厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第二章 サイコパス覚醒

サイコパス再増員

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華那子と絵里が奥の方に歩いて行ったのを目で見送りながら、衣摩は口を開く。

  「何がなんかわからんやろうけど」
  「早い話が、あんたをうちらの仲間にしようって事や」
 
  『・・・』
 
  「ほんでな、仲間になるんやったらその宝珠をあんたにプレゼントしようと思ってな」
  「ボスに頼み込んで抜き取ってもらったんや」
  「使い勝手の良かったスキルなんやろ?」

  『・・・ そりゃまぁそうやけど・・・』
 
  「まずはそれを観察してみて。んで鑑定ってスキルを覚えて欲しいねん」
  『この球で鑑定覚えれんのか?』
  「それを利用してって事やけどな」

少年は意図を理解したようで、宝珠をコロコロと手の中で転がしたり全部の面を目を凝らしてしっかりと見続けた。
 (ヒュン)

  『あっ!』
  「覚えたか」

衣摩はすかさず宝珠を取り返し、少年に鑑定で自分のステータスを見る事を勧める。

  「変な称号付いとるやろ?」
  「うちらはなあ、殺人者集団なんよ」

  『・・・』

  「人を殺す事をどう思っとう?」

  『・・・』

  『それに答えへんかったらどうすんねん?』

  「ん?死ぬんちゃう?(笑)」
  『はぁ?本気でゆうとんか?』
  「うちらは人殺しやってゆぅとーやん」

  「あんたの選択肢は2つだけ」
  「生きるか死ぬかだけや」

  『そりゃー脅迫ちゃうんかぃ!』
  「ん?なんで?」

  『仲間にならんかったら殺すって事やろ?』

  「はぁ?いつそんな話した?アホかあんたは?」
  「人を殺す事についてどう思うって聞いてるだけやで?」

  『嘘つけー!明らかにオイラを殺すって顔して話しとったやろが―』

  「ん?なんや?ビビっとんか? ホンマ可愛いやっちゃなー(笑)」

  『し、しばくどーおんどりゃー』
少年は真っ赤な顔をして反抗してくる。

  「やってみ?うちに勝てるかな?」
  「"亮"」
衣摩は大鎌を顕現させた。

  『き、汚いぞー 武器持つなやー』

  「おまえなぁ殺し合いに汚いも綺麗も無いやろー」
  「どーんな手段を使ってでも、相手を殺したもんが勝ちやで?」
  「生き残る事こそ勝利や!」








一方、奥では。



 「おっさん、聞こえてると思うけど、ほんまに良く聞いてな」
 「今からあんたの拘束を解くんやけど、その先をどう生きるか決めて欲しいねん」
 「後ろにおる、うちらのボスの従者として生きるか、それ以外か」
 「意味は分かると思うけどな」



