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3章:それぞれのテイマーの道
92. お代わり無限の大盤振る舞い
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最初の取り巻き蟻を倒してからもバグモンスターとの早食い勝負は続き、そして結末を迎えた。その結果……バグモンスターは女王蟻を含めた5匹、私は3匹。
「まぁ、あの巨大なバグモンスター相手によく頑張ったんじゃないかな?」
「出来れば4:4の同数にしたかったですね。ギンジさんが1人でバグモンスターの捕食妨害してくれてたのに……」
「つまりギンジの阿呆の所為という訳じゃな。彼奴がもう少し頑張って足止めをしておれば同数まで行けたやもしれぬ」
「勘弁してくれ。ヘイトを受けない範疇で最大限やったんだぞ俺は」
そんな軽口で場を和ませつつも、戦況が次のステージへと移行していく様を見守っていた。広範囲に複数展開されていく子蟻召喚の魔法陣だ。
「よし、じゃあここで私のとっておきを見せちゃおうかな! モンスタ~ま~ね~き~ね~こ~」
ミシャさんが取り出したアイテムは、私より少し大きいぐらいのサイズをした招き猫だった。
「モンスター招き猫ってことは、それを使うとモンスターが集まって来るんですか?」
「そうそう。この招き猫を設置してから壊されるまでの間、周囲のモンスターのヘイトを一気に掻っ攫うのさ! 相場7Mの課金アイテムだから壊されないようにみんなで守ってね♪」
――私が立案した作戦に7Mのアイテムを使われるのは重圧すぎる……。
これから始まる戦いに気合を入れていた所だったが、ミシャさんのとっておきが強すぎて少し気後れしてしまう。けれど、今更止められないので、「絶対に壊させないぞ!」と別の方向で気合を入れなおした。
そう、今からやる作戦とは『大量の子蟻を倒し続け、ステータスに最大限の強化バフを付与する』という物。強化されたバグモンスターを倒しきれる程のステータスを子蟻たちを利用して手に入れるのだ。
「そういう事ならわっちもとっておきを使うかの」
そう言うとロコさんは、先端にお面の付いた杖を取り出した。
「こいつは焔魔天の杖と言うての。任意のもののHPを繋げて共有する事とHPに関わる魔法の効果を上昇させることが出来る。モンスター招き猫はHPを持つ特殊アイテム故に、招き猫を含めたわっちらのHPを全て繋げる事が出来るのじゃ」
HPを繋げることで、誰かがダメージを負うとそのダメージが私達全体へのダメージとして換算させる。勿論、HP回復も全体換算することになる。
つまり、私が持つ茨の短剣を使った回復やロコさんの回復魔法で安定的にHP回復をすることが出来れば、モンスター招き猫も含めた全員が死ぬことは無いということだ。……逆に死ぬときは全員同時に死ぬことになる。
「じゃが、こいつの効果は永遠ではない。こいつは死を糧に効果を発揮するでな、同じパーティー内の誰かがモンスターを狩り続けなければ効果が切れる。そしてその許容時間は1分に最低1体じゃ。まぁ、白亜も居るし早々効果が切れることはあるまい」
「丁度いいな。俺は羅刹天を使ってバグモンスターの足止めをする。羅刹天のデメリットは常時HP減少だからな、俺が死なないように頼むぞ。……バグモンスター対策のアイテムもここで使う。1時間はきっちり耐えきってやる」
そして遂に周囲の魔法陣が完成し、大量の蟻が次々の召喚されてきた……その身のテクスチャをバグらせながら。
「あちゃ~、子蟻もバグモンスターだったかぁ~。これじゃあ、ロコと私も対策アイテム使うしかないね。それに子蟻も含めて倒せるのはナツちゃんだけになっちゃったよ」
