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それから
45:賢王
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あの出来事から約1週間、漸く俺の身体も元に戻りつつある今…クロ様と一緒に、国王陛下に謁見している。
目の前には玉座に座りただならぬ威圧を放つ陛下。
その隣に、第二王妃様が静かに佇んでいる…2人とも、若く美しい。
その数メートル先、用意された椅子に座る俺と、その横に立つ緊張した様子のクロ様。
斜め後ろには、俺が万が一体調を崩した時に対応してくれる王宮のメイド長が立っている。
きっちりとした引っ詰め髪に、キラリと光る半月状の眼鏡。
見た目こそ初老に差し掛かるであろう彼女だが…その実、とても厳しくすごく俊敏に動く。
閑話休題。
今日俺たちは、陛下から直々にあの日の処罰を言い渡される予定だ。
父上は俺が心配すぎて同席したがったけど、シンシア兄様に連行されていった。
今この空間に、俺たち2人の味方はいない。
「…クロムウェル、そう緊張しなくともよい。此度の件は、私達大人の対応が遅れて起きた事件…一方的にお前たちを攻めたりなどせぬ」
慈悲深い、陛下の言葉。
少しだけ威圧が緩んだと思ったが、また直ぐに全身を刺すような痛みさえ感じる圧が開始される。
「そうとは言え、レオンハルト…其方の行動は、軽率であったな。何故リリス公爵を頼らなかった?
…何故、ライラック公爵の言い付けを破ったりしたのだ」
「…っそ、れは、」
突然話題を振られ、動揺する。
口の中が緊張で乾いて上手く声が出せない…クロ様が、そっと背中を撫でてくれる。
ぎゅっと両手を膝の上で握り締め、意を決して口を開いた。
「私の、心が弱かったせいです。父上やリリス公爵様を心から信用出来ず…その上、クロムウェル殿下を拐かしたかもしれない、リリアンヌ妃殿下への怒りで周りが見えなくなっていました」
「…それで、」
続きを促され、ごくりと唾を飲み込む。
俺は今きっと…陛下に、試されているんだろう。今回の失態を、どういう風に受け止めているのか。
俺は、クロ様の伴侶として本当に相応しいのかどうかを。
「…その結果、お腹の子の事を第一に考えずに事を起こしてしまいました。
もし、この子が死んでしまったら…その可能性も考えず、最も愚かな行動を取りました」
「そうか…して、その責任をどう償うつもりでおるのだ?」
この質問の答えで、俺の未来が変わる。
クロ様と共に歩むか…1人で、生きていくのか。
正解なんてわからない。わからないけど、やるしかない。
「この子を産み、立派な国王へと導いて見せる所存でございます」
「…ほう。それは、歴代のどの王よりも賢い賢王へ育てると…そう言っておるのだな?」
こくり、重く頷いて見せる
クロ様の婚約者を辞めるつもりなんて毛頭ない、此処からが俺の覚悟の見せ所だ。
「はい、その通りです。この子をどの王より…陛下より、賢く強き王へと育て上げるつもりです」
「…私より、賢く強き王か」
陛下の口元が一瞬楽しそうに弧を描く。
そう見えたのは、俺だけではなかったみたいだ…クロ様が、一歩前へ踏み出た。
「陛下、私がレオンハルトをどれだけ愛しているのかはご存知でしょう?」
「あぁ勿論…お前は、顔を合わせてもその婚約者殿の話しかしないからな」
ちょっと待て、そんな話聞いてないぞ。
動揺して思わずクロ様を見上げる。陛下にバラされるとは思ってなかったのか、バツが悪そうに目を逸らされて…これは、後で話し合いだな。
それはさておき、今は目の前の陛下の攻略だ。
「…私は、彼に誓いました。君以外とこれから先、一生愛し合う事は無いと。その証が、彼がしているネックレスです」
俺の胸元で輝くサファイア。
照明の光を反射して、キラリと柔らかく輝いている。
俺たちが、誓い合った証拠だ。
「陛下なら、この意味がお分かりでしょう…彼との婚約を解消する気は毛頭ありません。
王太子にすらなっていない身ではありますが…父として、王族として。この子を必ず立派な賢王に!」
「…陛下、どうかお願い致します。クロムウェル殿下と共に、この子の行く末を…お腹の子が、この国を導いていく様を見届けたいのです。」
2人して頭を下げる。
