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第三章 健斗と美咲と新たな出会い
熊のボス
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姉妹はボス戦に参加したいと言ってきた。
どちらかと言えば、妹がもっともっと強くなりたいと願っているからだろう。
「こっちの広い所に誘い出すから、姿が見えたらさっきと同じで軽くダメ入れてねー」
「だめいれる?」
「あぁごめん、ダメージを入れるって意味ね」
「わかったー」
健斗は本殿の上を通り過ぎ熊のボスの頭上に辿り着く。
熊のボスは、チーキーベアの上位種でサーシィベア。
生意気な熊と言う意味は変わらないが、見た目が大きく違う。
体躯は二回りくらいは大きく見える。
爪の長さがチーキーとは全く違うし、口からはみ出す牙は、熊と言うより猪みたいな口元だ。
レベルも18と、今まで見た魔物の中では一番高い。
だが健斗のレベルからしたら格下感は否めない。
それにトロールのように自己回復するようなスキルも持っていないし。
レベルやスキルで見下して、健斗の中には慢心が溢れていた。
グゥオオオオオオオオオオー
健斗を見つけると、大きな声で[咆哮]をあげた。
咆哮には威圧の効果もあるので耐性の無い者は硬直してしまう。
その為、健斗は空中からゆっくりと落下していった。
(しまった~)
境内の方でも咆哮を聞いてしまった2人姉妹がその場でしゃがみ込む。
母も剣女もそんなに高く浮いてなかったが、風纏で落下の衝撃は皆無だったのが幸いだった。
『健斗さん、大丈夫かな?』
「うちらとはレベルも違うし、まぁ身体が動くようになるまで待っときましょ」
サーシィベアが飛び上がる。
身体の大きさからは想像もつかない大きなジャンプだ。
バッゴーン
健斗はサーシィベアの鋭く危険な爪で叩き落される。
グフゥ
背中から大量の血が流れ落ちる。
ベチャッ ボギッ
地面に叩きつけられて、肋骨や膝、手首の骨が折れる音が耳まで響く。
ゴボッ
口から大量の吐血をする健斗の頭の中に、少し死の予感が漂ってきた。
ドゴンッ
サーシィベアは転がる健斗を蹴り飛ばし、浮き上がった身体をまた叩き落す。
健斗の意識は薄れていくが、何度も心の中でキュアレの呪文を唱え続けた。
回復呪文1度では回復しきれない程の大怪我を負わされる。
回復と大ダメージが交互に訪れる。
だんだんとダメージが蓄積されていく・・・
このままやられてしまうか・・・
意識が混濁する・・・
健斗は厄災が始まった時からの事を思い返していた。
走馬灯のように。
もう一度美咲に会いたい・・・
こんな所で死ねない!
死にたくない!!
強く強く心の中で想った。
健斗の想いが形に変わる。
(ヒュン)
急激に治癒の効果が大きく上昇する。
「キュアラ~」
連続して治癒魔法を唱え続けた結果だろうが、上位のスキルを覚えた。
だがサーシィベアの無限コンボ攻撃は続く。
一度の回復呪文で全快に近い回復をするうちに、意識もハッキリとしてきた。
地面に叩きつけられたところで、サーシィベアから遠ざかるように転がった。
「風疾駆」
一旦上空に遁れて体制を立て直さなければいけない。
もう一度キュアラを掛けて、万全の状態に戻して戦いの姿勢を整える。
HPが完全回復しないのが何故かはわからないが、それでも9割は戻っている。
サーシィベアのHPはレベルの割にかなり高く、その分、防御や素早さが極端に低い。
いつもなら、お得意様の脳筋魔獣なのに、やはりボス級はそんなに甘くは無かった。
「風刃!」
「風刃!!」
「風刃!!!」
威力は高めだが、あまりHPが減って行かない。
ジャベリンとかで一撃死したらもったいないし。
そんな生ぬるい事を考えながら攻撃を続ける。
ここまで追い込まれていたのに、まだ学習できてないようだ。
「水弾!」
「水弾!!」
「水弾っ!!!」
やっと10%くらいは削れただろうか。
HPが半分くらいになったら向こうに誘導しようと考える。
「水弾!」「水弾!」「水弾!」