「ナツよ、お主とレキは対策アイテムを使わず1時間この子蟻たちと戦い切るのじゃ。その間わっちらがお主らを守る」
「……頑張ります!!」
そして作戦が開始された。
私はまずパルにだけ対策アイテムを使い、レキには私へのプロテクションを切らさないように頼んだ。更にロコさんからも以前使ったインカ―ネイションを含むバフ魔法を掛けて貰う。これで影を使った回避が出来るようになるので、対策アイテムを使わなくてもある程度安全性は上がる。
「それじゃあ、始めるかの! 焔魔天!!」
「おっしゃ、壊れないサンドバッグで遊ぶとするか! 羅刹天!!」
ギンジさんは以前と同じようにインベントリから身の丈程の刀を取り出し、その効果により姿を大きく変異させる。
体からは赤いオーラがゆらゆらと揺れて、その背後からは真っ赤な炎の輪っかの様な物が出現した。そして、身を焼く程の殺気がギンジさんから放たれる。
ロコさんの体からは濃い紫色のオーラが立ち昇り、その背後から同じく濃い紫色の炎が輪っかの形で出現した。殺気は放たれていないが、その姿を見つめているとズンと重い恐怖がお腹の底から湧き上がるような感覚になる。
――私はまだ使えない。私が使うのは本体との決戦の時だ。それまでに出来るだけ力を溜めないと。
「ラピッドラッシュ!!」
そしてここから1時間耐久1人早食い大会が始まる。
……
…………
………………
「パルゥ!」
「パル、ナイス!!」
背後から迫っていた子蟻をパルの魔法で足止めし、その間に目の前にいる2匹の子蟻を倒しきる。レキもロコさん達に守られながら私のサポートに徹してくれている。
ロコさんは回復とバフ付与に徹し、白亜に指示を出して子蟻を適度に蹴散らしてくれている。これで私に向かう敵の量を調整してくれているのだ。
ミシャさんは罠による足止めと歌唱スキルによる物理防御耐性低下のデバフを振りまいてくれている。
そしてギンジさんは……完全な鬼と化している。たった1人で強化されたバグモンスターを圧倒しているのだ。
敵の攻撃は刀で弾いたり逸らしたりしながらまともに一撃を受けることはない。そして凄まじい速度で相手の死角に入り、強烈な一撃を叩き込む。それはダメージこそ入っていないが強烈なノックバック効果は健在で、攻撃を受けたバグモンスターはその巨体を揺らして倒れ込んでしまう。
もし、ギンジさんにバグモンスターへの有効な攻撃手段があれば、1人でも倒せてしまうのだろう。師弟間の戦力差が半端じゃない。
そんな皆の奮闘に助けられながら、私はひたすらに子蟻を倒しながら茨の短剣を強化しいく。その機動力と共に。
私が今使っているラピッドラッシュはコンボ数に比例して使用者の機動力を上昇補正してくれる技能で、次から次へと現れる子蟻を相手にコンボ数を稼ぎ、どんどん私の機動力を上げているのだ。
このコンボ判定の許容時間は3秒から始まり、コンボ数が増えていくにつれて最終的に0.3秒まで短縮される仕様となっている。そして現状すでにその0.3秒ラインだ。
「お主、今とんでもない速度になっておるぞ? そんな速度で動く者を今まで見たことが無いのじゃが、お主自身は見えておるのかの?」
「正直、もう既に回避スキルの反応速度補正を超えるぐらいの速度になってますね! さっきからほぼ感で動きながら目の前の黒い物体を切り続けてます!!」
実は前にラピッドラッシュの上昇補正限界はどこまでなのかスライムダンジョンで検証したことがある。その時はスライムの湧く速度を倒す速度が超えたことによって限界を調べることが出来なかったのだが、数値的な上昇限界は無いのかもしれない。けれど機動力が上がり続ければ、いづれその速度に対応出来なくなって限界がくることになるのだろう。