顔を上げるように命令され、ゆっくりと視線を上げた。
視界に入ったのは、嬉しそうに笑う陛下と妃殿下だった。
目の前には玉座に座りただならぬ威圧を放つ陛下。
その隣に、第二王妃様が静かに佇んでいる…2人とも、若く美しい。
その数メートル先、用意された椅子に座る俺と、その横に立つ緊張した様子のクロ様。
斜め後ろには、俺が万が一体調を崩した時に対応してくれる王宮のメイド長が立っている。
きっちりとした引っ詰め髪に、キラリと光る半月状の眼鏡。
見た目こそ初老に差し掛かるであろう彼女だが…その実、とても厳しくすごく俊敏に動く。
閑話休題。
今日俺たちは、陛下から直々にあの日の処罰を言い渡される予定だ。
父上は俺が心配すぎて同席したがったけど、シンシア兄様に連行されていった。
今この空間に、俺たち2人の味方はいない。
「…クロムウェル、そう緊張しなくともよい。此度の件は、私達大人の対応が遅れて起きた事件…一方的にお前たちを攻めたりなどせぬ」
慈悲深い、陛下の言葉。
少しだけ威圧が緩んだと思ったが、また直ぐに全身を刺すような痛みさえ感じる圧が開始される。
「そうとは言え、レオンハルト…其方の行動は、軽率であったな。何故リリス公爵を頼らなかった?
…何故、ライラック公爵の言い付けを破ったりしたのだ」
「…っそ、れは、」
突然話題を振られ、動揺する。
口の中が緊張で乾いて上手く声が出せない…クロ様が、そっと背中を撫でてくれる。
ぎゅっと両手を膝の上で握り締め、意を決して口を開いた。
「私の、心が弱かったせいです。父上やリリス公爵様を心から信用出来ず…その上、クロムウェル殿下を拐かしたかもしれない、リリアンヌ妃殿下への怒りで周りが見えなくなっていました」
「…それで、」
続きを促され、ごくりと唾を飲み込む。
俺は今きっと…陛下に、試されているんだろう。今回の失態を、どういう風に受け止めているのか。
俺は、クロ様の伴侶として本当に相応しいのかどうかを。
「…その結果、お腹の子の事を第一に考えずに事を起こしてしまいました。
もし、この子が死んでしまったら…その可能性も考えず、最も愚かな行動を取りました」
「そうか…して、その責任をどう償うつもりでおるのだ?」
この質問の答えで、俺の未来が変わる。
クロ様と共に歩むか…1人で、生きていくのか。
正解なんてわからない。わからないけど、やるしかない。
「この子を産み、立派な国王へと導いて見せる所存でございます」
「…ほう。それは、歴代のどの王よりも賢い賢王へ育てると…そう言っておるのだな?」
こくり、重く頷いて見せる
クロ様の婚約者を辞めるつもりなんて毛頭ない、此処からが俺の覚悟の見せ所だ。
「はい、その通りです。この子をどの王より…陛下より、賢く強き王へと育て上げるつもりです」
「…私より、賢く強き王か」
陛下の口元が一瞬楽しそうに弧を描く。
そう見えたのは、俺だけではなかったみたいだ…クロ様が、一歩前へ踏み出た。
「陛下、私がレオンハルトをどれだけ愛しているのかはご存知でしょう?」
「あぁ勿論…お前は、顔を合わせてもその婚約者殿の話しかしないからな」
ちょっと待て、そんな話聞いてないぞ。
動揺して思わずクロ様を見上げる。陛下にバラされるとは思ってなかったのか、バツが悪そうに目を逸らされて…これは、後で話し合いだな。
それはさておき、今は目の前の陛下の攻略だ。
「…私は、彼に誓いました。君以外とこれから先、一生愛し合う事は無いと。その証が、彼がしているネックレスです」
俺の胸元で輝くサファイア。
照明の光を反射して、キラリと柔らかく輝いている。
俺たちが、誓い合った証拠だ。
「陛下なら、この意味がお分かりでしょう…彼との婚約を解消する気は毛頭ありません。
王太子にすらなっていない身ではありますが…父として、王族として。この子を必ず立派な賢王に!」
「…陛下、どうかお願い致します。クロムウェル殿下と共に、この子の行く末を…お腹の子が、この国を導いていく様を見届けたいのです。」
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視界に入ったのは、嬉しそうに笑う陛下と妃殿下だった。
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