「水弾!」「水弾!」「水弾!」
十数分が経った頃、あまりの遅さに健斗に何かあったんだろうと、母と剣女が様子を見に本殿の上から姿をみせた。
『大丈夫ですか~』
「キャァァァァァァァ」
健斗の血まみれの身体を見て剣女が大声で悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞いてサーシィベアが咆哮を使う。
グゥオオオオオオオオオオー
健斗はまたも硬直する。
そして、空中の二人も硬直したまま、ゆっくりと落ちて来る。
サーシィベアのコンボ攻撃の始まりの予感がする。
剣女に向かってジャンプして叩き落す。
剣女はほぼすぐに意識を刈り取られた。
そして着地と同時に母にも飛び掛かり、両手で叩き落された。
二人共健斗ほどの防御力が無いため、致命傷である。
放っておけば短い時間で二度と動くことは無くなるだろう。
「おか~ん!」「千里~!」
健斗の大声に徒事では無いと察した姉妹がゆっくりと本殿裏に歩いていく。
姉妹2人は建物の角からそっと裏を覗いて見て大きく驚いた。
本殿裏で起こっている惨劇を目撃してしまったからだ。
血塗れの男が倒れ込み、その向こうに大きな熊が仁王立ちしている。
熊の爪先は真っ赤に染まり、その向こう側には女性が二人、やはり血まみれで倒れていた。
生きているようには見えないその女性達はピクリとも動かない。
その大きな熊はこちらに向き直り、チラッと姉妹を見たが、さして気にも留めずに健斗を蹴り上げようと体勢を低くした。
姉はその場でへたり込み戦意を完全に失ったようだ。
口がパクパクして何かを言いたいようだが言葉が出てこない。
妹は戦う事を決意し、手に持つ刀を熊の顔面目掛けて投擲した。
グギャァァァァ
サーシィベアの右目に妹が投げた刀が浅くだが突き刺さった。
姉妹は二人共、最初の咆哮で威圧耐性を取得していた。
そして妹はその前に投擲のスキルも覚えていた。
姉は投石のスキルを覚えていた。
『お姉ちゃん!死にたくなかったら石くらい投げて補助しなよ!」
「で、でもあんな大きな熊に勝てる訳ないやん」
「お、大人の人もみんなやられとるし・・・」
『だからってそんなとこに座り込んでて熊が見逃してくれるとでも思っとるんか?』
『勝手に死ねや!ビビりが~』
『うちは死にとうないし、こんな熊くらい倒せるようになりたいんやっ』
妹はそう言うと、姉の持っている刀を取り上げて果敢に熊に切りかかる。
バヒュッ
サーシィベアの鋭い爪攻撃が妹を襲う。
妹はしゃがんで爪攻撃を躱し、刀の刃先を熊の足に突き刺した。
素早く引き抜きすぐに後ろへと飛んだ。
怒った熊は両手で妹を掴みにかかる。
だが、遅い動きに妹は翻弄されること無く素早くすり抜けた。
そうこうしているうちに、健斗は硬直が解けて、大慌てで女性たちの元に走り寄る。
「キュアラ」「キュアラ」「キュアラー」「キュアラ~~」
もう虫の息だった二人はなんとか息を吹き返し、繰り返し唱えられた回復呪文に意識もハッキリとしてきて、今の状況も把握できるようになってきた。
『い、いきなりの攻撃で不意を突かれたけど、あんた、回復呪文も使えたんやな』
「助かったわー」
『あぁもう死ぬんやと悟ったんやけど、生き返ったんやなぁ』
『また子供らの顔が見れるわ・・・』
「私は、目の前に熊の姿が見えたと思ったら、すぐに意識が無くなったからなぁ」
『オリャ~』
『ドリャ~』
呆けている3人の大人を余所に、一人で熊と奮闘する少女が目に入る。
剣女は素早かった。
何も言わずに刀を握り、熊の背後から切りかかる。
母も素早く立ち上がり、長刀を背中から抜き出し上段に構えたまま近づき、熊に切りかかる。
レベル差では上位の二人の剣圧は熊に大きなダメージを与える。
首を回して後ろを見たが、熊はそのまま正面、目の前の少女に襲い掛かる。
「水投槍」
やっと健斗も立ち上がり戦闘に参加してきた。
水の槍は熊の後頭部に当たり大きく爆ぜた。
それなりのダメージを与えたが、サーシィベアを貫くほどの威力は無かった。
「水投槍」
