厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第四章 天使と悪魔

悪魔の軍団 猿と戯れる

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『しかし、見事に4人共変身系のスキルを得たなぁ』

(俺もあの輪に入っていれば何を覚えたんだろうなぁ)
中二病をくすぐる装備を手に入れた眷属が少し羨ましいトオルは、心の中でそう思う。
だが、色んな職業でバランスが良くなった軍団を、微笑ましい顔で見つめた。

『それじゃー上にあがって行こうか』

30階に到達するまで、強めのゴブリンは居るものの、もう人間は見つからなかった。
強めとは言っても、戦闘武装出来るトオルの眷属とは相手にならない位の差が付いている。

リーこの階の落下防止ネットは金属製なんですね」

今まではポリエチレンやポリプロピレン製のロープで作られた防護ネットだったが、この階は金属ワイヤーを編み込んだ様なネットが吹き抜け全体に張り巡らせられている。

この階からは5階おきにネットが張られているが、そのどれもが破られてロープが複雑に垂れ下がっている。
そして吹き抜けの上を見た時にその空間内を自由自在に動き回る魔物が目に付く。

ウッキャー
ホッホッホー

掛井橋あっ、猿の魔物ですね、エアエイプLv10前後が沢山」
『ん?鑑定を覚えたのか?』
掛井橋はいっあの魔物をずっと見てたら勝手に覚えました」

トオルはふと青空の顔を見た。
やはり焦った顔をしている。

『美凪、何もみんなと同じスキルを覚えなくてはいけないって事は無いんだぞ』

青空あ、はいっ・・・ でも自分だけ取り残されてるようで・・・」
『何を言ってるんだ、お前はうちのパーティーで貴重な前衛職だ』
『取り残されるってより、前線で戦う重要な役割なんだから、頼むぞ』
青空は、はいっ…」


『ちょっとここで一回休もうか』
トオルはそう言うと、一番近くの部屋のドアを開けて入って行った。

後を追うように4人はゾロゾロとその家に入って行った。


その家のリビングに行き、ダイニングテーブルの椅子にトオルは座る。
眷属たちはラグカーペットの上にじか座りしトオルの話を待つ。


『まずは、全員が持ってるスキル【隠蔽】を行使しよう』
『最初はステータスとレベル位しか隠蔽できないが、すぐに熟練度も上がるだろう』

五十惟いとい、今覚えた鑑定で俺のステを見てみろ』

掛井橋は名指しされて、遠慮しながらもトオルのステを覗く。

掛井橋あれっ?レベルが15で職業が剣士、称号は無しでスキルが短剣術と料理しか無いです」
リーそこまで偽装出来るんですね」

『完全に隠蔽できてるだろう』
『まずは隠蔽出来る所だけ変更してみてくれ』

4人は色々と画策しているようだ。

『ポイントで何か取ったか?』

リー私は忍術¹を取りました、次はまだ考えてはいませんが、貯蓄しないとですね」
藤浜自分は道化した時に浮遊が使えると便利なので、ポイント10になったらすぐに」
掛井橋私は守備が弱いので、自分を護衛させる思惑で召喚術を狙ってます」

『おぅ召喚術とか精霊術とかちょっと気持ちが揺らぐなw』

青空私は単純に身体強化¹が欲しいですね、魔法も考えたけど、INTもMPも低すぎて」

『身体強化を持ってる奴を見た事あるなぁ』

『俺のスキルで、殺ったらそのあとでスキル取れるんやけどなー』

リー私たちがもう少し強くなったら、マンハントに行きましょう」
『それまでに隠蔽のスキルも完璧にしとかないとな』


一行は休憩ののち、猿退治に出かけた。

エアエイプは、破れて解けた防護ネットを上手く使い、30階から40階付近までを網羅していた。

その数もとんでもなく、50や100は居るんじゃないかと思わせるほどだ。

『それじゃ~行くか~』

トオルと青空は階段で上階にあがって行く。
リーは、ネットを猿と同じように上手に使い、覚えたての忍術で戦う。
掛井橋は闇纏と浮遊を使い、猿からの攻撃を躱しながら攻撃魔法で屠って行く。
黒い霧のような球がエイプに当たると、吹き飛ばされて奥の壁に張り付き息絶える。

藤浜は、自分の眷属にした女にレベルを付ける所から始める。
掛井橋が吹き飛ばして、まだ息のあるエイプを捕まえて眷属にダメージを入れさせる。
部屋に入り死に掛けのエイプを屠る。

女性は進化の苦痛で転げ回り、藤浜はそれを優しい目で見つめている。

進化が終わり息も絶え絶えの女性を、藤浜が優しく抱き起す。
今後の事を軽く話し、今日と明日はレベルを上げる事に専念する旨を伝えた。

女性は自分のステータスボードを見て、やっと今の現状に少し理解を示し始める。
眷属女レベル7から始まるんですね」
藤浜はぁ?普通は1からだが、あの猿のレベルが高かったんだな?」