「ナツ、対策アイテムの効果時間が10分を切った! ラストスパートだ。出し切れ!!」
「はい!!」
上がり続ける機動力を気合で乗りこなし、ラストスパートへと踏み切った。
「まぁ、あの巨大なバグモンスター相手によく頑張ったんじゃないかな?」
「出来れば4:4の同数にしたかったですね。ギンジさんが1人でバグモンスターの捕食妨害してくれてたのに……」
「つまりギンジの阿呆の所為という訳じゃな。彼奴がもう少し頑張って足止めをしておれば同数まで行けたやもしれぬ」
「勘弁してくれ。ヘイトを受けない範疇で最大限やったんだぞ俺は」
そんな軽口で場を和ませつつも、戦況が次のステージへと移行していく様を見守っていた。広範囲に複数展開されていく子蟻召喚の魔法陣だ。
「よし、じゃあここで私のとっておきを見せちゃおうかな! モンスタ~ま~ね~き~ね~こ~」
ミシャさんが取り出したアイテムは、私より少し大きいぐらいのサイズをした招き猫だった。
「モンスター招き猫ってことは、それを使うとモンスターが集まって来るんですか?」
「そうそう。この招き猫を設置してから壊されるまでの間、周囲のモンスターのヘイトを一気に掻っ攫うのさ! 相場7Mの課金アイテムだから壊されないようにみんなで守ってね♪」
――私が立案した作戦に7Mのアイテムを使われるのは重圧すぎる……。
これから始まる戦いに気合を入れていた所だったが、ミシャさんのとっておきが強すぎて少し気後れしてしまう。けれど、今更止められないので、「絶対に壊させないぞ!」と別の方向で気合を入れなおした。
そう、今からやる作戦とは『大量の子蟻を倒し続け、ステータスに最大限の強化バフを付与する』という物。強化されたバグモンスターを倒しきれる程のステータスを子蟻たちを利用して手に入れるのだ。
「そういう事ならわっちもとっておきを使うかの」
そう言うとロコさんは、先端にお面の付いた杖を取り出した。
「こいつは焔魔天の杖と言うての。任意のもののHPを繋げて共有する事とHPに関わる魔法の効果を上昇させることが出来る。モンスター招き猫はHPを持つ特殊アイテム故に、招き猫を含めたわっちらのHPを全て繋げる事が出来るのじゃ」
HPを繋げることで、誰かがダメージを負うとそのダメージが私達全体へのダメージとして換算させる。勿論、HP回復も全体換算することになる。
つまり、私が持つ茨の短剣を使った回復やロコさんの回復魔法で安定的にHP回復をすることが出来れば、モンスター招き猫も含めた全員が死ぬことは無いということだ。……逆に死ぬときは全員同時に死ぬことになる。
「じゃが、こいつの効果は永遠ではない。こいつは死を糧に効果を発揮するでな、同じパーティー内の誰かがモンスターを狩り続けなければ効果が切れる。そしてその許容時間は1分に最低1体じゃ。まぁ、白亜も居るし早々効果が切れることはあるまい」
「丁度いいな。俺は羅刹天を使ってバグモンスターの足止めをする。羅刹天のデメリットは常時HP減少だからな、俺が死なないように頼むぞ。……バグモンスター対策のアイテムもここで使う。1時間はきっちり耐えきってやる」
そして遂に周囲の魔法陣が完成し、大量の蟻が次々の召喚されてきた……その身のテクスチャをバグらせながら。
「あちゃ~、子蟻もバグモンスターだったかぁ~。これじゃあ、ロコと私も対策アイテム使うしかないね。それに子蟻も含めて倒せるのはナツちゃんだけになっちゃったよ」
「ナツよ、お主とレキは対策アイテムを使わず1時間この子蟻たちと戦い切るのじゃ。その間わっちらがお主らを守る」
「……頑張ります!!」
そして作戦が開始された。
