「ビットコイン無双」前世で一山当てたのに、使う前に転生しちまった俺は異世界で金を使いまくる

leviathan

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第一章:祠の賢者と魂の契約

畑を耕すモノ

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霧が揺れた。

咆哮の余韻が森を満たし、空気そのものが重くなる。

アメリアは手を掲げ、静かに隊の動きを制した。
その先に、いた。

――オルデンベア。

森を割って現れたその巨体は、立ち上がった瞬間に木々の頭上を越えた。
およそ7メートルの体長。剥き出しの筋肉に覆われた漆黒の毛皮、
凶器のような爪、牙は大蛇の牙にも匹敵する大きさで、
その目は、まるで“人”を識別する知性を帯びていた。



「……間違いない、魔獣化してる…
オルデンベア――災厄の獣」

アメリアはすぐに命令を飛ばした。

「隊列展開、第二陣形!
左右に分かれて視界を取れ! 後衛は魔術支援!盾にバフを!」

「おおおっ……!」

部下の一人が叫んだ瞬間、オルデンベアが動いた。

――速い。

その巨体からは想像できない加速で、地面をえぐり、
一気に突進してきた。

「盾、受けろッ!!」

前衛の盾兵が両腕で構えた大盾ごと吹き飛ばされ、
木に叩きつけられるようにして地面を転がる。

「グッ……がっ……!」

即死は免れたが、体が動かない。

「攻撃魔法、急げ!」

アメリアは斜めに跳び、敵の横腹へ一閃。
だが、斬撃は毛皮を裂いたのみで、致命傷にはならない。

「く……硬い……! 通らない!」

後衛の魔術士が詠唱を完了。

「《炎槍・イグニス》!」

火の槍が放たれ、オルデンベアの側頭部に炸裂する。

だが――

爆煙が晴れると、そいつは、燃えた毛皮を振り払うように頭を振っただけだった。

「効いて……ない……!」

オルデンベアの牙が光る。

そのまま反転し、魔術士に向かって跳躍――

「――させるか!」

アメリアが間に入り、剣で軌道を逸らす。
肉と金属が衝突する音。空気が割れる。

(馬鹿げた重さと早さだ……! しかも魔術士を狙ったな…知性がある…)

アメリアは冷静に動きを見極めながら、叫んだ。

「全員、連携を崩すな!一撃では倒せない。隙を作れ! 殺し切るぞ!!」

人と獣。
理性と本能。
刃と牙が交差する、死の舞踏が幕を開けた。





一方その頃、祠の中では…

「ふぅ……少し落ち着いたな」
ジョーは焚き火の近くに腰を下ろし、傷ついたハンター・ジノの額の汗を拭った。バールはいつの間にか焚き火の上に座るように浮かび、じっとこちらを見ている。

「お主、いい加減、自分のことを把握しておいた方がいいじゃろ」

「……自分のこと?」

「スキルとステータスじゃよ。そもそもその身、ただの転生者ではないんじゃろう。少しは期待しておる」

「スキル、ねぇ……」

ジョーは目を閉じるようにして、意識を内へ沈める――
すると、視界に情報が浮かび上がった。

《年齢:30歳/レベル:1》
《成長限界:?》
《職業:畑を耕すモノ》
《体力:44/46/魔力:0/0/精神:51/62》
《技能:BTC自動変換/ウォレット生成/ビット乗率成長補正/P2P契約書/勘定/デジタル記憶保持/交渉術(詐欺耐性+30%)》
《適性:財政管理A/商人B+/経営戦略A》
《魔法適性:契約S/攻撃F/回復・支援F/精神F》
《現在状態:健康/士気:中》