もう一度頭部を狙って撃ち放ったが、同じようにそれなりのダメージを与えて爆ぜて消えていった。
『もぉ~冷たいなぁ』
爆ぜた槍が水飛沫となって二人の女性に降りかかる。
どちらかと言えば、妹がもっともっと強くなりたいと願っているからだろう。
「こっちの広い所に誘い出すから、姿が見えたらさっきと同じで軽くダメ入れてねー」
「だめいれる?」
「あぁごめん、ダメージを入れるって意味ね」
「わかったー」
健斗は本殿の上を通り過ぎ熊のボスの頭上に辿り着く。
熊のボスは、チーキーベアの上位種でサーシィベア。
生意気な熊と言う意味は変わらないが、見た目が大きく違う。
体躯は二回りくらいは大きく見える。
爪の長さがチーキーとは全く違うし、口からはみ出す牙は、熊と言うより猪みたいな口元だ。
レベルも18と、今まで見た魔物の中では一番高い。
だが健斗のレベルからしたら格下感は否めない。
それにトロールのように自己回復するようなスキルも持っていないし。
レベルやスキルで見下して、健斗の中には慢心が溢れていた。
グゥオオオオオオオオオオー
健斗を見つけると、大きな声で[咆哮]をあげた。
咆哮には威圧の効果もあるので耐性の無い者は硬直してしまう。
その為、健斗は空中からゆっくりと落下していった。
(しまった~)
境内の方でも咆哮を聞いてしまった2人姉妹がその場でしゃがみ込む。
母も剣女もそんなに高く浮いてなかったが、風纏で落下の衝撃は皆無だったのが幸いだった。
『健斗さん、大丈夫かな?』
「うちらとはレベルも違うし、まぁ身体が動くようになるまで待っときましょ」
サーシィベアが飛び上がる。
身体の大きさからは想像もつかない大きなジャンプだ。
バッゴーン
健斗はサーシィベアの鋭く危険な爪で叩き落される。
グフゥ
背中から大量の血が流れ落ちる。
ベチャッ ボギッ
地面に叩きつけられて、肋骨や膝、手首の骨が折れる音が耳まで響く。
ゴボッ
口から大量の吐血をする健斗の頭の中に、少し死の予感が漂ってきた。
ドゴンッ
サーシィベアは転がる健斗を蹴り飛ばし、浮き上がった身体をまた叩き落す。
健斗の意識は薄れていくが、何度も心の中でキュアレの呪文を唱え続けた。
回復呪文1度では回復しきれない程の大怪我を負わされる。
回復と大ダメージが交互に訪れる。
だんだんとダメージが蓄積されていく・・・
このままやられてしまうか・・・
意識が混濁する・・・
健斗は厄災が始まった時からの事を思い返していた。
走馬灯のように。
もう一度美咲に会いたい・・・
こんな所で死ねない!
死にたくない!!
強く強く心の中で想った。
健斗の想いが形に変わる。
(ヒュン)
急激に治癒の効果が大きく上昇する。
「キュアラ~」
連続して治癒魔法を唱え続けた結果だろうが、上位のスキルを覚えた。
だがサーシィベアの無限コンボ攻撃は続く。
一度の回復呪文で全快に近い回復をするうちに、意識もハッキリとしてきた。
地面に叩きつけられたところで、サーシィベアから遠ざかるように転がった。
「風疾駆」
一旦上空に遁れて体制を立て直さなければいけない。
もう一度キュアラを掛けて、万全の状態に戻して戦いの姿勢を整える。
HPが完全回復しないのが何故かはわからないが、それでも9割は戻っている。
サーシィベアのHPはレベルの割にかなり高く、その分、防御や素早さが極端に低い。
いつもなら、お得意様の脳筋魔獣なのに、やはりボス級はそんなに甘くは無かった。
「風刃!」
「風刃!!」
「風刃!!!」
威力は高めだが、あまりHPが減って行かない。
ジャベリンとかで一撃死したらもったいないし。
そんな生ぬるい事を考えながら攻撃を続ける。
ここまで追い込まれていたのに、まだ学習できてないようだ。
「水弾!」
「水弾!!」
「水弾っ!!!」
やっと10%くらいは削れただろうか。
HPが半分くらいになったら向こうに誘導しようと考える。
「水弾!」「水弾!」「水弾!」
「水弾!」「水弾!」「水弾!」
十数分が経った頃、あまりの遅さに健斗に何かあったんだろうと、母と剣女が様子を見に本殿の上から姿をみせた。
『大丈夫ですか~』
「キャァァァァァァァ」
