが噛んでいる。騎士団長に言って尋問させろ」
「判った」
「ちょっと待ってよ。殿下。私は何も知らないわ・・・・」
「さっさと来い」
アルフは王女を引っ立てていった。
俺はそれを見て、俺の15年間の思いが、スカンディーナの奴らの策謀で一瞬で潰されてしまったのを実感した。
そして、絶対にスカンディーナの奴らは許さないと心に決めた。それと、絶対にアンを追いかけると心に誓ったのだった。
夢の中で久しぶりにアンに会えた。
「フィル様!」
アンは久しぶりに会った俺に抱きついてくれた。俺は思いっきりアンを抱きしめた。俺は久しぶりにアンを堪能したのだ。
でも、待てよ、アンが抱きついてくれたことなんて今まで殆どなかったんじゃないか、と言うか初めてのはずだ。アンはいつもと違ってとても積極的だった。
そして、そんなアンが、なんと俺にキスまでしてくれたのだ。
嘘だ! 俺は目を見開いた。信じられなかった。
俺は天国にも昇る気持ちだったのだ。
でも、その気分も長くは続かなかった。
そのアンがとても寂しそうな目をして俺を見つめてきたのだ。
「フィル様、今まで本当にありがとう。本当に楽しかったです」
「えっ、いや、ちょっと待て、何言っているんだ、アン」
いきなりのアンの言葉に俺は慌てた。
「さようなら、フィル様。本当に好きでした」
「アン!」
俺は必死にアンに手を伸ばした。でも、アンには届かなかったのだ。
アンは俺の手をかいくぐって、遠くに去って行ったのだった。
「アン!」
俺は自分の大声でハッと目が覚めた。
病室に俺は寝ていた。
「アン!」
俺は呼んでみたが、俺の病室にはアンはいなかった。
でも、俺の横に横たわった跡があった。
そして、黄色いハンカチが残されていた。
これはアンのハンカチだ。
嘘だ、何でアンのハンカチがここにある?
「フィルどうした?」
そこにバートとルーカスが駆け込んできた。
「アンは、アンはどうした?」
「アンだ? アンがいるわけ無いだろう」
「いや、このハンカチは確かにアンのだ。アンが少し前までここにいたんだ」
バーとの言葉に俺は黄色いハンカチを見せた。
「えっ、お前らどうしたんだ。疫病で苦しんでいたんじゃないのか」
そこに驚いたアルフが入ってきた。
「あれ? アンはどうしたんだ?」
「アルフ、やはりアンがいたのか」
俺は思わずアルフに掴みかかっていた。
「ああ、昨日の深夜にお前の上にいきなり転移してきたんだ。俺と少し看病を代わってくれって言われたから代わったんだけど、どこに行ったんだ?」
「いや、朝起きたらいなかった」
俺は唖然として言った。
「それよりもお前ら熱は」
「熱は下がっている」
「俺もだ」
「俺も下がった」
アルフの問に俺たちは答えた。
「そんな馬鹿な。昨日はあんなに熱が高かったのに、そんなの嘘だろう?」
アルフは驚いて俺達を見た。手をおでこに持ってきて熱を見ていた。
「本当だ。俺と変わらない」
「アンだ」
俺はボソリと言った。
「アン?」
不審そうにアルフが聞いた。
「球技大会の時に、アンがおまじないだと言って魔術をかけてもらって体力が回復したことがあっただろう!」
「そういえば、そんな事があったな」
思い出したようにアルフが言った。
「あれは絶対にヒールだ。そうとしか考えられない」
「でも、アンは聖女じゃないぞ」
ルーカスが言う。
「アンはオールマイティ、全属性持ちだ。聖属性が使えても問題ないだろう」
「それはたしかにそうだが」
「でも、聖女は全然出来なかったんだぞ。何でアンは出来たんだよ」
「それは性格の問題じゃないか」
俺が言うと、
「まあ確かに」
「そらあそうだ。あの聖女の性格の悪さじゃ、ヒールも発動しないのかもな」
アルフとバートは即座に頷いた。
「おいおい、お前ら、そんな理由でヒールが使えないことなんてあり得るのか」
ルーカスだけが否定するが、
「じゃあお前は聖女が性格がいいと思うのか」
「いや、あれは最悪だ」
一顧だにせずにルーカスは言った。
「俺が言いたいのはアンが出来たのに、聖女が出来ないのはおかしいんじゃないかという事だ」
「聖女がわざとやらなかったというのか」
「わざとかどうかは判らないが、その可能性はないか」
ルーカスが皆を見回して言った。
「確かにな。アンが出来て聖女が出来なかったのはおかしいな」
「それよりも、アンはどこに行ったんだ」
俺が気になることを言った。
「王都に帰ったんじゃないのか」
「俺に挨拶もなくか」
バートにアルフが聞く。
「別にお前に挨拶する必要はないだろう」
「でも来た時は会ったんだぞ。普通一言くらい言うだろう」
そう側近が言い合っている時だ。
「失礼します。王女殿下が殿下にお会いしたいと申されていますが」
「何しにだ」
俺は不機嫌そうに聞いた。王女とはほとんど一緒に行動はしていなかったし、近づけるなと近衛にも話していたはずだ。
「何でも、スカンディーナからこの疫病に対する特効薬が届いたそうで、殿下に飲ませたいと」
「はあああ? 今頃何を言ってきてやがる」
アルフがムッとして言った。
