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第三章:辺境 ヴァルグレイス
ヴァルグレイス本格始動
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◆課金の毎日
帰還から一週間。
牧場の家畜たちはすっかり回復し、ジョーは毎日のように対価契約と課金強化を繰り返していた。
豚、山羊、鶏、馬――。家畜達に神貨を注ぎ込み、飼育効率や繁殖力、体力を底上げしていく。
「……よし。家畜はだいたい仕上がったな」
ジョーはウォレットの残高を確認しながら、ふと呟いた。
「にしても……俺のステータスって、全然増えねぇのな……?」
そこに、脳裏に響くバールの声。
『む…? お主には経験値という概念が無いようじゃぞ? 全て"神貨"になって貯まっておるようじゃ』
「……そうなの?」
『儂らのこの”世界”では、経験そのものが“経験値”という形で還元されておる。しかし、お主の場合は"契約"を結んだ"モノ"達の経験値までもが"神貨"に変換されて還元され貯まっていく…羨ましいのぅ』
『それとジョーよ』
「なんだ?」
『何故"金"を使う事を恐れるんじゃ?』
「…恐れて……るんだろうな……。
前世で金を搾取されるシステムがあって……」
『それは前に聞いたわい、“税金”とかいう理不尽制度があったと』
「……」
『ジョーよ――わしが言いたいのはな…』
バールの声に力がこもる。
『“金”は使ってナンボじゃ!!』
『死蔵させておくだけじゃ何も生まん。
"金"にサボらせるでないわ。
儂が見込んだ男じゃろう!
お主には“投資”の才能がある。
恐れず、ドーンと使わんかい!!』
ジョーはしばし黙り込んだが、やがて小さく笑った。
「……そうだな!」
⸻
その時だった。
スマホの画面に、見慣れぬ新たな項目が浮かび上がる。
⸻
《ヴァルグレイス》
《管理者権限》
・神貨を投資可能
・役職・職能・適性に応じ、自動ポートフォリオを作成し、"リバランス"を行います
・必要経費:全保有BTCの50%
《全BTCの半分を"投資"しますか?》
【YES/NO】
⸻
「ヴァルグレイス…? 村の事…だよな…?」
ジョーが驚きつつ画面を見つめていると、バールの声がまた響く。
『ジョー――かましてやれい。迷うな。これはお主にしか扱えぬ”浪漫投資案件”よ』
ジョーは息を吸い込み、画面に指を重ねる。
「――YESだ!!」
次の瞬間、スマホから放たれた光が天へと舞い上がり、村全体を包み込んだ。
金色の光粒が、空から雨のように降り注いでいく。
村に所属する者、建築物、土地、あらゆる"モノ"達へ――村の隅々が黄金色の輝きに染まっていく。
⸻
◆ヴァルグレイス起動
「な、なんだ!? 空が光って……!?」
「魔法か!? 敵襲か!?」
「神の御業か……!!」
突然の光景に、村民たちは軽くパニックを起こしていた。
ジョーとバールは"神貨"が巻き起こした光景を満足気に眺めていた。
『いやぁー、豪快に"金"を使うのはやっぱりええのぅ!!!』
「バール! 気が合うなあ、散財するのはこんなに気持ち良いものだったんだなー」
そんな1人と幽霊の元へ、慌しい足音が近付いてきた。
ドタドタドタッ――!
「ジョーッッッ!!!!