私はまずパルにだけ対策アイテムを使い、レキには私へのプロテクションを切らさないように頼んだ。更にロコさんからも以前使ったインカ―ネイションを含むバフ魔法を掛けて貰う。これで影を使った回避が出来るようになるので、対策アイテムを使わなくてもある程度安全性は上がる。
「それじゃあ、始めるかの! 焔魔天!!」
「おっしゃ、壊れないサンドバッグで遊ぶとするか! 羅刹天!!」
ギンジさんは以前と同じようにインベントリから身の丈程の刀を取り出し、その効果により姿を大きく変異させる。
体からは赤いオーラがゆらゆらと揺れて、その背後からは真っ赤な炎の輪っかの様な物が出現した。そして、身を焼く程の殺気がギンジさんから放たれる。
ロコさんの体からは濃い紫色のオーラが立ち昇り、その背後から同じく濃い紫色の炎が輪っかの形で出現した。殺気は放たれていないが、その姿を見つめているとズンと重い恐怖がお腹の底から湧き上がるような感覚になる。
――私はまだ使えない。私が使うのは本体との決戦の時だ。それまでに出来るだけ力を溜めないと。
「ラピッドラッシュ!!」
そしてここから1時間耐久1人早食い大会が始まる。
……
…………
………………
「パルゥ!」
「パル、ナイス!!」
背後から迫っていた子蟻をパルの魔法で足止めし、その間に目の前にいる2匹の子蟻を倒しきる。レキもロコさん達に守られながら私のサポートに徹してくれている。
ロコさんは回復とバフ付与に徹し、白亜に指示を出して子蟻を適度に蹴散らしてくれている。これで私に向かう敵の量を調整してくれているのだ。
ミシャさんは罠による足止めと歌唱スキルによる物理防御耐性低下のデバフを振りまいてくれている。
そしてギンジさんは……完全な鬼と化している。たった1人で強化されたバグモンスターを圧倒しているのだ。
敵の攻撃は刀で弾いたり逸らしたりしながらまともに一撃を受けることはない。そして凄まじい速度で相手の死角に入り、強烈な一撃を叩き込む。それはダメージこそ入っていないが強烈なノックバック効果は健在で、攻撃を受けたバグモンスターはその巨体を揺らして倒れ込んでしまう。
もし、ギンジさんにバグモンスターへの有効な攻撃手段があれば、1人でも倒せてしまうのだろう。師弟間の戦力差が半端じゃない。
そんな皆の奮闘に助けられながら、私はひたすらに子蟻を倒しながら茨の短剣を強化しいく。その機動力と共に。
私が今使っているラピッドラッシュはコンボ数に比例して使用者の機動力を上昇補正してくれる技能で、次から次へと現れる子蟻を相手にコンボ数を稼ぎ、どんどん私の機動力を上げているのだ。
このコンボ判定の許容時間は3秒から始まり、コンボ数が増えていくにつれて最終的に0.3秒まで短縮される仕様となっている。そして現状すでにその0.3秒ラインだ。
「お主、今とんでもない速度になっておるぞ? そんな速度で動く者を今まで見たことが無いのじゃが、お主自身は見えておるのかの?」
「正直、もう既に回避スキルの反応速度補正を超えるぐらいの速度になってますね! さっきからほぼ感で動きながら目の前の黒い物体を切り続けてます!!」
実は前にラピッドラッシュの上昇補正限界はどこまでなのかスライムダンジョンで検証したことがある。その時はスライムの湧く速度を倒す速度が超えたことによって限界を調べることが出来なかったのだが、数値的な上昇限界は無いのかもしれない。けれど機動力が上がり続ければ、いづれその速度に対応出来なくなって限界がくることになるのだろう。
「ナツ、対策アイテムの効果時間が10分を切った! ラストスパートだ。出し切れ!!」
「はい!!」
上がり続ける機動力を気合で乗りこなし、ラストスパートへと踏み切った。
応援ありがとうございます!
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