愛涙 うれい

Émile

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第一章

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 僕の血筋は容姿に恵まれいる人間が多く、父もそうだった。
けれど父はそんな事を気にもせず、人に思いやりがある人だ。
母は真面目でいつも家族を案じている優しい母だ。
僕が成長するにつれ、父は仕事でちゃんと稼いで子供の将来に備えたいという思いから仕事、仕事の日々だった。
帰るのはいつも夜遅くあまり遊んでもらった記憶は僕にはなかった。けど、どんなに遅くなっても必ず俺の寝顔を毎日見に来ていた。父は我が子の将来を夢見て幸せを願っていた。けど、不幸は突然家族に忍び寄っていた。
父と同じ会社に勤めている後輩にあたる女性・レイコにストーカー行為の被害に受けはじめていた。レイコは父の私物を盗んだり、我が家の近くにも出没していた。けど父は同僚や会社に相談せず話し合いで解決出来ると信じていた。もし同僚や会社に相談すれば、対処してもらえるだろう…でも彼女(レイコ)どうなる⁉︎会社に居ずらい環境になり辞めざるえない状況になってしまうのでは…彼女(レイコ)は仕事の出来る人だと理解していた父はそんな事で辞めてしまっては勿体ないと思い、彼女が諦めてくれる事を信じていた。
ある日、会社でレイコは父に胸の内を全て話した。
レイコ『私は◯◯さんを心から愛しています。この気持ちはどうあっても変わりません。』
父『私には愛する家族がいる、君の気持ちに応える事は出来ない』
父は苦虫を噛み潰したような表情で彼女に言い放つ。
レイコ『わかっています。でも私は◯◯さんへの思いはこの先も変わらないです。』
そう言うとすっきりした様な表情を見せ父の前から遠ざかった。父はただどうしたらいいのか分からなくなっていた。やはり会社に…その思いを抱えつつ仕事に戻ったがあまり手につかない。
翌日は休みだったので、そんな思いを忘れるべく家族水入らずで買い物に出かけた。母、僕、父は3人で手を繋ぎとても幸せなひとときだ。
父『夕飯何食べたい?』
僕『魚!骨自分で取れるんだよ!』
父『本当か⁉︎すごいな』
僕は笑顔を父に向けた。母はそんな2人を笑顔で見ていた。
[ドンッ]…父の横を何かがぶつかった。父は僕に顔を向けていたため、よそみして誰かにぶつかったと思い。
父『あ、すいません』
そう言った、けど何かおかしい。腹部に痛みがある…隣に居る人影は一向にはなれない。ふと、痛みの場所に目をやる父の腹部には刃物が刺さっている。
そして一気に引き抜かれた、何だ…と父が横に目を向ける。レイコさん…⁉︎レイコ『私のものにならないなら、お願い…一緒に死んで…』
父は膝を床につくきそのまま倒れた、母は叫びながら父に近づき、父を抱き寄せた。父の生暖かい血液が母の衣服、手を染めていく。母は泣きながら父に叫び続けていた…
僕は父の笑顔が苦悶の表情になり、倒れる光景をすぐ隣で唖然とみているしかなかった。ふと父を刺した女は⁉︎
そう思い、目を女に向けた…女・レイコは幸せそうな笑みを倒れた父に向けていた。そしてレイコは僕を見た。そのマスクの様な冷たく張りついた笑みで俺をみつめる。怖い…助けて…そう思うも父は倒れ、母は泣き叫んでいる。そして、レイコは父の血液がついた刃物を自分の首にあてると一気に横にひいた。レイコの首から粉雪の様に鮮血が溢れ、噴水の様に溢れ出す。そして父をみつめながら女は地面に倒れた。倒れたレイコの顔はとても幸せとでも言う様な表情であった。
救急車が来て父は担架に乗せられ、母と僕は一緒に乗車した。父は苦痛の表情を浮かべてはいるが、意識はない様にみえる。母はただ泣きながら父を案じていた。僕は父の光景とレイコの光景がやきついて、頭の中でぐるぐる再生されていた…
しばらくして病院に着くとそのまま手術室に運ばれ、母と僕は手術室前の椅子で待っているしかなかった。
母は譫言の様に
『どうしてこんな事に…どうして…
あの人を助けてください…お願いします…』そう呟いていた。
幼い僕にはかける言葉も見つからなかった。病院の匂いと母から匂う血の匂いで辺りは独特な匂いをしていた。
手術中の点灯が消える、入ってまだ15分位しか経過してないのに…母は出てくる医者に駆け寄る、医者が何かをぽつりと言った瞬間…母はその場に座り込んで、泣き叫んだ。医者は母を擁るとベンチに座らせた。この地獄の様で最悪な状況は母と僕をどん底に突き落とすには完璧だった。
しばらくすると、看護師に案内されふらふらになりながら歩く母と母の服をぎゅっと握りながら歩く僕。看護師は冷たい、吐息すら白くなりそうなその場所に案内した。
ドアの上には霊安室…そう書かれている。ドアを開く看護師の跡をただ恐る恐る入る…そこには青白い父が横たわる。死因は大量の出血による出血性ショック死…母は父の胸元で泣き崩れながら叫んでいた。僕は理解出来なかった。死ってなに…パパどうなってるの…そんな風にしか理解出来なかった。しばらくしてドアが開く、2人組
の男が入ってきて…バッジをみせる警察だ。状況の確認と報告に来たのだった。その時にはじめて父がストーカー被害にある事を聞いた。母ただ話を聞いていた。目から溢れ出す涙を流し、唇を噛み締めながら…
そしてレイコの死亡も報告された。
レイコは父を道連れに死を選んだ…

葬儀、焼き場、納骨がおわりまた日常生活がもどる…けどそこには父のすがはない。どんな夜遅く待っても父は帰って来ることはなく、僕の手を握ってくれることはもう2度とないのだ。
幼稚園での生活もカウンセリングによる治療も僕には無意味だった。
幸せだった日々はも戻ってこないのだから…この先のことなんて…
まだ小学生にもならない僕にはとてつもない試練だった。

続く
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