説明しろ!!!!!!」
アメリアが血相を変えて神速でやってきた。
顔を真っ赤にし、完全に怒り心頭である。
『おぉ…女騎士、怒っとるのぅ』
「あ……やっぱり黙ってやったのはマズかった感じ…?」
アメリアにはジョーの言葉は聞こえていないようである。
「来い!!!!」
――
急遽、集会所に主要メンバーが招集されることになった。
長机を囲んで座るのは、今や村の核となる人材たちだった。
• 騎士団からはアメリア、盾副官、フェリシア
• ドワーフからはドレット、ベルダ
• 村民代表としてジノと村長(いたのか…)
• 先日スカウトした牧場主
• 移民団の代表、スカルガン。
集まった全員の視線がジョーへ集中している。
特に熱い視線を送っているのは、アメリア、ドレット、牧場主だ。
アメリアがジョーへと短く言い放つ。
「説明しろ」
「――あー、えっとだな」
ジョーは頭を掻きながら説明を始めた。
「さっきの光は、俺の“魔法”だ。皆の成長……というか、適性を伸ばす…みたいなもんだと思ってくれ」
室内がざわめく。
「え?」
「成長を……?」
「そんな魔法が……?」
アメリアが椅子から立ち上がり、怒りの続きを再開した。
「ジョー!! そういうことは事前に説明してから行使するべきだろう!!
これは大規模魔法の類に該当する! 勝手に行えば不安を煽る要因にもなるんだぞ!
規律の――」
「まあまあ、アメリア隊長」
盾副官がそっとなだめる。
「今回は村のためにやった事ですし、被害も出ておりません。抑えて抑えて…」
「アメリア様、勘弁してやって下さい! ジョーに悪気はねえんです!」
ジノも慌ててフォローに入る。
その横では、ドレットと牧場主が正座状態となり、ジョーを拝み倒していた。
「ジョー様……!」
「神の化身……!!」
ベルダは苦笑しつつも、若干同意気味に頷いている。
スカルガンは興奮気味に叫んだ。
「アメリア様もアニキも……スゲェや! 俺ァ一生ついていきやすぜ!!」
村長はというと、どこまでも穏やかに笑顔を浮かべていた。
「人も動物も増えてええのぅ……活気が出てきてえぇのう」
――
混乱が収拾不能になりつつあったところで、盾副官が手を叩き全員を制した。
「――はいはい! 一旦落ち着きましょう! 理由はともかく、折角、村の主要メンバーが集まりましたので目下の懸案を相談しましょう!」
盾副官は一旦、ジョーの魔法の件は放置する方針の様だ。
場が静まったところで、会議が正式に始まる。
「王命について議題を整理します」
盾副官が口早に要点を読み上げる。
「まず、移民千人の追加受け入れ。
次に、魔獣騒動の本格調査任務。
これらに対応するため、今後の村の方向性を決定したいと思います」
アメリアは唸るように腕を組んだ。
「……簡単ではない。だが、乗り越えねばならぬ」
その時――
「アメリア様! すいやせん!」
突然スカルガンが手を挙げて叫んだ。
「移民の奴らの間でも話題になってるんですが……この”村”、正式な名前ってあるんですかい?
名前があった方が愛着も湧きますし、皆んなも士気が上がると思いやして!」
場の全員が自然とアメリアへと視線を向けた。
アメリアは小さく息を整え、静かに告げた。
「知らん…村長に聞いてくれ」
皆の視線がニコニコ笑顔の村長に向けられた。
そして、村長は穏やかに口を開いた。
「無いよ?」
スカルガンのテンションが一気に下がる。
「そうなんですか…命名したりはしないんで?」
「だって今まで必要なかったからのう、そういう大事な事は、アメリア様にお願いしようかの」
再びアメリアへ注目が集まる。
