「信じていないけど、願ってる」

leviathan

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第一章:仏教の起源と、“無我”という思想

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――神がいない宗教、という矛盾のような真理

仏教って、宗教なんだよな?
なのに、神様がいない。
これって、けっこう不思議な話じゃないか?

俺たち日本人の生活には、仏教がそこそこ入り込んでる。
お盆や法事、位牌や墓。

「南無阿弥陀仏」と唱えて、死者に手を合わせる。
でも、そこに“信仰”ってあるのか?と聞かれると、自信を持って頷けない。

そもそも仏教って何だ?
神様に祈るものじゃない。願いを叶えてくれる存在もいない。

それどころか、「自分という存在すら幻想だ」と説く。
これはもう、宗教というより“哲学”の域だと思う。

──釈迦(ゴータマ・シッダールタ)。
紀元前5世紀、インドの王族に生まれたこの男が、仏教の始まりだ。
贅沢な暮らしの中で彼が見たのは、老い、病、死、そして苦しむ人々。

「なぜ人は苦しむのか?」
その問いに取り憑かれ、すべてを捨てて出家した。

森の中で瞑想を続け、悟った彼の答えは、じつに静かで、淡々としていた。
人生は「苦」である。
それは執着から生まれる。
執着を捨てれば、苦しみも消える。
──そして、そもそも「自分」なんてものは、固定された実体じゃない。

これを仏教では「無我」と呼ぶ。

俺はこの考えに、なんとも言えない魅力を感じる。

「自分なんて、もともとない」

言葉にすれば冷たく響くけど、むしろ優しい気がする。
他人と比べて落ち込む必要もない。過去の過ちに囚われる必要もない。
執着を手放して、ただ生きる。
そういう生き方に、どこか救いのようなものを感じる。

ただ、この仏教の原点は、インドから中国を経て、日本に来る頃には大きく変容していた。

インドの仏教は、やがて「自分が悟りを開けばいい」という出家修行者のための教えから、
「みんなで救われよう」という“菩薩思想”を持つ大乗仏教へと広がっていった。

日本に伝わってきたのはこの“大乗仏教”だった。

そこではもう、「無我」だけじゃ足りない。
阿弥陀如来や観音菩薩という“救いの存在”が出てくる。
お経を唱えれば救われる。功徳を積めば来世が良くなる。
──それって、ほぼ“神”じゃないか?

つまり、日本においての仏教は、「哲学」から「信仰」へと、
徐々に、ゆっくりと、“寄り添うもの”に変化していったんだと思う。

俺たちが仏壇に手を合わせるとき、
釈迦の思想を思い出してるわけじゃない。
「亡くなった人が安らかでありますように」
そんな、ごくごく素朴な祈りを捧げてる。

それでいいんだろうと思う。
“宗教”って、きっとそういうものだ。
教義や形式ではなくて、
人の生と死にそっと寄り添うもの。

ただ一つだけ思う。
釈迦が説いた“無我”っていうのは、
自分を見失うためじゃなく、
誰かの苦しみに気付くための思想だったんじゃないか。

俺たちは今、“無我”じゃなく、“無関心”になってないか。
苦しんでる誰かに、気付ける自分でいたいと、たまには思ったりもするんだ。
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