 「丘絵里の名に措いて命ずる 汝を解放す」

『おおおおおおおおおおおあああああああ~!!!!』

男は奇声を上げた。
そして両手を、天でも掴むかのように伸ばし空を見上げた。

自らの身体を再確認しながら、自分の顔をぺたぺたと触り、股間に手をやる。

『ぐふふふ』
『丘絵里よ、おまえらの下僕になれと?』

 「ま、まぁそういうこっちゃ」
妙にドスの効いた声で、妙に迫力のある顔で、男が凄み問いかける。
絵里でもさすがに少しビビってしまった。

『従者っちゅうのは、さっきまでみたいな奴隷になる事か?』
 「ちゃうわ!」
 「うちみたいに自由にやれば良いけど、ボスの支配下に置かれるってだけや」

『まぁかまへんぞ』
『丘絵里には感謝はしても、恨む要素は皆無やからな』

意味が分からず、?を醸し出し絵里は首を傾ける。

『ボスよ、喜んで従者とやらに成らせてもらうぞ』

「まぁどうでも良いけど、そのボスは辞めてくれへんか?」
華那子は別に支配欲が強い訳では無いので、"ボス"と呼ばれるのは少しこそばゆい。

『それじゃー"お嬢"とでも呼ぼうか?』
「まぁなんでもえぇんやけどな・・・」



 我が従属と化し
 我に従え

「バルレ!」


雨ヶ崎風馬が仲間になった。



『なんや変な感じやのー』
『お嬢に対する警戒心見たいなもんが消えたなぁ』
 「うちには?」

『さっきも言ったが、あんたには感謝の気持ちしかないわ』
『エッチの時の声がちょっと大きいくらいで、それ以外はほんまえぇ女や』
 「あ、アホな事言うなよー」

華那子がジト目で絵里を見つめる。
居た堪れない絵里は話をすり替える。

 「あんたの娘か?介護しとった奴もうちが殺したんやで?」

『久しぶりに自由に動けるからか、ちょっと気分が高揚しとるわ』

そう言うと、聞いても居ないのに雨ヶ崎風馬が自分語りを始めた。

『あの女は娘や介護してる人や無いんよ。
3年ほど前に急性心筋梗塞で緊急入院したんやけどな、絶対安静が終わった後に大部屋に移った時に知り合ったんが最初や。
同じ部屋の患者の彼女やってその時は言いよったんやけど、そいつが退院した後もしょっちゅう見舞いにきよってなー』

「なぁ話、長い?」
なんとなく長話になりそうな口調だったので、華那子は訝し気に聞いてみた。

『すまない、簡潔に言うと勝手にうちに住み着いて、2年も掛けて何かの薬を毎日少量づつ盛られてあんな状態になってしまってたんや』

 「あ~"ヒ素"かなんかやな」

『俺の預貯金も全部降ろされて使われてな、一度だけ酔っぱらった時にぽろっと漏らしたきんのインゴッドを何本か持ってるって話を覚えてて、あんな身体にされて、毎日死なない程度の水と食料を与えられて、自分でトイレも出来ない状態で、毎日毎日しつこくきん在り処ありかを聞かれてたんや。
もういっそ殺してくれって思ってたが、言葉も喋れないほど衰弱させられてたからな。

あの女の足を丘絵里が切り飛ばした時は、本当にスカッとしたわ。
その後、多分俺が殺したんやろうけど、あんまり自覚が無かったのが残念じゃ。

そして、こんな若返った身体にしてくれたんも丘絵里やからな。
ほんま感謝しか出来んわ』


余程うっぷんが溜まっていたのだろう、一気に語ると一息ついて二人に頭を下げる。

『俺を救ってくれて本当にありがとうございました。』







 「衣摩~まだやっとんか?」

雨ヶ崎風馬の仲間参入意思を確認後、砦に冷凍庫の魔法を掛けてしばらく様子を見る事に。
風馬に3つの格闘系宝珠を取り込ませ、槍に名前を付けさせた。
ネーミングセンスに3人で大笑いした所だ。


衣摩と少年は相変わらず嚙み合わない会話を続けていた。

 「こっちは終わったぞー」
「この男がうちらの仲間になったぞっ」

衣摩が眉間にしわを寄せて言った。
  「この子が頭悪すぎて話が成立せぇへんねん・・・」
  『お、おいらじゃなくてあんたが頭悪すぎるんやろー』

『なんかあんたら二人、楽しそうやな?』
風馬が楽しそうに言い合いをしている二人に向かって言い放った。

  『「楽しないわ~」』

『息ぴったしやな(笑)』


衣摩と少年がなんとなく風馬のステを鑑定で見てみた。



雨ヶ崎風馬(58)
Lv2

種族 【新人類】 選択
職業 【--】 選択
称号 【同族殺し】【殺人鬼】【惨殺者】
状態 【眷属契約-琴南華那子】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 67/67
MP 23/23
STR 20(+4)
DEF 18
AGI 21(+8)
DEX  17(+6)
INT 12
SP/9
基本技能一覧
      天変の槍 
      鑑定 槍術 拳闘術 蹴足術
       
耐性一覧
      毒耐性
      
27/20



  「な、なんでもう殺人称号付いとんねん?」
『こんなんも手に入っとるぞ』

『オニヤンマ!』

手には黄色と黒の縞模様の短柄で刃の部分が長い槍が顕現した。


槍〔天変の槍〕[所有者:雨ヶ崎風馬]天候操作 成長度技能覚醒 URユニークウェポン
[収納時自動修復]-[装着時ステータス5%アップ]


  「あ、あんたいったい何もんなんや~」
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