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わたしたちの心配が杞憂だったとわかったのは、公園を出ることができた後だった。大型の亡者の姿も小さくなり、追ってこないことがわかると、わたしは急に疲労を感じた。張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったようだった。
「来ないね。よし、転移魔法のところに急ごう」
有沙も後ろを気にするのをやめて、急ぎ足でどこかへ向かっていく。わたしは有沙の後についていった。今は手を繋いでいないから、しっかりついていかないと置いていかれそうな気分になってしまった。
「ねえ有沙、転移魔法はどこにあるの?」
「魔女の拠点の中だよ。藍水からしたら、また普通の家だと思うよ」
宣言通り、有沙はごく普通の家の門を開けて中に入っていく。今度は二階建ての家で、車庫には車が停まっていた。有沙は家の中には入らず、横の道を抜けて庭へと向かっていく。
広い庭には大きな模様が描かれていた。円の中には複雑な文様が描かれている。一目でこれが転移魔法だとわかった。こんなもの、普通の家にあるはずがないのだ。
「ゴールだ。藍水、よく頑張ったね」
有沙は手を差し出してくれた。わたしはその手を取る。
「きみは目を閉じていたほうがいい。行くよ」
「う、うん」
言われるまま、わたしは目を閉じた。下から突き上げるような振動を感じる。それから、酔ってしまいそうな浮遊感。それがしばらく続いて、ちょっと気持ち悪くなってきた頃に、有沙がわたしに声をかけた。
「いいよ。ここが本部だ」
わたしは目を開けた。目の前には大きな屋敷があった。わたしの足元は芝生で、よく手入れされた庭が一望できる。
本当に、転移してきたのだ。わたしが転移魔法に驚く暇もなく、有沙が先に行ってしまう。わたしは慌ててその背を追った。
屋敷の大きな扉に有沙が触れると、扉が淡い光に包まれる。そして、ひとりでに扉が開いた。その先に進んでいく有沙を追って、わたしも屋敷の中に入る。
屋敷の中は荘厳な装飾が施されていて、わたしでは言葉にできないような綺麗な空間が広がっていた。正面には二階に繋がる幅広の階段があり、両脇には廊下が伸びている。おそらく廊下の先には部屋が並んでいるのだろう。階段の踊り場には女性の像が立っていた。あの女性は何かの象徴なのだろうか。
そして、階段から下りてくる人影があった。その人を見て、わたしは驚いた。
このあたりでは有名な国立高校の制服を着た、短髪の若い男の人だった。痩身で背が高く、顔は小さくて、大きな瞳が印象的だった。
わたしはまさかと思った。その答えはすぐに出た。
「ルイ!」
有沙がそう言ってその男性に駆け寄ったのだ。わたしは驚きで硬直してしまった。
やはり、この人がルイなのだ。えっ、若いとは思っていたけれど、同年代? むしろわたしより下の学年なんじゃないの? それなのに、魔女を率いているの?
ルイは優しく微笑んで、有沙に言った。
「お疲れ様、アリサ。今日はゆっくり休んで」
「ああ、そうするよ。どうせ明日からはまた狩り出されるんだろう?」
「そうだね。アリサの力はどうしても借りたい」
ルイがわたしのほうを見た。固まっているわたしに、ルイが声を掛ける。
「きみが、アイミだね。魔器としての支援に感謝するよ」
「い、いいえ、わたしは、有沙に守ってもらってばかりで」
ルイが放っている雰囲気に飲まれて、わたしはつい畏まった言い方になってしまう。ルイは特に気にしていないようだった。
「そのおかげでアリサにいろいろ頼むことができた。できることなら、もう少し支援してもらいたいところだけれど」
「けれど? ルイ、明日からも藍水に支援してもらうんじゃないの?」
有沙が確認すると、ルイは首を横に振った。その動作にわたしはまた驚いてしまう。
えっ? わたし、明日から有沙と離れ離れになるの?
「それを決めるのはアリサじゃないし、ぼくでもない。アイミ自身だよ」
「……そうか。そういうことだね」
「ど、どういうこと?」
有沙には伝わったようだけれど、わたしには全く伝わらない。わたしが尋ねると、ルイが口を開いた。
「本来、きみは一般人だ。たとえ魔器であったとしても、魔法の世界に関わることは許されない。だから、きみにはふたつの選択肢がある。ひとつは、記憶を消して一般人の世界に戻る。もうひとつは、このままぼくたちと一緒に魔女の世界に残る。どちらを選んでも構わない。もし魔女の世界に残るのなら、これからもこの三日間のように戦い続けることになる」
ルイは静かに告げた。
わたしは有沙を見てしまった。有沙は口を真一文字に結んで、決して開こうとしなかった。自分の発言がわたしの選択に影響しないように、という配慮なのだと思った。
有沙と一緒にいたいのなら、魔女の世界に踏み入れることになる。その場合、この三日間のような恐怖を味わい続けることになる。わたしはそれに耐えられるのだろうか。逃げ出したくなるのではないだろうか。
じゃあ、有沙と過ごしたこの三日間の記憶を捨てて、一般人に戻る?
