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第1話
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聖堂に集まった結婚式の参加者が騒いだ――
「結婚紋が光っている! あいつは既婚者だぞ!」
「本当だわ! 重婚は犯罪よ! 捕まえて!」
この国では婚儀を行う際、手の甲に結婚紋を刻む。
それは普段見えないが、結婚相手がいるのに他の者と寝ようとする時、さらに上から結婚紋を刻もうとした時、結婚相手とその紋を共鳴させた時……等に光るのだ。
そして伯爵令嬢エメライン・コーラムバインと侯爵ブッチャー・シスル、二人の婚儀の最中、エメラインの手の甲に結婚紋が浮かび上がった。
「エ、エメライン! 貴様、俺を騙していたのか!」
醜い豚のようなブッチャーが地団太を踏んで怒鳴る。
聖堂の席に着いていたエメラインの家族達も怒り狂った。
「信じられん! まさかエメラインが結婚していたなんて!」
そう言ったのはエメラインの叔父であるコーラムバイン伯爵だ。
「アバズレよ……! とんだアバズレだわ……!」
そう言ったのは伯爵の妻であるカミラだ。
「エメライン! 同じ女として最低だと思うわ!」
そう言ったのは伯爵の娘であるジャスティーナである。
家族に罵られたエメラインは顔を伏せて黙っている。
するとブッチャーが彼女の肩を掴んで、叫んだ。
「誰だ! 誰と結婚している!? そいつを連れてこい!」
その命令にエメラインは小さく頷いた。
「あと三十分……彼が来るまで、どうしてもあと三十分かかるそうです……」
「はあ!? アンタ、まさか結婚式に男を呼んだ訳!?」
「何ていう神経なの! 死んだ方がいいわ!」
ジャスティーナとカミラがエメラインを罵る。
聖堂は混乱の渦と化し、参加者は口々に憶測を言い合っていた。
この場合、率先して場を治めるべきは最も地位の高いブッチャーであろう。
彼はエメランから手を離すと、今度は指差して命令した。
「エメライン! どういう訳なのか全部話せ! さもないと許さんぞ!」
その言葉にジャスティーナとカミラ、伯爵が同意する。
「そうよ、そうよ! 誰と結婚していたのか言いなさい!」
「命が惜しかったら、侯爵様の言う通りにしなさい!」
「そうだ! よくも侯爵様の顔に泥を塗ったな!」
それを聞いたエメラインは静かに頷いた。
そしてこうなった事情を語り始めた。
「結婚紋が光っている! あいつは既婚者だぞ!」
「本当だわ! 重婚は犯罪よ! 捕まえて!」
この国では婚儀を行う際、手の甲に結婚紋を刻む。
それは普段見えないが、結婚相手がいるのに他の者と寝ようとする時、さらに上から結婚紋を刻もうとした時、結婚相手とその紋を共鳴させた時……等に光るのだ。
そして伯爵令嬢エメライン・コーラムバインと侯爵ブッチャー・シスル、二人の婚儀の最中、エメラインの手の甲に結婚紋が浮かび上がった。
「エ、エメライン! 貴様、俺を騙していたのか!」
醜い豚のようなブッチャーが地団太を踏んで怒鳴る。
聖堂の席に着いていたエメラインの家族達も怒り狂った。
「信じられん! まさかエメラインが結婚していたなんて!」
そう言ったのはエメラインの叔父であるコーラムバイン伯爵だ。
「アバズレよ……! とんだアバズレだわ……!」
そう言ったのは伯爵の妻であるカミラだ。
「エメライン! 同じ女として最低だと思うわ!」
そう言ったのは伯爵の娘であるジャスティーナである。
家族に罵られたエメラインは顔を伏せて黙っている。
するとブッチャーが彼女の肩を掴んで、叫んだ。
「誰だ! 誰と結婚している!? そいつを連れてこい!」
その命令にエメラインは小さく頷いた。
「あと三十分……彼が来るまで、どうしてもあと三十分かかるそうです……」
「はあ!? アンタ、まさか結婚式に男を呼んだ訳!?」
「何ていう神経なの! 死んだ方がいいわ!」
ジャスティーナとカミラがエメラインを罵る。
聖堂は混乱の渦と化し、参加者は口々に憶測を言い合っていた。
この場合、率先して場を治めるべきは最も地位の高いブッチャーであろう。
彼はエメランから手を離すと、今度は指差して命令した。
「エメライン! どういう訳なのか全部話せ! さもないと許さんぞ!」
その言葉にジャスティーナとカミラ、伯爵が同意する。
「そうよ、そうよ! 誰と結婚していたのか言いなさい!」
「命が惜しかったら、侯爵様の言う通りにしなさい!」
「そうだ! よくも侯爵様の顔に泥を塗ったな!」
それを聞いたエメラインは静かに頷いた。
そしてこうなった事情を語り始めた。
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