健斗の血まみれの身体を見て剣女が大声で悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞いてサーシィベアが咆哮を使う。
グゥオオオオオオオオオオー
健斗はまたも硬直する。
そして、空中の二人も硬直したまま、ゆっくりと落ちて来る。
サーシィベアのコンボ攻撃の始まりの予感がする。
剣女に向かってジャンプして叩き落す。
剣女はほぼすぐに意識を刈り取られた。
そして着地と同時に母にも飛び掛かり、両手で叩き落された。
二人共健斗ほどの防御力が無いため、致命傷である。
放っておけば短い時間で二度と動くことは無くなるだろう。
「おか~ん!」「千里~!」
健斗の大声に徒事では無いと察した姉妹がゆっくりと本殿裏に歩いていく。
姉妹2人は建物の角からそっと裏を覗いて見て大きく驚いた。
本殿裏で起こっている惨劇を目撃してしまったからだ。
血塗れの男が倒れ込み、その向こうに大きな熊が仁王立ちしている。
熊の爪先は真っ赤に染まり、その向こう側には女性が二人、やはり血まみれで倒れていた。
生きているようには見えないその女性達はピクリとも動かない。
その大きな熊はこちらに向き直り、チラッと姉妹を見たが、さして気にも留めずに健斗を蹴り上げようと体勢を低くした。
姉はその場でへたり込み戦意を完全に失ったようだ。
口がパクパクして何かを言いたいようだが言葉が出てこない。
妹は戦う事を決意し、手に持つ刀を熊の顔面目掛けて投擲した。
グギャァァァァ
サーシィベアの右目に妹が投げた刀が浅くだが突き刺さった。
姉妹は二人共、最初の咆哮で威圧耐性を取得していた。
そして妹はその前に投擲のスキルも覚えていた。
姉は投石のスキルを覚えていた。
『お姉ちゃん!死にたくなかったら石くらい投げて補助しなよ!」
「で、でもあんな大きな熊に勝てる訳ないやん」
「お、大人の人もみんなやられとるし・・・」
『だからってそんなとこに座り込んでて熊が見逃してくれるとでも思っとるんか?』
『勝手に死ねや!ビビりが~』
『うちは死にとうないし、こんな熊くらい倒せるようになりたいんやっ』
妹はそう言うと、姉の持っている刀を取り上げて果敢に熊に切りかかる。
バヒュッ
サーシィベアの鋭い爪攻撃が妹を襲う。
妹はしゃがんで爪攻撃を躱し、刀の刃先を熊の足に突き刺した。
素早く引き抜きすぐに後ろへと飛んだ。
怒った熊は両手で妹を掴みにかかる。
だが、遅い動きに妹は翻弄されること無く素早くすり抜けた。
そうこうしているうちに、健斗は硬直が解けて、大慌てで女性たちの元に走り寄る。
「キュアラ」「キュアラ」「キュアラー」「キュアラ~~」
もう虫の息だった二人はなんとか息を吹き返し、繰り返し唱えられた回復呪文に意識もハッキリとしてきて、今の状況も把握できるようになってきた。
『い、いきなりの攻撃で不意を突かれたけど、あんた、回復呪文も使えたんやな』
「助かったわー」
『あぁもう死ぬんやと悟ったんやけど、生き返ったんやなぁ』
『また子供らの顔が見れるわ・・・』
「私は、目の前に熊の姿が見えたと思ったら、すぐに意識が無くなったからなぁ」
『オリャ~』
『ドリャ~』
呆けている3人の大人を余所に、一人で熊と奮闘する少女が目に入る。
剣女は素早かった。
何も言わずに刀を握り、熊の背後から切りかかる。
母も素早く立ち上がり、長刀を背中から抜き出し上段に構えたまま近づき、熊に切りかかる。
レベル差では上位の二人の剣圧は熊に大きなダメージを与える。
首を回して後ろを見たが、熊はそのまま正面、目の前の少女に襲い掛かる。
「水投槍」
やっと健斗も立ち上がり戦闘に参加してきた。
水の槍は熊の後頭部に当たり大きく爆ぜた。
それなりのダメージを与えたが、サーシィベアを貫くほどの威力は無かった。
「水投槍」
もう一度頭部を狙って撃ち放ったが、同じようにそれなりのダメージを与えて爆ぜて消えていった。
『もぉ~冷たいなぁ』
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