「わたし、は」
逡巡する。ルイも、有沙も、わたしの発言を、選択を待っている。
この場で決めなければならないのだ。そんな大切な選択を、わたしの将来に影響する選択を、今ここでしなければならないのだ。
でも、わたしの心は決まっていた。あとは踏ん切りをつけるだけだ。こうだ、と二人に言うだけだ。
わたしは顔を上げた。ルイはやわらかい微笑みを、有沙は複雑な表情を浮かべていた。ルイにはわたしの選択が予知されているような気がした。
「わたしは、有沙と一緒にいたいです」
はっきりと口にすることで、わたしの心の揺らぎも消えた。わたしはもう、魔女の世界で生きていくのだ。これからも有沙と一緒にいるのだ。
「それは、魔女の世界に来てくれる、ということだね?」
ルイがわたしの意思を確認する。わたしは力強く頷いた。
「はい。こんなわたしでも誰かの役に立つのなら、その道を選びます」
わたしがそう言うと、有沙がわたしに近寄ってきて、わたしの手を握った。何度も握った、白くて綺麗な手を握り返す。
「藍水、ありがとう。これからもよろしくね」
「有沙も、ここまでわたしを守ってくれてありがと。これからも、よろしくね」
有沙は珍しく喜んでいるように見えた。その反応が嬉しくて、わたしの頬が緩んだ。
「アイミ、きみの選択に感謝する。アリサと一緒に、これからぼくたち魔女を助けてほしい」
「はい、わたしにできることなら」
「ひとまず、アリサと二人で休んでくれ。亡者の掃討作戦は明日開始する。詳細は明日伝えるよ」
「わかった。ルイ、忙しい中、出迎えてくれてありがとう」
「それじゃ、ぼくはこれで。アリサ、アイミ、ゆっくり休んで」
ルイはわたしたちの横を抜けて、屋敷の外へ出ていった。その間にも光の球がルイの周りを飛び交って、ルイが何か話しているのが聞こえた。うわあ、大変そう。わたしと同年代とは思えない。わたしにはあんなことはできない。
有沙はルイが屋敷を出るのを見送ってから、わたしを見た。
「じゃあ藍水、行こう。豪勢なベッドで眠れるし、おいしい食事が出るよ」
「そうなんだ。楽しみ」
有沙に手を引かれるようにして、わたしは屋敷の二階へと上っていく。
これで、わたしはもう一般人には戻れない。あの平穏で退屈だった日常はもう戻ってこない。
けれど、わたしに後悔はない。わたしは有沙と一緒にいたいのだから。
有沙の手を握りながら、思う。
ああ、わたしは、有沙のことが好きなんだな、と。
「ねえ、有沙」
「なに?」
振り返った有沙に、わたしはキスをした。唇が触れ合うだけの優しいキス。
唇はすぐに離れて、有沙が戸惑っているのが見えた。
「どうしたの、藍水」
「ううん。キスしたかっただけ」
わたしがそう答えると、有沙はふっと笑った。
「そう。珍しいこともあるんだね」
わたしと、有沙では、キスが持つ意味が違うから。
いつかきっと、同じ意味を持たせてやるんだからね。
わたしはそう心に誓って、階段を上る有沙についていった。
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「来ないね。よし、転移魔法のところに急ごう」
有沙も後ろを気にするのをやめて、急ぎ足でどこかへ向かっていく。わたしは有沙の後についていった。今は手を繋いでいないから、しっかりついていかないと置いていかれそうな気分になってしまった。
「ねえ有沙、転移魔法はどこにあるの?」
「魔女の拠点の中だよ。藍水からしたら、また普通の家だと思うよ」
宣言通り、有沙はごく普通の家の門を開けて中に入っていく。今度は二階建ての家で、車庫には車が停まっていた。有沙は家の中には入らず、横の道を抜けて庭へと向かっていく。
広い庭には大きな模様が描かれていた。円の中には複雑な文様が描かれている。一目でこれが転移魔法だとわかった。こんなもの、普通の家にあるはずがないのだ。
「ゴールだ。藍水、よく頑張ったね」
有沙は手を差し出してくれた。わたしはその手を取る。
「きみは目を閉じていたほうがいい。行くよ」
「う、うん」
言われるまま、わたしは目を閉じた。下から突き上げるような振動を感じる。それから、酔ってしまいそうな浮遊感。それがしばらく続いて、ちょっと気持ち悪くなってきた頃に、有沙がわたしに声をかけた。
「いいよ。ここが本部だ」
わたしは目を開けた。目の前には大きな屋敷があった。わたしの足元は芝生で、よく手入れされた庭が一望できる。
本当に、転移してきたのだ。わたしが転移魔法に驚く暇もなく、有沙が先に行ってしまう。わたしは慌ててその背を追った。
屋敷の大きな扉に有沙が触れると、扉が淡い光に包まれる。そして、ひとりでに扉が開いた。その先に進んでいく有沙を追って、わたしも屋敷の中に入る。
屋敷の中は荘厳な装飾が施されていて、わたしでは言葉にできないような綺麗な空間が広がっていた。正面には二階に繋がる幅広の階段があり、両脇には廊下が伸びている。おそらく廊下の先には部屋が並んでいるのだろう。階段の踊り場には女性の像が立っていた。あの女性は何かの象徴なのだろうか。
そして、階段から下りてくる人影があった。その人を見て、わたしは驚いた。
このあたりでは有名な国立高校の制服を着た、短髪の若い男の人だった。痩身で背が高く、顔は小さくて、大きな瞳が印象的だった。
わたしはまさかと思った。その答えはすぐに出た。
「ルイ!」
有沙がそう言ってその男性に駆け寄ったのだ。わたしは驚きで硬直してしまった。
やはり、この人がルイなのだ。えっ、若いとは思っていたけれど、同年代? むしろわたしより下の学年なんじゃないの? それなのに、魔女を率いているの?
