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第一章 娘が生贄にされるのを助けるために地獄から脱獄します
娘は逃げようとしましたが、捕まってしまいました
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そのまま茫然自失として夢遊病者のように自分の馬車に乗り込んだ。
涙が止まらなくなってそのまま邸宅に着くまで泣いていた。
這々の体で伯爵邸に帰ってきたクローディアに、しゃぐアデラの声が扉の隙間から聞こえてきた。
「本当なのお母様。生贄がお姉さまに代わったって」
「ええ、王妃様がはっきりとおっしゃったわたわ。18年前のように今度は生贄になったあの女の娘を生贄にさせると」
コニーは笑っていった。
シャラは笑止だった。ちょっと泣いたら馬鹿なことにシャラが自分が代わって生贄になってくれた。生贄の娘を残して。そして、ここにまた生贄の娘が役立つ時が来たのだ。癪に障る娘だったが、やっと厄介払いが出来てせいせいできる。
コニーはシャラと交わした命に代えても娘を大切にするという誓いなど元々守る気も無かった。
「本当に馬鹿なシャラよ。こんな時のために、あの女の娘を養女にしてあなたの姉として育てていたのよ。あの穀潰しに金をかけたのはこんな時のためだもの。当然あなたに代わってあの娘を生贄にさせるわ」
「・・・・・」
クローディアはもう何も言えなかった。
「あの女も馬鹿よね。助けるために生贄になった娘がまた生贄にされる運命にあるなんて」
「本当にそうよね。生贄の娘を助けるために生贄になるなんて」
義母の笑い声に妹も頷いて二人して笑いあった。
クローディアはその言葉にきっとした。今までシャラは絶望していた。家族は誰も生きていくことを喜んでくれず、王家からも疎まれて、今愛した皇太子からも振られて生贄になってくれと頼まれた。
でも、そうだ。母は自分を助けるために生贄になったのだ。自分がここで死ぬことを望んではいないだろう。
そう思ったクローディアの後ろに執事のセバスチャンがいた。
クローデイアはビクッとしたが、セバスチャンは何も言わずに荷物の入ったかばんを差し出した。
「お逃げ下さい」
セバスチャンはクローディアに小さく言った。
クローディアは目を見開く。そう言えば使用人たちの中でも古株のセバスチャンは今思えば何かと便宜を図ってくれていた。
「でも」
「裏に馬車を用意してあります。国境を超えられたら大丈夫です」
戸惑うクローデイアにセバスチャンは言った。
クローディアはセバスチャンに連れられて裏口から外に出た。
そこには荷馬車が待っていた。その隙間にクローディアを隠すと執事は言った。
「お元気で」
「ありがとうセバスチャン」
クローデイアがお礼を言うと同時に馬車が動き出した。
そうだ。誰も生きることを望まなかったが、母だけは望んでいてくれるはずだ。その母のために生きようとクローディアは少し前向きに考えられるようになった。
しかし、その馬車は少し走ったところで止められた。
「クローディア。隠れているのは判っている。今すぐ出てこい」
その声は聞いことがあった。
学園の魔術の理論の教師バーナードの声だった。クローディアはよく習ってもいないことをクローディアに質問してクローディアを辱めたこのバーナードが嫌いだった。彼は確か王宮魔術師でもあったはずだった。
馬車があっという間に、剣を抜いた兵士たちに囲まれた。
御者はあっという間に捕まっていた。
仕方無しにクローディアは外に出た。
「何なのですか。バーナード」
クローディアは皇太子妃モードで声を出した。散々王妃教育で鍛えられているのだ。こんなことなど朝飯前だった。
「な、何だと教師に向かって」
バーナードは驚いた。クローデイアがこのような上から目線で威圧してくるなど初めてだった。そして、それは様になっていた。
「黙りなさい。私は未来のこのダレル王国の王妃となる身。無礼は許しません」
「な、何を言う。貴様はもう皇太子の婚約者ではない」
「ふんっ。私はまだ用紙に署名しておりません。皇太子の婚約者であることは間違いないのです。直ちに御者を離し、道を開けなさい」
「何を言う。貴様の拘束はその皇太子から命ぜられておるのだ」
「ほう、貴様王宮魔導師の分際で私に手をかけると」
ずいっとクローデイアが脚を一歩踏み出した。
「ええい、何をしている。すぐにその女を拘束しろ」
バーナードが命じた。
その瞬間クローディアは衝撃波をバーナードに向けた。
しかし、それはバーナードに転移でかわされてクローディアの後ろに転移して現れたバーナードの麻酔魔術で一瞬でクローディアは眠らされた。
「ふんっ。このアマーーー。良くも」
激怒したバーナードは気絶したクローディアの顔を蹴りつけていた。
クローディアは無念だった。こんな人生最悪だ。薄れいく意識の中で、クローデイアは自分を生んでさっさと死んでいった母を恨みたくなった。
************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうござまいます。
絶体絶命のクローディア。しかし、地獄に落とされたシャラは娘の危機についに立ち上がります。