俺も不審に思ったのだ。このタイミングで特効薬を持ってくる意味を。俺が病に伏せて苦しんでいるタイミングで出してきたことが問題だった。
「取り敢えず、ルーカス、お前が隣室で対応しろ。俺が治ったことは伏せろ。できる限り話を聞き出せ」
俺はルーカスに命じていた。
俺とアルフの2人で物陰に隠れて見ていると聖女とマックスが入ってきた。
「これはテレーサさん、いかがなされたのですか。このような所に」
「ルーカス殿。殿下にさん付けとはいかがかと思うが」
王女に付いてきたマックスが文句を言ってきた。
「ふん、こちらは忙しいのですよ。フィルはあなたとは会わないと思うが」
「何を仰っているのです。我が国の薬師達が血眼になってやっとこの疫病の特効薬を作り出したのです。それを一刻も早くに疫病に苦しんでおられる殿下に飲んでいただこうとお持ちしたのです」
「ほう、特効薬とは。いやはや都合のいいものですな。フィルが病に倒れてすぐに特効薬が出てくるなど、おかしくありませんか」
ルーカスが言うと、
「殿下が倒れられたと聞いて国からすぐに取り寄せたのです」
「それにしては早すぎませんか。フィルが倒れたのは3日前ですが。どんなに急いでも本国から届けられるのに2週間はかかると思われますが」
「そんな事はどうでもいいでしょう。早くしないとフィル様が死んでしまうのよ」
「王家の血筋はご丈夫なのですよ。いまだかつて疫病で亡くなられた方は建国以来いらっしゃらないのです」
それが事実なのかどうかは俺は知らないがルーカスが言うんならそうなんだろう。
「な、何を言っているの」
「そうだ。殿下が大丈夫だとは限らないだろうが」
王女の尻馬に乗ってマックスまでが言う。こいつはスカンディーナの手下になりきったのか?
「先程お見かけしましたが、まだまだお元気そうでしたよ」
「そんなわけなでしょう。この病気は一週間、高熱が出て亡くなるのよ。すぐに薬を飲ませないととんでもないことになるわ」
「そう言うことをおっしゃられても、私は陛下からも、婚約者以外の女性は殿下の部屋に入れるなと指示を受けているのですよ」
ひょうひょうとルーカスが言う。
「何を言っているのよ。赤毛の女はもう婚約者ではないわ」
この女今なんて言った? 俺は唖然と王女を見た。俺はそんな事は聞いていないし、そんな事を許すわけはない。
「何をおっしゃるのやら。そのようなこと私は聞いておりませんが」
驚いてルーカスも言う。
「殿下、それは私も聞いていませんが」
マックスまで驚いて言う。
「殿下が疫病で倒れられたと聞いて、自分では何も出来ないと逃げ出したのではなくて」
「なるほど、スカンディーナが脅したのですな。特効薬を渡す代わりに、婚約者の座を降りろと」
王女の言葉に氷のように冷たいルーカスの声がした。
「そんな訳ないでしょう」
そう言うテレーサに俺はもう我慢が出来なかった。
「テレーサ、貴様アンに何をした」
飛び出して剣を握るとその切っ先をテレーサの首の先に突きつけたのだ。
「今すぐ、話せ。でないとその首胴から離れるぞ」
「ヒィィィ」
テレーサはあまりの俺の剣幕に恐怖に打ち震えていた。
「で、殿下、隣国の」
「マックス、貴様もそれ以上話すな。少しでも話してみろ。利敵行為としてたたっ斬るぞ」
俺は殺気をマックスに向けた。
マックスも怒り狂った俺を見て固まっていた。
もう許さない。
「わ、私は何も」
「そうか、ならば死ね」
俺は切っ先を王女の目の前に突き出していた。
「ヒィィィィ」
王女はあまりのことに失禁していた。
「次はない」
「わ、私ではないわ。我が国の大使が特効薬を殿下に渡すから私をあなたの婚約者にするように王妃様に言って認められたと」
「な、何だと。母上はそれを認めたというのか。俺の承認もなしに」
俺は思いっきりテレーセの襟首を締め上げた。
「ヒッ」
もう、テレーサは失神寸前だった。
「マックス、貴様も今回の件に噛んでいるのか」
「いえ、殿下、私は一切聞いておりません」
俺の氷のような声にマックスが慌てて否定した。
こいつらが王女を学園に入れたからこんな事になったんだ。
こんな事ならばアンを一緒に連れてくれば良かった。俺はとても後悔したのだ。
「貴様ら、アンをどうした?」
「し、知らないわよ。昨日から行方不明だと・・・」
王女は必死に言い訳した。もし、こいつがアンを殺そうとしていたとこの時に知っていたなら、俺は躊躇なく王女を殺していただろう。
俺は王女を地面に叩きつけていた。
「アルフ、この女を地下牢に入れろ。今回の疫病の件、絶対にスカンディーナが噛んでいる。騎士団長に言って尋問させろ」
「判った」
「ちょっと待ってよ。殿下。私は何も知らないわ・・・・」
「さっさと来い」
アルフは王女を引っ立てていった。
俺はそれを見て、俺の15年間の思いが、スカンディーナの奴らの策謀で一瞬で潰されてしまったのを実感した。
そして、絶対にスカンディーナの奴らは許さないと心に決めた。それと、絶対にアンを追いかけると心に誓ったのだった。
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