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前編
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王位継承権を持つ第二王子フェニックは愚か者だった。
そのため彼は、婚約者であるアローラに無視され続けてきた。
だからこんな馬鹿げた間違いを犯してしまったのだ――
アローラは夜明け色のミステリアスな髪色に、太陽の瞳を持った堂々たる美少女である。しかもあらゆる学問を深く学んでおり、学者と専門的な会話を繰り広げるほどの才女だ。
しかしフェニックは“俺はアローラに負けていない!”と胸を張っていた。
彼は黒髪黒目の醜男で、平均よりも下の成績である。しかしそれ関わらず、「あいつが夜明けの女王なら、俺は深夜の王だ! 優秀な美男美女同士だ!」と言いふらしていたのだった。
アローラは傲慢なフェニックに愛情を抱けず、無視していた。それよりも王位継承権のない第一王子グリフィと仲が良く、いつも二人は聖魔法の話しをしていた。グリフィは目が不自由なために王位継承から外れていたが、学園の講義に参加したり、点字の本を読んだりして、とても物知りである。さらには穏やかな性格であるのに判断力と決断力に優れ、なぜ彼の目が不自由なのかと国民は嘆いていた。
フェニックは兄のグリフィが羨ましかった。
どんなことをしてでも、アローラを奪い返すと誓った。
しかしその方法がひとつも思い付かない……――
悶々とする日々、ある利口な従者がフェニックに進言した。
「今まで、傲慢な態度でアローラ様に嫌われてきたのでしょう? それなら、逆の行動を取ってはどうでしょう?」
「何だと!? 逆の行動とは何だ!?」
理解力の低いフェニックに従者は閉口したが、すぐに答えを知らせる。
「アローラ様は傲慢がお嫌いです。それなら謙虚になればよろしい。そして手っ取り早くグリフィ様からアローラ様を取り返すいい方法がございますよ?」
従者は粘っこく微笑んだ。
そして兄のグリフィが謎の刺客に害され、それを弟のフェニックが助け出したという知らせが国中に広がった。幸いにもグリフィの怪我は軽く、すぐに治るものだった。そして兄を救ったフェニックは国民から祭り上げられた。
「いや、俺は大したことはしていない。それよりもすぐに現場へ駆けつけてくれた衛兵達に感謝を告げてほしい。俺はただ兄が心配だったのだ――」
フェニックは従者に考えてもらった言葉を繰り返した。
国民はその言葉に感動し、大いに褒め称える。
それはアローラも例外ではなかった。
「フェニック様、今まであなたのことを誤解しておりました。あなたは兄上のことを誰よりも思う、素晴らしいお方だったのですね。ああ、あなたの婚約者で良かった」
そこの言葉を聞いたフェニックは驚いた。
あの偉そうなアローラがこの俺を称賛している。
彼は一瞬だけ天国へ登り、そして一気に地獄へ落ちた。
この女、アローラ! 今まで俺を無視してきた癖に、たった一回謙虚なところを見せただけで、掌を返しやがって! それに誤解していたってどういうことだ! 俺のことを最低な人間だと思い、遠ざけていたんだろうが! 何という女狐だ! 文句を言ってやる!
そしてフェニックはアローラを指差し、喚き散らした。
「ふん、アローラ! 今頃気付いたのか、この間抜け! やはりお前は、勉強ができるだけの馬鹿だったんだな! この素晴らしい俺を見くびっていたなんて、哀れにも程がある! 俺の良さを見抜けない馬鹿には王妃は務まらん! よって、ここでお前との婚約を破棄する!」
その言葉を聞くなり、アローラは悲しげな表情を浮かべた。
そしてコクリと頷くと、足早に立ち去っていった。
フェニックは気分が良かった――最高の瞬間だった。
そして一週間後、王位継承権はフェニックからグリフィに移った。
しかもそのグリフィの婚約者はアローラだったのである。
そのため彼は、婚約者であるアローラに無視され続けてきた。
だからこんな馬鹿げた間違いを犯してしまったのだ――
アローラは夜明け色のミステリアスな髪色に、太陽の瞳を持った堂々たる美少女である。しかもあらゆる学問を深く学んでおり、学者と専門的な会話を繰り広げるほどの才女だ。
しかしフェニックは“俺はアローラに負けていない!”と胸を張っていた。
彼は黒髪黒目の醜男で、平均よりも下の成績である。しかしそれ関わらず、「あいつが夜明けの女王なら、俺は深夜の王だ! 優秀な美男美女同士だ!」と言いふらしていたのだった。
アローラは傲慢なフェニックに愛情を抱けず、無視していた。それよりも王位継承権のない第一王子グリフィと仲が良く、いつも二人は聖魔法の話しをしていた。グリフィは目が不自由なために王位継承から外れていたが、学園の講義に参加したり、点字の本を読んだりして、とても物知りである。さらには穏やかな性格であるのに判断力と決断力に優れ、なぜ彼の目が不自由なのかと国民は嘆いていた。
フェニックは兄のグリフィが羨ましかった。
どんなことをしてでも、アローラを奪い返すと誓った。
しかしその方法がひとつも思い付かない……――
悶々とする日々、ある利口な従者がフェニックに進言した。
「今まで、傲慢な態度でアローラ様に嫌われてきたのでしょう? それなら、逆の行動を取ってはどうでしょう?」
「何だと!? 逆の行動とは何だ!?」
理解力の低いフェニックに従者は閉口したが、すぐに答えを知らせる。
「アローラ様は傲慢がお嫌いです。それなら謙虚になればよろしい。そして手っ取り早くグリフィ様からアローラ様を取り返すいい方法がございますよ?」
従者は粘っこく微笑んだ。
そして兄のグリフィが謎の刺客に害され、それを弟のフェニックが助け出したという知らせが国中に広がった。幸いにもグリフィの怪我は軽く、すぐに治るものだった。そして兄を救ったフェニックは国民から祭り上げられた。
「いや、俺は大したことはしていない。それよりもすぐに現場へ駆けつけてくれた衛兵達に感謝を告げてほしい。俺はただ兄が心配だったのだ――」
フェニックは従者に考えてもらった言葉を繰り返した。
国民はその言葉に感動し、大いに褒め称える。
それはアローラも例外ではなかった。
「フェニック様、今まであなたのことを誤解しておりました。あなたは兄上のことを誰よりも思う、素晴らしいお方だったのですね。ああ、あなたの婚約者で良かった」
そこの言葉を聞いたフェニックは驚いた。
あの偉そうなアローラがこの俺を称賛している。
彼は一瞬だけ天国へ登り、そして一気に地獄へ落ちた。
この女、アローラ! 今まで俺を無視してきた癖に、たった一回謙虚なところを見せただけで、掌を返しやがって! それに誤解していたってどういうことだ! 俺のことを最低な人間だと思い、遠ざけていたんだろうが! 何という女狐だ! 文句を言ってやる!
そしてフェニックはアローラを指差し、喚き散らした。
「ふん、アローラ! 今頃気付いたのか、この間抜け! やはりお前は、勉強ができるだけの馬鹿だったんだな! この素晴らしい俺を見くびっていたなんて、哀れにも程がある! 俺の良さを見抜けない馬鹿には王妃は務まらん! よって、ここでお前との婚約を破棄する!」
その言葉を聞くなり、アローラは悲しげな表情を浮かべた。
そしてコクリと頷くと、足早に立ち去っていった。
フェニックは気分が良かった――最高の瞬間だった。
そして一週間後、王位継承権はフェニックからグリフィに移った。
しかもそのグリフィの婚約者はアローラだったのである。
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