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第1章 能力者たちの出会い
第7話 クリスマス
しおりを挟む「クリパしよう!」
文化祭が終わり、期末テストも終えた12/20。
湊のこの一言から始まった。
明後日から冬休み、世間はクリスマスシーズンだ。
「クリパ?」
「クリスマスパーティーのことですよ、響樹せんぱい(笑)」
雛はフッと鼻で笑うように言う。
「んなことはわかってるって、オレが言いたいのは何で突然そんなこと言い出したのかってことだ」
「あと少しで今年も終わるだろ?俺たち出会って日は浅いけど、今年最後に楽しい思い出作りたいなと思って、それに…」
突然パーティしようと言う湊に響樹も雛も乗り気ではなかったが…
「はじめてなんだ、力のこと隠さずいられる友達」
湊の切実な思いに2人はノーとは言えなかった。
「僕、そもそもパーティとかしたことないんですよね、みんなとそりが合わなくて」
「お前のひん曲がった性格じゃあ無理だな」
「転校早々クラスから浮いてて孤立してたのは誰だったかな」
この直後、一悶着あり…
「けど、どこでやるんだ?」
「お店だともう時期的に予約で一杯だし、かと言って学校ってわけにも…雛、何か良い案ある?」
湊は雛に視線を向けた。
「僕の家でやりませんか?」
「「え?」」
雛の口から思ってもみない言葉が出てきた。
「いや、でも突然…家の人に迷惑でしょ?」
「僕の家父親がいなくて母親と2人で暮らしてるんです、だから遠慮しなくて大丈夫ですよ」
雛はこう言うが出会って日が浅いにもかかわらず自宅に招き入れるのは申し訳ない、しかし変に遠慮すると雛の好意を無駄にしてしまう。
うーんと仁王立ちしながら悩んでいた湊と響樹に雛は言葉を続けた。
「母親には湊先輩と響樹先輩のこと話していますし、会いたがっていたんです」
雛がニコッと微笑んだ。
湊と響樹は顔を見合わせ、そして同意したように雛の好意に甘えることにした。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
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「いらっしゃい、湊くん響樹くん。雛がいつもお世話になっています」
当日、雛の家に辿り着いた響樹と湊は雛の母親に出迎えられた。
色白の肌に同じ金髪に赤い瞳をした母親は雛同様 容姿端麗のまさに美女そのものだった。
「あの、これ良かったらどうぞ」
湊は来る途中、響樹と共に立ち寄った洋菓子屋のお菓子を渡す。
「まぁ、気を遣ってくれてありがとう」
雛の母親の人柄で緊張が解れ、ホッとした2人はそのままリビングに案内された。
リビングに入ると一番目についた天井につきそうな大きなツリーに二人は釘付けだった。
「「でかい」」
その傍らで雛は料理やケーキを運んで準備を進めていた。
「湊せんぱい、響樹せんぱい、来てくれてありがとうございます!あ、コートとか預かります!」
二人はコートを雛に渡し、「どうぞ座っていてください」とテーブル椅子に誘導され、言われるままに座った。
「あ!飲み物がない!」
と、雛が冷蔵庫の中身を確認して、飲み物がないことに気づく。
「僕ちょっと買ってくる!すぐ戻るんで、待ってて下さい」
雛はキッチンから一旦離脱。
エプロンから上着に変え、財布を持ってバタバタと行ってしまった。
雛の母親は「ごめんなさいね、少し待ってね」と言いながら眉をハの字にさせていた。
響樹と湊は頷き、雛が戻るのを待つことにした。
そうしていると、雛の母親が2人に話しかけてきた。
「雛…学校でどうですか?」
「えっと…俺たち最近知り合ったばかりであまり深くは知らないですが、とても良い子です。ずっと入院されてたんですよね?」
「元々体が弱かったからね…」
そう言ってその場がシュン…と静まり返り、少し気まづい空気が流れたが母親がすぐ口を開いた。
「それに…普通の人とは、なかなか打ち解けれないみたいだし」
響樹と湊は目を丸くさせ、言葉に詰まった。
「ごめんなさい、私 力のこと知ってるのよ。雛から貴方達のことも聞いてるわ。最初はよくある子供の妄想かと思ったけど、成長すればするほど力への理解を求めてくるようになってきて、父親はそんな雛を不信に思ってある時こう言ったの、『あれは俺の子供じゃない』って…」
「そんなことが…」
「ほんと、私もダメな母親よね。ああいう容姿だし、体も元々弱かったから友達もあまりいなかったみたいで…力のある者にとって、力のない者に心の同意を求めるのは容易いことではないものね」
「あの」
今まで口を挟まなかった響樹が突然会話を遮るように入ってきた。
「あいつ、雛は気が強くて先輩にも嫌味を言う生意気なやつです」
「ちょ、響樹くん?!」
湊が止めようとするも響樹の耳には入っていなかった。
雛の母親は響樹から目を背けず、ジッと見つめていた。
「でも、人一倍優しいと思います。まだ知り合って間もないですけど、そう感じました、あいつの未来は大丈夫です」
響樹は心から雛の母親に語りかけるように今までにない微笑みを浮かべた。
「雛に何かあった時は俺たちが守ります、だから安心して下さい」
気づけば雛の母親は泣いていた。
そして、「ありがとう」と何度もお礼を言っていた。
響樹と湊はすすり泣く母親を気遣うように黙って見ていた。
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「お母さん、僕そこまで送ってくるね」
あれから雛が戻り、みんなで料理やケーキを食べてプレゼントを渡し合ったり、有意義な時間を過ごした。
楽しい時間が過ぎ去るのはあっという間で、2人は時計が19時を知らせるのを確認すると徐々に帰り支度をした。
「気をつけてね」
「どうも、ご馳走さまでした」
「本当にありがとうございました、では失礼します」
「響樹くん、湊くん」
ドアを開けて出るところで呼び止められた2人は振り返った。
「今日は来てくれて本当にありがとう。これからも雛のことよろしくね」
雛の母親は深々と頭を下げた。
「雛のお母さん、すごく綺麗な人だったね」
「えへへ、自慢のお母さんです」
「雛…母親、大事にしろよ」
「響樹せんぱいに言われるまでもないですよー」
湊はちらっと横目で響樹の顔色を伺った。
あの日と同じ顔をしていた響樹、湊は力を使おうとしたがやめた。
こちらから探るのではなく、向こうから話してくれるのを待とうと自分に言い聞かせたのである。
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