藤浜は、今倒したエイプの経験値でレベルが上がり、狙っていた【浮遊】を取得した。


外に出ると、上階から飛ばされたり落ちてきたりしたエアエイプが数匹、廊下や防護金網の上で踊っている。
眷属女猿ダンス?」

エアエイプ特有の鼓舞だ。効果は仲間対象にステータスアップのバフ効果を与える。


眷属女えぇ~いっ気持ちの悪い奴らめ」
そう叫ぶと、いきなり青空が使っていたゴルフクラブで猿の頭を殴り飛ばした。

猿ダンスをなんとなく眺めていた藤浜も戦闘態勢を取らざるを得なくなった。

新しい浮遊のスキルと道化師の装束を試してみたかったから急いでスキルを発動させる。


スキルの御手玉おてだまは、大宇宙の深淵から取り出した暗黒物質を、お手玉サイズに圧縮して掌の上に顕現させる。
それをボールの様にジャグリングしながら敵にぶつける簡単な技だった。
だが、その闇球が当たったレベルの低い猿は、細胞レベルでバラバラに消し飛んだ。
(すげぇ~威力やなぁ・・・)

上の方で闇を纏い宙に浮いて魔法を連発している黒巫女くろみこ掛井橋の闇球もまた、藤浜の御手玉と同じく闇属性だと見ただけで分かる。名前に闇が入ってるし…
その真っ黒な魔法弾が猿に当たると、シャボン玉の様に猿ごと弾けて消えた。


藤浜のジャグリングと言うスキルは、両手に顕現するボーリングのピンのような形をしたクラブを投げつけるスキルだ。御手玉は単体攻撃だが、ジャグリングはロケットランチャーの様に飛んで行き、着弾したその場でクラブが大爆発して近くの敵を巻き込む範囲攻撃だった。

だが、自分の眷属と同じラインで戦うならこのスキルは仲間を巻き込みそうで使いにくい。

三叉棍!さんさこん
藤浜は魔法系のスキルは辞めて体術で戦う事にシフトした。
まだ武器に名前を付けていない。

藤浜の女眷属はゴルフクラブが気に入ったようで、一応手渡していた長包丁は腰の皮袋に刺したままだ。
ゴルフクラブの方が優位な距離感を保てるからだろう。
しかし、エイプの素早さは高めだから気を付けろよと藤浜が檄を飛ばす。

藤浜と同じラインで暴れているエイプは、体術で楽々倒される藤浜よりも、廊下で長物を振りまわしているメスの方がやりやすいと思ってそちらに向かって一斉に襲い掛かる。

接近戦になると、その女性はゴルフクラブを真ん中位に持ち替えて、器用にクルクルと回しながらエアエイプにダメージを入れながら防御にも使っている。

藤浜は目の前に居た奴らが、反転し背を向け自分の眷属に向かって行くのを見逃すはずが無い。
エイプを後ろからスキルである[不意打ち]で切りつけ[切刻きりきざみ]でほふる。

(これは連携スキルだなぁ使いやすい!)

悪遊戯わるふざけは相手を怒らせ、ターゲットを自分に向かわせる挑発系のスキルだ。


藤浜大して倒して無いのに、かなりレベルが上がるのが早いよなぁ」
眷属女ご主人様、少し部屋に退避しても良いですか?」
藤浜ど、どした?怪我したのか?」

藤浜は急に非難すると言い出したので怪我でもしたのかと心配している。
元々好みのタイプの顔だったが、20代前半まで若返ったその顔はとても可愛くて気に入っている。
眷属契約の縛りも有るのだろう、その女性をとても大事に思っている。

眷属女レベルが上がってスキルも覚えて少し考察したいだけです」
藤浜そうか、怪我が無いのなら問題ない、入るぞ」

藤浜がすぐそばのドアを開けて中に入る。その後を眷属女の﨡井戸にいど大海ひろみが入って行く。

﨡井戸職業はご主人様と同じ道化師にしました。ゴルフクラブを使っていたら、バトン操者って称号が付いて恩恵の道化門とで、道化服と道化術を手に入れました」

﨡井戸にいど大海ひろみ(48)
Lv17
種族 【新人類】 選択
職業 【道化師】 選択
恩恵 【道化門】
称号 【バトン操者】
状態 【眷属化-藤浜武人】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 2486/1783(+703)
MP 1637/934(+703)

STR 496/297(+197)
DEF 428/231(+197)
AGI 547/350(+197)
DEX   530/333(+197)
INT 398/197(+197)
SP/340
基本技能一覧
      道化服
      駿動 跳躍
      道化術-[惡手玉おてだま]-[黒ィ傘]-[黒棒バトン]
          ┗[暗黒刃]
耐性一覧
     苦痛耐性 物理耐性            
5832/4888


ヒロミが道化服を展開すると、足元に紫に光る魔法陣が浮かび上がり、そのままの形で素早く身体を上に通り抜ける。
黒いシルクハット、黒いフリフリフリルの首に巻くチョーカー、ゴスロリ系の白と黒のダイヤ型が交互に並ぶハーリキンチェックの上半身に黒い膝上丈のフレアーサーキュラースカートのワンピース、黒いケープマント、黒と白の横縞模様のニーハイソックス、厚底でくるぶしまで隠れる黒いハーフブーツ。白塗りの顔に右目だけ赤いハートで左目は黒い縦筋に目の下は黒い涙模様、深紅のルージュで縁取りに濃い紫を入れた愛らしい口の能面。スキルの黒い傘がとても良く似合う。

晴海のイベントに行けば、写真をパシャパシャ撮られる様な可愛らしさがある。

﨡井戸ご主人様、本当にありがとうございました」
大海ひろみは深々と頭を下げて藤浜に礼を言う。

藤浜がキョトンとした顔を見せたので、大海ひろみはぼちぼちと話し出した。
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