---

• BTC自動変換(パッシブ)
 保有するBTCを“神貨”としてこの世界で使用可能
 ※通用範囲は一部国家および商人ギルドに限る

• ウォレット生成(ユニーク)
 デジタル資産を“魔法的ウォレット”として所持・管理・送金可能

• 成長補正(ビット乗率)
 保有BTCに応じて、経験値取得・交渉成功率などの各種効率が向上

• P2P契約書(アクティブ)
 他者との雇用・取引契約を魔法的拘束力をもって生成可能

• 勘定(カンジョウ)
 対象の成長性・損得勘定・適性・配置最適化などを“視覚化”する力

• デジタル記憶保持
 前世の知識(金融・IT・法律・契約論など)を完全保持

• 交渉術(詐欺耐性+30%)
 商取引・交渉・契約時に有利な判断と防御反応を得る

---

「……これ、スキルというか、もう職業詐欺師みたいなんだけど?」

「詐欺師ではなく商人じゃな、悪徳商人には天敵じゃが。ふぉっふぉっふぉ」

「ていうか、俺、攻撃魔法は?」

「期待するだけムダじゃ。マナも小さすぎて火球のひとつも出んじゃろ。見てみい、“契約魔法以外F評価”となっておる」

「うわー……腕力もダメ、魔法もダメ、どうしろと……」

「そのかわり、その“契約”の適性は正真正銘、世界級じゃよ。そもそも、魔法というのはな、形じゃなくて“結びつき”の力。お主は“縁”を束ねる魔法の使い手なのじゃ」

「……よくわかんねぇけど、要は向いてる方向が違うってこと…か?」

「うむ。“人を使う者”としては最強クラス。育てがいがあるのう、ジョーよ」

「って言ってもどうやって使うんだよ?」

と、そのとき――

祠の外から、地鳴りのような咆哮が轟いた。

ジノが肩を震わせる。

「あ……あの声……オルデンベアだ……!」

ジョーも耳をふさぎたくなるような重低音の叫びが、鼓膜を揺らした。

「ッ、近い!?」

ジョーは思わず立ち上がった。

「バール!今の、ヤバくないか!?」

「うむ……どうやら本命の魔獣、怒りを爆発させたようじゃな……!」





木々の間を疾駆する獣の咆哮が、再び森を揺らす。

「――盾が飛ばされた! 魔術士!カバー!」

咄嗟に距離を取った魔術士が、倒れた盾兵に駆け寄り、詠唱を始める。

 「《生命の環・ヒーリオール》!」
 「《鉄壁強化・バストレア》!」

白と青の魔法陣の光が"盾"の全身を包み、癒しを与え、肉体を強化する。

盾兵は苦しげに息を吐きながらも、力強く地を踏みしめ、戦線へ戻る。

「俺は……まだ、動けます……!」

アメリアの声が飛ぶ。

「良く戻った!魔術士の防衛を任せる! 絶対に通すな!」

オルデンベアが咆哮とともに前脚を振り上げる。
その動きに合わせて、アメリアが怒声を放つ。

「弓組は両翼へ散開! 射撃で気を引け!魔術士は"灼陽爆破"詠唱開始!!」

「了解っ!!」

森林を滑るように駆け、左右に散る弓兵たち。
狙いすました矢が、獣の肩や顔面へと突き刺さる。

「おらぁッ!」

ガルドが太めの矢を二連装で撃ち込み、オルデンベアが一瞬だけそちらを向いた。

「今だ!」

アメリアが地を蹴る。

剣を逆手に構え、獣の左脚に深く切り込む。
筋肉が裂け、血飛沫が吹き上がるも――

「ギィアアアアアァァァアッ!!」

それは、痛みではなく怒りの咆哮だった。

反射的に爪が横薙ぎに振るわれる。
アメリアは身を低くし、回避。

「今だ、魔術士!! ――叩き込め!!」

「了解ッ……!」

魔術士の両手に、熱量が凝縮する。
周囲の空気が歪み、赤熱する魔法陣が展開される。

 「《灼陽爆破・インフェルナブラスト》!!」

轟音と共に放たれた火球は、灼熱の太陽のような輝きを放ち、
オルデンベアの右肩から胴体にかけて直撃した。

ドォォン!!

爆風が吹き荒れ、獣が巨体を後ろに仰け反らせる。

「効いた……!? いや……まだ……!」

炎の中から現れた獣の輪郭。
毛皮は焼け焦げ、皮膚が裂けてもなお、その目は爛々と光を放っていた。

アメリアは汗をぬぐい、剣を構え直す。

「……まだだ!油断するな!」

次の一撃で決める。
その覚悟が、彼女の背をさらに強く押した。
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