「…村の名前……ジョー、頼んだ」
「えっ? おれが決めるの?」
「おぉっっ! 流石アニキ! 頼りになりますぜ!」
全員がジョーの発言を待っていた。
「あっ、良いのがあるわ! ヴァルグレイス! どうだ!?」
その名が告げられた瞬間、場には自然と拍手と歓声が広がった。
「おお……!」
「ヴァルグレイス!」
「いい名前だ!!」
「完全にアメリアから取った名前だけどな、雷の戦女神と、《グレイスハルト》を合体させた感じだな!」
「なんだか……強くなれる気がします!!」
フェリシアも、呼び出されてからずっと緊張の面持ちだったが、初めて笑顔を見せていた。
帰還から一週間。
牧場の家畜たちはすっかり回復し、ジョーは毎日のように対価契約と課金強化を繰り返していた。
豚、山羊、鶏、馬――。家畜達に神貨を注ぎ込み、飼育効率や繁殖力、体力を底上げしていく。
「……よし。家畜はだいたい仕上がったな」
ジョーはウォレットの残高を確認しながら、ふと呟いた。
「にしても……俺のステータスって、全然増えねぇのな……?」
そこに、脳裏に響くバールの声。
『む…? お主には経験値という概念が無いようじゃぞ? 全て"神貨"になって貯まっておるようじゃ』
「……そうなの?」
『儂らのこの”世界”では、経験そのものが“経験値”という形で還元されておる。しかし、お主の場合は"契約"を結んだ"モノ"達の経験値までもが"神貨"に変換されて還元され貯まっていく…羨ましいのぅ』
『それとジョーよ』
「なんだ?」
『何故"金"を使う事を恐れるんじゃ?』
「…恐れて……るんだろうな……。
前世で金を搾取されるシステムがあって……」
『それは前に聞いたわい、“税金”とかいう理不尽制度があったと』
「……」
『ジョーよ――わしが言いたいのはな…』
バールの声に力がこもる。
『“金”は使ってナンボじゃ!!』
『死蔵させておくだけじゃ何も生まん。
"金"にサボらせるでないわ。
儂が見込んだ男じゃろう!
お主には“投資”の才能がある。
恐れず、ドーンと使わんかい!!』
ジョーはしばし黙り込んだが、やがて小さく笑った。
「……そうだな!」
⸻
その時だった。
スマホの画面に、見慣れぬ新たな項目が浮かび上がる。
⸻
《ヴァルグレイス》
《管理者権限》
・神貨を投資可能
・役職・職能・適性に応じ、自動ポートフォリオを作成し、"リバランス"を行います
・必要経費:全保有BTCの50%
《全BTCの半分を"投資"しますか?》
【YES/NO】
⸻
「ヴァルグレイス…? 村の事…だよな…?」
ジョーが驚きつつ画面を見つめていると、バールの声がまた響く。
『ジョー――かましてやれい。迷うな。これはお主にしか扱えぬ”浪漫投資案件”よ』
ジョーは息を吸い込み、画面に指を重ねる。
「――YESだ!!」
次の瞬間、スマホから放たれた光が天へと舞い上がり、村全体を包み込んだ。
金色の光粒が、空から雨のように降り注いでいく。
村に所属する者、建築物、土地、あらゆる"モノ"達へ――村の隅々が黄金色の輝きに染まっていく。
⸻
◆ヴァルグレイス起動
「な、なんだ!? 空が光って……!?」
「魔法か!? 敵襲か!?」
「神の御業か……!!」
突然の光景に、村民たちは軽くパニックを起こしていた。
ジョーとバールは"神貨"が巻き起こした光景を満足気に眺めていた。
『いやぁー、豪快に"金"を使うのはやっぱりええのぅ!!!』
「バール! 気が合うなあ、散財するのはこんなに気持ち良いものだったんだなー」
そんな1人と幽霊の元へ、慌しい足音が近付いてきた。
ドタドタドタッ――!
「ジョーッッッ!!!!