次からはざまー編です。
涙が止まらなくなってそのまま邸宅に着くまで泣いていた。
這々の体で伯爵邸に帰ってきたクローディアに、しゃぐアデラの声が扉の隙間から聞こえてきた。
「本当なのお母様。生贄がお姉さまに代わったって」
「ええ、王妃様がはっきりとおっしゃったわたわ。18年前のように今度は生贄になったあの女の娘を生贄にさせると」
コニーは笑っていった。
シャラは笑止だった。ちょっと泣いたら馬鹿なことにシャラが自分が代わって生贄になってくれた。生贄の娘を残して。そして、ここにまた生贄の娘が役立つ時が来たのだ。癪に障る娘だったが、やっと厄介払いが出来てせいせいできる。
コニーはシャラと交わした命に代えても娘を大切にするという誓いなど元々守る気も無かった。
「本当に馬鹿なシャラよ。こんな時のために、あの女の娘を養女にしてあなたの姉として育てていたのよ。あの穀潰しに金をかけたのはこんな時のためだもの。当然あなたに代わってあの娘を生贄にさせるわ」
「・・・・・」
クローディアはもう何も言えなかった。
「あの女も馬鹿よね。助けるために生贄になった娘がまた生贄にされる運命にあるなんて」
「本当にそうよね。生贄の娘を助けるために生贄になるなんて」
義母の笑い声に妹も頷いて二人して笑いあった。
クローディアはその言葉にきっとした。今までシャラは絶望していた。家族は誰も生きていくことを喜んでくれず、王家からも疎まれて、今愛した皇太子からも振られて生贄になってくれと頼まれた。
でも、そうだ。母は自分を助けるために生贄になったのだ。自分がここで死ぬことを望んではいないだろう。
そう思ったクローディアの後ろに執事のセバスチャンがいた。
クローデイアはビクッとしたが、セバスチャンは何も言わずに荷物の入ったかばんを差し出した。
「お逃げ下さい」
セバスチャンはクローディアに小さく言った。
クローディアは目を見開く。そう言えば使用人たちの中でも古株のセバスチャンは今思えば何かと便宜を図ってくれていた。
「でも」
「裏に馬車を用意してあります。国境を超えられたら大丈夫です」
戸惑うクローデイアにセバスチャンは言った。
クローディアはセバスチャンに連れられて裏口から外に出た。
そこには荷馬車が待っていた。その隙間にクローディアを隠すと執事は言った。
「お元気で」
「ありがとうセバスチャン」
クローデイアがお礼を言うと同時に馬車が動き出した。
そうだ。誰も生きることを望まなかったが、母だけは望んでいてくれるはずだ。その母のために生きようとクローディアは少し前向きに考えられるようになった。
しかし、その馬車は少し走ったところで止められた。
「クローディア。隠れているのは判っている。今すぐ出てこい」
その声は聞いことがあった。
学園の魔術の理論の教師バーナードの声だった。クローディアはよく習ってもいないことをクローディアに質問してクローディアを辱めたこのバーナードが嫌いだった。彼は確か王宮魔術師でもあったはずだった。
馬車があっという間に、剣を抜いた兵士たちに囲まれた。
御者はあっという間に捕まっていた。
仕方無しにクローディアは外に出た。
「何なのですか。バーナード」
クローディアは皇太子妃モードで声を出した。散々王妃教育で鍛えられているのだ。こんなことなど朝飯前だった。
「な、何だと教師に向かって」
バーナードは驚いた。クローデイアがこのような上から目線で威圧してくるなど初めてだった。そして、それは様になっていた。
「黙りなさい。私は未来のこのダレル王国の王妃となる身。無礼は許しません」
「な、何を言う。貴様はもう皇太子の婚約者ではない」
「ふんっ。私はまだ用紙に署名しておりません。皇太子の婚約者であることは間違いないのです。直ちに御者を離し、道を開けなさい」
「何を言う。貴様の拘束はその皇太子から命ぜられておるのだ」
「ほう、貴様王宮魔導師の分際で私に手をかけると」
ずいっとクローデイアが脚を一歩踏み出した。
「ええい、何をしている。すぐにその女を拘束しろ」
バーナードが命じた。
その瞬間クローディアは衝撃波をバーナードに向けた。
しかし、それはバーナードに転移でかわされてクローディアの後ろに転移して現れたバーナードの麻酔魔術で一瞬でクローディアは眠らされた。
「ふんっ。このアマーーー。良くも」
激怒したバーナードは気絶したクローディアの顔を蹴りつけていた。
クローディアは無念だった。こんな人生最悪だ。薄れいく意識の中で、クローデイアは自分を生んでさっさと死んでいった母を恨みたくなった。
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ここまで読んで頂いてありがとうござまいます。
絶体絶命のクローディア。しかし、地獄に落とされたシャラは娘の危機についに立ち上がります。
次からはざまー編です。
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