悪役令嬢に転生したみたいだけど、皇子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、皇帝が邪魔してくるんですけど……

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
73 / 103

公爵家の騎士視点 幼い皇女を助け、反逆者を討ち滅ぼすために駆け出しました

しおりを挟む
 俺の名はアッカーマン・ユルゲンス、元近衛騎士でホフマン公爵の下で三十年以上働いていた。
 今は現役を退職しホフマン領の端で畑を耕していた。

 我がホフマン家はこのハンブルク王国の建国時代からの武の名門で、基本的にはハンブルク王国が平和でいられるのはこのホフマン家があってのことだと思っている。武の名門はキンメルとかいう三流侯爵家もあるにはあるが、規模といい戦力といい違いすぎた。
 何しろ我がホフマン公爵家は人口50万人のうち、男女関係なしに大半が騎士あるいは戦士なのだ。普通は人口50万人いれば騎士や戦士はその1%の五千人くらいだ。いても1万人だ。それが大げさに言えば50万人もいるのだ。異常といえば異常だ。
 当然、商店や鍛冶屋やレストランもあるにはあるが、その従業員も兄弟、親戚の中で一人は必ず現役の騎士や戦士がいるという領地だ。果物屋の亭主もレストランの料理長ですら最低の護身術くらいは使える領地なのだ。何しろ物心ついた時から子供の時からおもちゃは武具なのだ。剣や弓だ。
 こんな領地だから盗賊や魔物達もほとんどいなかった。いれば皆でよってたかって征伐するし捕縛するのだ。子供達の遊びが魔物退治なのだ。普通の領地ではあり得なかった。
 その仕えるところはホフマン公爵家は元より、ハンブルク王国内にとどまらず帝国内やその属国にも広がっていた。

 そんな俺様が近衛でホフマン公爵の近くに近侍できたのは運が良かったからだ。
 近衛や騎士団、ホフマン公爵家の騎士団などで就職できなかったものが、帝国の騎士団や属国の騎士団に就職するのだ。基本的に各騎士団にはホフマン枠なるものがある。

 他の領地よりも優遇されているって?
 逆だ。
 その騎士団の中であまりにも多くのホフマン公爵家の出身の騎士が増えのは良くないということで各騎士団で規制されているのだ。多くて2割、帝国の皇帝に嫌われているからか帝国で1割だ。
 まあ、その2割や1割がその騎士団の中の精鋭になるのはいうまでも無かったが……

 そんな中、俺はハンブルク王国の近衛騎士団に所属していた。
 これは本当に自慢できることだった。
 まあ、当然近衛騎士団にもホフマン枠があって一応2割と決められていた。
 新たに騎士になるものにとって、その2割を目指していつも過激な競争が待ち構えているのだ。
 俺は村の新人騎士の戦いで勝利し、その地方の騎士の戦いでも勝ったので、なんとか近衛騎士になれた。ホフマン領ではその村の戦いですら勝つのは本当に至難の業なのだ。俺はたまたま運が良かったとしか言えなかった。
 近衛騎士に落ちたものが公爵家の騎士になって、それにも落ちたものがハンブルク内の騎士団を受けてそれに落ちたものが帝国の騎士になるという形だった。
 だから帝国の騎士など大したことが無いというのが我らハンブルク国内に残れた騎士達の矜持だった。

 そんな俺が驚いたのは、その公爵家の養女のユリアーナ様が、王妃付きでいけ好かない顔だけ騎士を六歳の時に一撃で倒した時だ。
 あの時は本当に驚いた。
 ユリアーナ様は三歳の時に二人に一人は命を失うと言われた公爵家の試練の間で現れた黄金の竜を倒してペットにしたとは聞いてはいた。
 大方兄であるアルトマイアー様が手助けしたと思っていたのだ。
 それが、まさか六歳でいくら顔だけ騎士とはいえ、近衛騎士を吹っ飛ばすなんて予想だにしていなかったのだ。
 帝国の皇族に多いとされた銀髪をたなびかせて一瞬で斬り込んだユリアーナ様は本当に美しかった。
俺は目が点になった。

 俺等は年に一回か二年に一回、ホンマン公爵家にて特訓に参加させられるのだが、その時にユリアーナ様と戦ったことがあるが、六歳の時にはまだ多少は互角に戦えたのに、八歳では俺は全く歯が立たなくなっていた。これは嫡男のアルトマイアー様並だ。

 公爵家には嫡男のアルトマイアー様と次男のエックハルト様がいるがこの養女のユリアーナ様までここまでの力を持っているとは……
 公爵家に仕える我らホフマン領の人間としてはこれほど嬉しい事は無かった。これでホフマン家は安泰だと思われたのだ。

 しかし、それが甘かった。

 なんと帝国皇帝がその才能に嫉妬してユリアーナ様達を亡き者にしようと暗躍していると公爵から通達が回ってきたのだ。
 その最後にいざという時は初代様の意思に従い帝国に出奔すると書かれていた。
 帝国に出奔するってどういう意味なのだ?
 俺にはよく理解できなかった。
 とりあえず、俺は戦支度だけはすることにした。
 今は畑を耕す老体だが、まだ若い奴らには負けはせぬ。
 いざという時は帝国で苦労しているユリアーナ様達を助けに行かねばなるまいと俺は心に決めたのだ。

 そして、今日、公爵様から連絡が来た。
「おい、大変だぞ、アッカーマン! 公爵様が立つそうだ!」
 隣の畑のギャッスルが公爵様からの回状を持ってきた。

「なになに、皇弟の息子反逆スって、何だ、これは?」
 そこには現皇帝が暗躍して前々皇帝一家を弑逆して皇家を乗っ取ったとことが事細やかに書かれていた。そして、公爵が前々皇帝陛下の孫であるユリアーナ様をいかに守ってきたかが書かれていた。
 そして、最後に前々皇帝陛下の遺命により反逆者を討ち滅ぼして、本来の皇帝の血筋を受け継ぐユリアーナ様を皇帝に就けるとでかでかと書かれていたのだ。

 そうか、かのユリアーナ様は皇族だったのか、道理で後光が差していたはずだ。
 俺はそう悟った。

「おい、皇帝を倒すってこれって反逆じゃ無いのか」
 ギャッスルは檄文を見てビビったみたいだった。

「ふん。我らはハンブルク王国の剣、初代様は皇弟殿下だったのだ。嫡男のアルトマイアー様も皇位継承権を持っているし、今回は皇位継承権第一位のユリアーナ様を立てて、皇帝位を弑逆によって手に入れた逆賊ヴィクトールを退治するのだ。正義の戦いでは無いか」
 俺は拳を握って武者震いした。
 これは最近領内で流行っていて家内が必死になって読んでいた恋愛小説そのままでは無いかとふと気付いた。こんな偶然もあるものだ。

「そ、そうか、正義の戦いになるのか」
 ギャッスルはやっと理解したみたいだった。
「では、直ちに国境に向かうぞ」
 そう言うと俺はそばに置いていた鎧を担ぐと駆け出した。
「おい、アッカーマン、待てよ」
「待ってられるか。これは正義の戦いだぞ」
 俺は心の底から熱くなるのが判った。
 両親を弑逆された幼いユリアーナ様を助け、前々皇帝を弑逆した悪逆非道の偽皇帝を退治するのだ。
こんな機会に出会えるなど滅多にないことだった。
 俺たち騎士は次々に国境に向けて駆け出しのだった。
****************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます
ここから反撃開始です。
続きは明日です。
お楽しみに。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…

satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!

処理中です...