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私を助けてくれた留学生を怒鳴りつけた婚約者に切れてしまいました
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「お前はゴンドワナ王国からの留学生だな。俺の婚約者になれなれしくするな」
エミールはそう言って私とマクシムの間に入って、マクシムを怒鳴りつけてくれたんだけど。
私の恩人のマクシムに何を怒鳴りつけてくれているのよ。
「えっ?」
私はエミールの氷のような声に驚いたと同時にむっとしたのだ。
「これはこれは王太子殿下。親切なマクシム様に何を言われるんですか?」
「クラリス。お前、俺という婚約者がいながら何故こんな男と手を繋いでいたんだ」
「いや、あの、殿下」
マクシムが言い訳しようとしてくれたが、ここは私が言う所だ。
「何をおっしゃっていらっしゃるんですか? その言葉そのままお返ししますわ。今日は聖女のアニエスさんととても仲良くしていらっしゃいましたけれど、聖女様のお相手はよろしかったのですか? ロッテンマイエル先生に職員室に連れて行かれましたけれど」
私はエミールに負けずとも劣らぬ冷たさで言ってやったのだ。
「はああああ! 俺は両親と教皇猊下に言われてやむを得ず相手していただけだ」
「その割にアニエスさんと一緒に通学されて楽しそうにしていらっしゃいましたけれど」
「何、あれを見ていたのか?」
「見ていたも何も学園中の生徒が見ている前で馬車からアニエスさんを降ろされましたわ。皆がお似合いのカップルだと賞賛しておりましたわ」
そういう私は絶対に眉が釣りあがっていて悪役令嬢顔だったと思う。
「仕方ないだろう。親にきちんと対応するようにと言われていたんだから」
「仕方が無いと言う割に楽しそうでしたわ」
「俺は仕事だから仕方なしに、やっていただけだ。だからって他国の留学生とお前が手を繋いで歩いていいという訳はないだろう」
エミールは切れてくれたんだけど、このエミールの言葉に私も完全に切れてしまった。
「何をおっしゃるんですか? 私は殿下が親しくしているアニエスさんの取り巻き達にいきなり囲まれて、アニエスさんがロッテンマイエル先生に連れて行かれたのは私のせいだと理不尽な理由で詰め寄られていたんですよ。きちんと面倒見るなら、そこまで見て下さいよ。周りは誰も助けてくれなかったのに、親切なマクシム様が助けて頂けたんです。マクシム様が無理矢理、私の手を引いて連れ出していただかなかったら、どうなっていたことか! 普通は婚約者を守ってくれて有難うございましたとお礼を言うところだと思いますけれど」
「えっ、いや、そうなのか」
私の剣幕に思わず詰まったエミールだが、私はこちらにやってくるお兄様を見つけたのだ。
「お兄様!」
「クラリス、大丈夫か? お前が女の子達に囲まれたと聞いて慌ててやってきたんだが」
お兄様は息を切らせていた。
「こちらのゴンドワナ王国の留学生のマクシム・ナーランド様に助けて頂いたんです。お兄様にはお礼を言ってほしくて」
「兄のセドリック・ロワールです。いや、妹がお世話になりました。マクシミリアン……」
「マクシム・ナーランドです」
お兄様の言葉の途中で名前を訂正していたけれど、お兄様が名前を間違えるのは珍しかった。
「マクシム・ナーランド様ね」
お兄様がマクシム様の頭の上から足のつま先までじろじろ見ながら言ってくれるんだけど。
「いや、ロワール様。私は当然のことをしたまでですから、また。ではロワール嬢、また明日」
何か慌ててマクシムが去って行こうとした。
「本当に今日は有難うございました」
私は彼に頭を下げたのだ。
マクシムは手を振って去って行った。
「じゃあ、お兄様、帰りましょう」
私はお兄様に言うと、何か言いたそうにしていたエミールは無視してお兄様の手を取って馬車の方に歩き出したのだ。
「いや、待てよ。クラリス!」
エミールが何か言ってきたが、無視だ。
私は今日のことは絶対に許せなかった。
「エミール様!」
その時だ。
エミールの横からピンクの髪のアニエスが駆けてくるのが見えた。
「ちょっと、待ちなさい。アニエスさん」
後ろからロッテンマイエル先生が追いかけてくるんだけど……どうやらアニエスはロッテンマイエル先生のお小言の途中で逃げ出したみたいだった。
「エミール様。助けて下さい」
「アニエスさん。名前呼びはいけないとあれほど言いましたよね。王太子殿下と呼びなさい。殿下その子を捕まえて下さい」
「いや、ちょっと二人とも俺を挟んでやるな。俺はクラリスに用があるんだ」
「キャッ」
前に出ようとしたエミールの前にピンク頭のアニエスが出てきてそのままエミールに抱きつくかたちになったのだ。アニエスを避けようとしたエミールだが避けきれずにアニエスとぶつかってそのまま絡まり合って二人で盛大に転けてくれた。
エミールの顔が丁度大きなアニエスの胸の中にはまり込んだのだ。
アニエスは朝みたいにこちらを勝ち誇ったように見てくれたのだ。
「本当にもう、信じられない!」
私はアニエスの胸の中でもがくエミールを見て完全に切れていた。
「アニエスさん。王太子殿下まで何をしていらっしゃるんですか?」
後ろからロッテンマイエル先生の叱責の声が響いてきて、私はとてもいい気味だと思ったのだった。
*********************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございました
怒り狂ったクラリスに、ピンク頭につきまとわれるエミール。
