夢の世界からの転校生

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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転校生の家で黒い虫が出て転校生が悲鳴を上げて翔太に抱きついてきました

翔太は生まれて始めて異性と自転車で二人乗りした。
動揺にぐらつくハンドルを必死に掴んで何とか、まどかの家に送り届けたのだ。

まどかの家はアパートだった。


「翔太。ここまで送ってくれて有難う。良かったら飲み物でも出すから少し寄って行かない?」
まどかが翔太にそう声をかけてきたのだ。

「えっ、でも」
「家には誰もいないから大丈夫だよ」
「いや、しかし、一人でいるのに」
まどかの声に翔太は更に戸惑った。

「ごめん、翔太は忙しいよね。もう少し、数学の勉強教えてもらえたら、とてもありがたいんだけど、やっぱりダメかな」
上目遣いにまどかが聞いてきた。

「判った。少しだけなら」
そう言われたら仕方がない。翔太は家に上がらせてもらうことにしたのだ。

アパートの一室はほとんどワンルームに近いものだった。
部屋の中にキッチンからまどかのベッドまであった。

「えっ、一人で住んでいるの?」
翔太は驚いて聞いていた。
「うん、そうだよ」
まどかが頷いた。

「ご両親は?」
「うーん、よく判らないんだよね。気がついたら一人だったから」
まどかが首を振って言った。

「えっ、そうなんだ。でも、お金とかはどうしているの?」
「昔はおじいちゃんやおばあちゃんがいていろいろやってくれたんだけど……」
まどかは曖昧に首を振った。
「そ、そうなんだ」
翔太はなにか聞いてはいけないことを聞いたような気がした。

「でも、大丈夫だよ」
まどかは大きく首を縦に振った。
「翔太が心配しなくても。気にしてくれただけでとても嬉しい」
まどかはニコリと笑った。

「それよりもこの宿題なんだけど」
まどかが話題を変えてきた。あまり触れてほしくない話なんだろう。
翔太もそれ以上は聞かないことにした。

「ああ、それはね……」
翔太は問題の説明を始めた。

1時間くらい経っただろうか。

「有難う。大分判るようになった。本当に翔太は賢いよね」
感心してまどかが言った。

「そうかな」
「そうだよ。私は問題集の答え見てもよく判らなかったから。翔太は天才だよ」
「そんな事言っても何もでないよ」
「でないって、あっ、ごめん、飲み物入れていなかったね。ちょっとまってね」
まどかが慌てて冷蔵庫を開けて探しに行った。
「気にしなくて大丈夫だよ」
「そう言うわけにはいかないよ。食べ物は出ないけれど、飲み物くらい出さないと」
キッチンを見ると食べた跡のカップ麺のカップが積んであるのが見えた。

「ちゃんとご飯とか食べているの?」
「うん、食べているよ」
まどかが冷蔵庫の中を見ながら言う。

持ってきた午後の紅茶のペットボトルだった。

「ひょっとして、カップ麺とかしか食べていないとか」
台所の上を見て翔太が聞いた。

「カレーを作ろうとして食材は買ったんだけど、作るのが面倒くさくて」
「判った。カレーで良いんだね」
翔太は立ち上がった。

「えっ、翔太ってカレー作れるの?」
「山岳部だからね。カレーくらい作れるよ」
「うそ! 私より女子力ない?」
「食材出してよ。あっ、その前に、お米かして」
「それくらいなら出来るわ」
二人はカレーを作り出したのだ。

包丁をまどかが使おうとして、慣れていないのが一瞬で見てとれた。
慌てて、翔太が取り上げた。

「翔太、包丁くらい使えるから」
「いいから。座っていて」
「えっ、そんな男の子に食事作ってもらうなんて」
「気にしなくてもいいよ。毎月作っているから」
「私がなにか手伝えるものはないの?」
まどかがそう言って翔太の横に立った。
「大丈夫だって。座ってくれていたら」
「そう言うわけにも……」

そのまどかの視線の先でゴソゴソ動く黒い影が見えたのだ。
「キャッ」
思わずまどかが悲鳴を上げる。

「えっ、まどか、どうしたかした?」
翔太が聞くと
「いたの、黒いのが」
「どこに?」
「そこ」
まどかが指したところをささっと黒い虫が動いた。

「キャーーーー」
まどかはそう言うと翔太に抱きついたのだった。

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