厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第四章 天使と悪魔

悪魔の眷属、美凪の憂鬱と歓喜

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中学校に戻った一行は、一旦トオルの部屋に行く。

『五十惟、お前は昼飯食ったら小学校の避難民の中から大工か建築のスキル持ちを眷属にしてくれ』
『それと、藤浜と大海は今から戸弩力部屋に行って、ついでに一緒にランチをして来てくれ』
『その後に五十惟と合流して事務が出来る奴2人位見繕って来てくれな』

3人はいっわかりました」
美凪・・・」

トオルが使っている部屋は元は理科室だった所で、45人収容できる84㎡と結構大きめの部屋と、奥には準備室と言う名の小部屋が続いている。小部屋とは言え、畳換算だと16畳ほどある。

今はトオルのベッドと作業用の机と椅子が置いてあるだけだ。


この部屋を選んだのは、水が使えるからだが、他の水が使える家庭科室だと部屋の至る所に給排水設備があるが、理科室なら壁際に並んであるだけだったのでこちらを選んだ。






『ここを今後のクラン、ギルドとしての運営起点にしたいと思ってるんですが』
七和田その辺はトオル君にお任せするよ」

クランの責任者である七和田なわだ亜生良あきら達に今後の展開を相談する。

『そこで、今まで自分一人でやってきた事を分担できるように人材を補充したいんですよ』
七和田今まで君に任せっきりだったのがちょっと心苦しかったから、ぜひとも」

『一人は昔からの知り合いで、一緒に仕事もしたことがある掛井橋かけいはし五十惟いといと言う者です」
七和田掛井橋さん、今度とも宜しくお願い致します」
掛井橋どこまでトオルさんのお手伝いが出来るか分かりませんが、宜しくお願いします」

『それと、戸弩力組の藤浜君もたまにお手伝いをお願いするつもりです』

『あとレイン・リーにこっちは青空美凪、そしてレインの眷属のエアエイプの佐助です』
お互い宜しくお願いします」
佐助ウッキィー」

『もう少しの人数を小学校やこっちの中学から適性のある人材を発掘したいと思ってるんです』
七和田まぁ生きる気力を無くしてる人も多いから、何かしら仕事を作ってあげるのも良い事かも知れないね、その辺もトオル君に一任するよ」

 (こいつはほんまに俺を信用しきってるよなぁ、任せっきりとか、頑張ったな、俺w)

『それと、あとで配給係に自分で言いに行きますが、新しいスタッフ3人と1匹、それと藤浜君の連れて来た子が一人、新しく入隊してます、その分の食料も配給しますので宜しく』

七和田ま~自分はそっち系は全く把握してないので返事に困るけど、その辺もお願いするよ」

『まだ色々と考えてる事も有るけど、事後報告になったらすみません』


七和田しっかし、せっかく休みを取ったのに結局仕事ばかりしてるねw」
幹部達トオルさんっぽいですねw」


七和田達は少しの歓談後、部屋を出て行った。
運営に関する事はトオルに任せているが、彼にもやる事は沢山ある。

今一番の大仕事は、校庭に菜園を作る事だ。
今のままだと2~3か月後には食料が尽きる。
トオルの姉、加奈子の提案で始まったプロジェクトだが、まだ専門知識のある者がほとんど居ない。

七和田直属の数人の部下と共に、時間のある限り学校の図書館で畑や菜園の知識を詰め込んでいる。
これはこれで大変な作業である。
校庭を畑に適したように耕すのはレベル付きが数人居れば問題は無いだろう。





『お昼まで1時間近くあるから、さっきの迷宮に臨んでみようか』

トオルはそう言って準備室の遮光カーテンを閉めて部屋の奥にゲートを開く。

『リーと佐助、掛井橋で探索してきてくれ、美凪は俺に着いて来い』
一同はいっ」
美凪・・・ はい」

『12時前には何があっても出て来てくれ、それとヤバそうなら撤退する事も頭に入れておけよ』



トオルと美凪は旧給食室に向かう。
そこの管理をしている女性に、増えた人間の数を言い配給する部屋も指定した。

給食係トオルさん、小学校に一人避難者が増えたそうです」
『分かった、また聞きに行って来るよ』

トオルは美凪を連れて、旧職員室に向かう。



行き道すがらトオルが美凪に問いかける。

『お前たちのショップに空間倉庫系のスキルはあるのか?』
美凪はいっ50ポイントですが記載があります」

『今何ポイント持ってる?』
「浮遊を取ったので残り、26ポイントです」

『今現在、他に取りたいものはあるのか?』
「強いて言えば、身体強化と精霊術くらいですか」

『精霊術?』
「す、すみません、な、なんとなく精霊を連れてるのが妄想の中で膨らんでしまって・・・」

『あはははは、あの全身鎧にシャドウ系の精霊は似合うかもな』
「影系の精霊だとシャドウとかシェイドでしょうかねぇ♪」

『深紅の精霊とかも似合いそうだな~』
「なろうの小説か何かに居た様な?」


『そっか~』
「空間倉庫が必要ならそこまでポイント貯めますよ?」

『いや、有れば便利だって位だから後回しで良いよ、俺の空間鞄もレベルが上がって少し容量が増えて来たけど、まだまだなんでも入れれる訳じゃないからな』
「取り敢えずポイント貯めますね」

『でも身体強化は早い目に取ってくれた方がいいかもな、まずは強さが優先だから』
『空間倉庫はちょっとアテがあるから昼から行ってみるかな?』

(キングがお出かけされたら、私もダンジョン攻略かな?)