クラリスとエミールの二人の仲はどうなる?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等をして頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
エミールはそう言って私とマクシムの間に入って、マクシムを怒鳴りつけてくれたんだけど。
私の恩人のマクシムに何を怒鳴りつけてくれているのよ。
「えっ?」
私はエミールの氷のような声に驚いたと同時にむっとしたのだ。
「これはこれは王太子殿下。親切なマクシム様に何を言われるんですか?」
「クラリス。お前、俺という婚約者がいながら何故こんな男と手を繋いでいたんだ」
「いや、あの、殿下」
マクシムが言い訳しようとしてくれたが、ここは私が言う所だ。
「何をおっしゃっていらっしゃるんですか? その言葉そのままお返ししますわ。今日は聖女のアニエスさんととても仲良くしていらっしゃいましたけれど、聖女様のお相手はよろしかったのですか? ロッテンマイエル先生に職員室に連れて行かれましたけれど」
私はエミールに負けずとも劣らぬ冷たさで言ってやったのだ。
「はああああ! 俺は両親と教皇猊下に言われてやむを得ず相手していただけだ」
「その割にアニエスさんと一緒に通学されて楽しそうにしていらっしゃいましたけれど」
「何、あれを見ていたのか?」
「見ていたも何も学園中の生徒が見ている前で馬車からアニエスさんを降ろされましたわ。皆がお似合いのカップルだと賞賛しておりましたわ」
そういう私は絶対に眉が釣りあがっていて悪役令嬢顔だったと思う。
「仕方ないだろう。親にきちんと対応するようにと言われていたんだから」
「仕方が無いと言う割に楽しそうでしたわ」
「俺は仕事だから仕方なしに、やっていただけだ。だからって他国の留学生とお前が手を繋いで歩いていいという訳はないだろう」
エミールは切れてくれたんだけど、このエミールの言葉に私も完全に切れてしまった。
「何をおっしゃるんですか? 私は殿下が親しくしているアニエスさんの取り巻き達にいきなり囲まれて、アニエスさんがロッテンマイエル先生に連れて行かれたのは私のせいだと理不尽な理由で詰め寄られていたんですよ。きちんと面倒見るなら、そこまで見て下さいよ。周りは誰も助けてくれなかったのに、親切なマクシム様が助けて頂けたんです。マクシム様が無理矢理、私の手を引いて連れ出していただかなかったら、どうなっていたことか! 普通は婚約者を守ってくれて有難うございましたとお礼を言うところだと思いますけれど」
「えっ、いや、そうなのか」
私の剣幕に思わず詰まったエミールだが、私はこちらにやってくるお兄様を見つけたのだ。
「お兄様!」
「クラリス、大丈夫か? お前が女の子達に囲まれたと聞いて慌ててやってきたんだが」
お兄様は息を切らせていた。
「こちらのゴンドワナ王国の留学生のマクシム・ナーランド様に助けて頂いたんです。お兄様にはお礼を言ってほしくて」
「兄のセドリック・ロワールです。いや、妹がお世話になりました。マクシミリアン……」
「マクシム・ナーランドです」
お兄様の言葉の途中で名前を訂正していたけれど、お兄様が名前を間違えるのは珍しかった。
「マクシム・ナーランド様ね」
お兄様がマクシム様の頭の上から足のつま先までじろじろ見ながら言ってくれるんだけど。
「いや、ロワール様。私は当然のことをしたまでですから、また。ではロワール嬢、また明日」
何か慌ててマクシムが去って行こうとした。
「本当に今日は有難うございました」
私は彼に頭を下げたのだ。
マクシムは手を振って去って行った。
「じゃあ、お兄様、帰りましょう」
私はお兄様に言うと、何か言いたそうにしていたエミールは無視してお兄様の手を取って馬車の方に歩き出したのだ。
「いや、待てよ。クラリス!」
エミールが何か言ってきたが、無視だ。
私は今日のことは絶対に許せなかった。
「エミール様!」
その時だ。
エミールの横からピンクの髪のアニエスが駆けてくるのが見えた。
「ちょっと、待ちなさい。アニエスさん」
後ろからロッテンマイエル先生が追いかけてくるんだけど……どうやらアニエスはロッテンマイエル先生のお小言の途中で逃げ出したみたいだった。
「エミール様。助けて下さい」
「アニエスさん。名前呼びはいけないとあれほど言いましたよね。王太子殿下と呼びなさい。殿下その子を捕まえて下さい」
「いや、ちょっと二人とも俺を挟んでやるな。俺はクラリスに用があるんだ」
「キャッ」
前に出ようとしたエミールの前にピンク頭のアニエスが出てきてそのままエミールに抱きつくかたちになったのだ。アニエスを避けようとしたエミールだが避けきれずにアニエスとぶつかってそのまま絡まり合って二人で盛大に転けてくれた。
エミールの顔が丁度大きなアニエスの胸の中にはまり込んだのだ。
アニエスは朝みたいにこちらを勝ち誇ったように見てくれたのだ。
「本当にもう、信じられない!」
私はアニエスの胸の中でもがくエミールを見て完全に切れていた。
「アニエスさん。王太子殿下まで何をしていらっしゃるんですか?」
後ろからロッテンマイエル先生の叱責の声が響いてきて、私はとてもいい気味だと思ったのだった。
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怒り狂ったクラリスに、ピンク頭につきまとわれるエミール。
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