「信じていないけど、願ってる」

leviathan

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第三章:語られないもの:宗教・政治・金

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――なぜ僕らは、黙っているのか

「その話、やめとこうか」
何度、この言葉で会話が終わっただろう。

宗教の話。
政治の話。
お金の話。

どれも、身近なようでいて、口に出すのはタブー。
日本では、これらを真面目に話そうとすると、空気が変わる。
急に誰かが黙り込み、冗談にすり替えられ、話題が逸れていく。

なぜなんだろう。
なぜ、そんなに“語ること”を恐れてしまうんだろう。

宗教の章でも書いたけど、
俺たち日本人は、宗教に対して「熱心に語る=危ない人」というイメージを持っている。
カルトの問題や宗教と政治の癒着が、その背景にあるのは間違いない。

でも、宗教だけじゃない。
政治についてもそうだ。
誰に投票したのか。何を考えているのか。
選挙の時でさえ、その話をすることは少ない。
たとえ家族や親しい友人でも、どこか“触れてはいけない”もののように扱う。

お金についても同じだ。
年収は?資産は?
それを聞かれると、途端に緊張する。
話す方も、聞く方も、どこか後ろめたさがある。

不思議だよな。
宗教・政治・金。
どれも本来は、“自分がどう生きるか”に直結する大事な話題のはずなのに。

でも日本では、それらを語ることが、
「面倒くさい人」「怖い人」「ずうずうしい人」になる。

きっとそこには、“場の空気を壊さないこと”が最優先される文化がある。

俺たちは、小さいころから教えられてきた。
「和を乱すな」「空気を読め」「思ってても言うな」
そうやって育った。

だから、思ってることがあっても、
それを言葉にする前に、
「これ、言ったらどう思われるかな」って、反射的に考えてしまう。

もちろん、それはある種の“優しさ”でもある。
他人を傷つけないようにするための、配慮だ。

でもその裏で、自分の考えをしまい込んでいく。
語られなかった思考は、やがて形を失って、
「何を信じているのか分からない」状態になる。

それって、怖いことじゃないか?

語られなかった信仰。
語られなかった意見。
語られなかった夢や不満や本音。

全部、そこに「ある」のに、「無い」ことにされていく。

俺はたまに考える。
もしかしたら日本人の“無宗教”って、
“語れなかった信仰の成れの果て”なんじゃないかと。

政治への無関心も、
“語らなかった意見”の積み重ねじゃないかと。

金に対する遠慮も、
“話すと嫌われるかも”という恐れの裏返しじゃないかと。

語ることは、恐ろしい。
でも、語らないことは、もっと恐ろしい。

だからこうして、俺は書いている。
誰に見せるでもなく、誰と争うでもなく、
ただ、「自分はこう思っていたんだ」と言葉にするために。

たとえ答えが出なくても、
語り続けることでしか、
“自分の輪郭”は見えてこないんだと思う。
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