説明しろ!!!!!!」
アメリアが血相を変えて神速でやってきた。
顔を真っ赤にし、完全に怒り心頭である。
『おぉ…女騎士、怒っとるのぅ』
「あ……やっぱり黙ってやったのはマズかった感じ…?」
アメリアにはジョーの言葉は聞こえていないようである。
「来い!!!!」
――
急遽、集会所に主要メンバーが招集されることになった。
長机を囲んで座るのは、今や村の核となる人材たちだった。
• 騎士団からはアメリア、盾副官、フェリシア
• ドワーフからはドレット、ベルダ
• 村民代表としてジノと村長(いたのか…)
• 先日スカウトした牧場主
• 移民団の代表、スカルガン。
集まった全員の視線がジョーへ集中している。
特に熱い視線を送っているのは、アメリア、ドレット、牧場主だ。
アメリアがジョーへと短く言い放つ。
「説明しろ」
「――あー、えっとだな」
ジョーは頭を掻きながら説明を始めた。
「さっきの光は、俺の“魔法”だ。皆の成長……というか、適性を伸ばす…みたいなもんだと思ってくれ」
室内がざわめく。
「え?」
「成長を……?」
「そんな魔法が……?」
アメリアが椅子から立ち上がり、怒りの続きを再開した。
「ジョー!! そういうことは事前に説明してから行使するべきだろう!!
これは大規模魔法の類に該当する! 勝手に行えば不安を煽る要因にもなるんだぞ!
規律の――」
「まあまあ、アメリア隊長」
盾副官がそっとなだめる。
「今回は村のためにやった事ですし、被害も出ておりません。抑えて抑えて…」
「アメリア様、勘弁してやって下さい! ジョーに悪気はねえんです!」
ジノも慌ててフォローに入る。
その横では、ドレットと牧場主が正座状態となり、ジョーを拝み倒していた。
「ジョー様……!」
「神の化身……!!」
ベルダは苦笑しつつも、若干同意気味に頷いている。
スカルガンは興奮気味に叫んだ。
「アメリア様もアニキも……スゲェや! 俺ァ一生ついていきやすぜ!!」
村長はというと、どこまでも穏やかに笑顔を浮かべていた。
「人も動物も増えてええのぅ……活気が出てきてえぇのう」
――
混乱が収拾不能になりつつあったところで、盾副官が手を叩き全員を制した。
「――はいはい! 一旦落ち着きましょう! 理由はともかく、折角、村の主要メンバーが集まりましたので目下の懸案を相談しましょう!」
盾副官は一旦、ジョーの魔法の件は放置する方針の様だ。
場が静まったところで、会議が正式に始まる。
「王命について議題を整理します」
盾副官が口早に要点を読み上げる。
「まず、移民千人の追加受け入れ。
次に、魔獣騒動の本格調査任務。
これらに対応するため、今後の村の方向性を決定したいと思います」
アメリアは唸るように腕を組んだ。
「……簡単ではない。だが、乗り越えねばならぬ」
その時――
「アメリア様! すいやせん!」
突然スカルガンが手を挙げて叫んだ。
「移民の奴らの間でも話題になってるんですが……この”村”、正式な名前ってあるんですかい?
名前があった方が愛着も湧きますし、皆んなも士気が上がると思いやして!」
場の全員が自然とアメリアへと視線を向けた。
アメリアは小さく息を整え、静かに告げた。
「知らん…村長に聞いてくれ」
皆の視線がニコニコ笑顔の村長に向けられた。
そして、村長は穏やかに口を開いた。
「無いよ?」
スカルガンのテンションが一気に下がる。
「そうなんですか…命名したりはしないんで?」
「だって今まで必要なかったからのう、そういう大事な事は、アメリア様にお願いしようかの」
再びアメリアへ注目が集まる。
「…村の名前……ジョー、頼んだ」
「えっ? おれが決めるの?」
「おぉっっ! 流石アニキ! 頼りになりますぜ!」
全員がジョーの発言を待っていた。
「あっ、良いのがあるわ! ヴァルグレイス! どうだ!?」
その名が告げられた瞬間、場には自然と拍手と歓声が広がった。
「おお……!」
「ヴァルグレイス!」
「いい名前だ!!」
「完全にアメリアから取った名前だけどな、雷の戦女神と、《グレイスハルト》を合体させた感じだな!」
「なんだか……強くなれる気がします!!」
フェリシアも、呼び出されてからずっと緊張の面持ちだったが、初めて笑顔を見せていた。
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