トオルと会話を楽しめたが、ダンジョン探索から外された事はまだ心に残っている。










掛井橋この階はゴブリンとスライムばっかりやな~」
佐助俺ばっかりに倒させてるくせに文句言うな!ちゃんとマッピングしとけよ」

掛井橋文句なんて言ってないってw佐助のレベリングだよん」

掛井橋文句言ってもいいなら、美凪は良いなぁ~ってくらいかな」
リーまぁ彼女は最初の眷属だから仕方ないよ」
佐助大君主と一緒に行動出来るのは羨ましいな」

掛井橋本当なら一番はわたしやったのにぃ~」
佐助うきゃきゃきゃ、イトイはキングにビビりまくってスキル取得が出来なかったんだろw」

掛井橋そ、それを言うなよぉ~もったいない・・・」
リーまぁあんたも、いつでもキングの護衛が出来る位に強くならんとね」

掛井橋が、がんばるよ~」










1階の旧職員室は、今はクランのリーダー七和田なわだ亜生良あきらのグループが使う部屋になっている。
そこには色々なトオルが手掛けた書類や書き物やノートがある。

それを一時、2階のトオル達の事務所に移して複本を作る事が最初の仕事と決めている。

あちこちに散らばっている書類やノートを一カ所に集め、まずは持てるように麻紐で縛る。

『こっちにマスターを置いて事務所に複写の分を置くようにしたいと思ってる』
トオルはそこに居たクランの幹部達に告げて書類を美凪と共に持って出た。





階段を上がり、トオルの事務所に戻って作業をしていると、ダンジョンから3人が戻って来た。

眷属達キングおかえりなさい」
『おぅダンジョンはどうやった?』

入ってすぐの1階層2階層をマッピングしながら攻略してきたと報告される。
今後の事務所付きの連中のレベリングと戦闘訓練に使えるのなら良い物だったなとトオルが言った。

リー何階まであるのかは分からないですが、大理石門の横にある宝石のようなものが階層を示しているんじゃないかと思ってます」
掛井橋入る前は何も無かったと思うのですが、2階まで降りて帰ってきたら点灯してる宝石の様な石が2個あったので多分それが階層かと思います」

『ほぉ~ そこら辺も良く調べといてくれ』



皆で雑談をしているとお昼の配給が回ってきた。




全員でいっただきまーす」

今日のお昼は、干物を焼き戻したものと小麦粉を溶いて焼いただけの、インドのナンのような物と小さいお茶のペットボトルだ。

美凪こんなモノでも1000人分となると大変な量ですね」
掛井橋それが2~3カ月分も貯留出来てるなんて驚きですね」

『六アイ周辺で海魚とか獲れないのかな?』
リーそう言えば、釣りとか投網とかやってる人を見かけませんね」

『それも今後の課題だな』



食後の団欒を楽しんでいると、藤浜とその眷属の大海ヒロミが部屋に戻ってきた。

皆が集まった所で、今後のこの部屋の改装項目と簡単なパース図をメモに書きなぐる。

まずはそれに必要な人材を昼からは集めて来て欲しいとみんなに頼む。

『昼からは各自、自由行動でな』
『んで、眷属化が済んだらダンジョンでレベル上げと探索をやっといてくれるかな?』

リーキングはどうされるのですか?」
『俺は昼からちょいとウエスト地域に行って来るよ』
『その前に、避難民に新しい人が入ったみたいだから、そっちの調整もしないとあかんし』

リーお帰りは何時頃のご予定で?」
『探し物があるから、はっきりとは言えないが、夜の配給の18時までには戻るよ』
『おまえらもそのタイミングを見てここに戻って来てくれ』

一同わかりました」

『まぁそれじゃー少し早いけど出かけて来るよ』

一同いってらっしゃいませ」

トオルはスタスタとドアの方に向かって歩き出した。
そして、ドアの前で振り返り怪訝な顔で一言。

『おいっ何しとんじゃ?ちゃっちゃと尽いてこんかいや、美凪』
掛井橋わ、わたしが行きましょうか~?」

藤浜あほっw美凪は一番眷属なんやから優遇されてもしゃぁないやろ」
掛井橋まぁわかっとうけど、美凪が行かへんのやったらって思って・・・」

 (美凪えっ?えっ?優遇?わたしが?)

佐助美凪は大君主といつも一緒で良いよなぁ」
リー私じゃ不満なんか?佐助よw」
佐助と、とんでもない、主君と共に居る事が一番の幸せで御座ります」

掛井橋言葉がおかしなっとうわ(笑)」
一同(笑)あははははは」

『さっさとせんかい』
トオルはまたスタスタとドアの外に出て行った。


美凪は自分が贔屓ひいきされている事にまったく気付いていなかった。

常にトオルと一緒に居る事が他の眷属からは羨ましくて仕方が無い事なのだが、いつもその状態なので自分が優遇されている事にまったく気づかなかった。

そして他の眷属に役割を振っているのに自分には何も無い事が辛いとまで思っていた。
それが自分の大きな勘違いだったと理解すると、急に心が晴れやかになっていく。


美凪いってきま~す♪」


爽やかな笑顔で仲間に挨拶をし、今にもスキップでもしそうな勢いで美凪は部屋から出て行った。


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