ルイは優しく微笑んで、有沙に言った。
「お疲れ様、アリサ。今日はゆっくり休んで」
「ああ、そうするよ。どうせ明日からはまた狩り出されるんだろう?」
「そうだね。アリサの力はどうしても借りたい」
ルイがわたしのほうを見た。固まっているわたしに、ルイが声を掛ける。
「きみが、アイミだね。魔器としての支援に感謝するよ」
「い、いいえ、わたしは、有沙に守ってもらってばかりで」
ルイが放っている雰囲気に飲まれて、わたしはつい畏まった言い方になってしまう。ルイは特に気にしていないようだった。
「そのおかげでアリサにいろいろ頼むことができた。できることなら、もう少し支援してもらいたいところだけれど」
「けれど? ルイ、明日からも藍水に支援してもらうんじゃないの?」
有沙が確認すると、ルイは首を横に振った。その動作にわたしはまた驚いてしまう。
えっ? わたし、明日から有沙と離れ離れになるの?
「それを決めるのはアリサじゃないし、ぼくでもない。アイミ自身だよ」
「……そうか。そういうことだね」
「ど、どういうこと?」
有沙には伝わったようだけれど、わたしには全く伝わらない。わたしが尋ねると、ルイが口を開いた。
「本来、きみは一般人だ。たとえ魔器であったとしても、魔法の世界に関わることは許されない。だから、きみにはふたつの選択肢がある。ひとつは、記憶を消して一般人の世界に戻る。もうひとつは、このままぼくたちと一緒に魔女の世界に残る。どちらを選んでも構わない。もし魔女の世界に残るのなら、これからもこの三日間のように戦い続けることになる」
ルイは静かに告げた。
わたしは有沙を見てしまった。有沙は口を真一文字に結んで、決して開こうとしなかった。自分の発言がわたしの選択に影響しないように、という配慮なのだと思った。
有沙と一緒にいたいのなら、魔女の世界に踏み入れることになる。その場合、この三日間のような恐怖を味わい続けることになる。わたしはそれに耐えられるのだろうか。逃げ出したくなるのではないだろうか。
じゃあ、有沙と過ごしたこの三日間の記憶を捨てて、一般人に戻る?
「わたし、は」
逡巡する。ルイも、有沙も、わたしの発言を、選択を待っている。
この場で決めなければならないのだ。そんな大切な選択を、わたしの将来に影響する選択を、今ここでしなければならないのだ。
でも、わたしの心は決まっていた。あとは踏ん切りをつけるだけだ。こうだ、と二人に言うだけだ。
わたしは顔を上げた。ルイはやわらかい微笑みを、有沙は複雑な表情を浮かべていた。ルイにはわたしの選択が予知されているような気がした。
「わたしは、有沙と一緒にいたいです」
はっきりと口にすることで、わたしの心の揺らぎも消えた。わたしはもう、魔女の世界で生きていくのだ。これからも有沙と一緒にいるのだ。
「それは、魔女の世界に来てくれる、ということだね?」
ルイがわたしの意思を確認する。わたしは力強く頷いた。
「はい。こんなわたしでも誰かの役に立つのなら、その道を選びます」
わたしがそう言うと、有沙がわたしに近寄ってきて、わたしの手を握った。何度も握った、白くて綺麗な手を握り返す。
「藍水、ありがとう。これからもよろしくね」
「有沙も、ここまでわたしを守ってくれてありがと。これからも、よろしくね」
有沙は珍しく喜んでいるように見えた。その反応が嬉しくて、わたしの頬が緩んだ。
「アイミ、きみの選択に感謝する。アリサと一緒に、これからぼくたち魔女を助けてほしい」
「はい、わたしにできることなら」
「ひとまず、アリサと二人で休んでくれ。亡者の掃討作戦は明日開始する。詳細は明日伝えるよ」
「わかった。ルイ、忙しい中、出迎えてくれてありがとう」
「それじゃ、ぼくはこれで。アリサ、アイミ、ゆっくり休んで」
ルイはわたしたちの横を抜けて、屋敷の外へ出ていった。その間にも光の球がルイの周りを飛び交って、ルイが何か話しているのが聞こえた。うわあ、大変そう。わたしと同年代とは思えない。わたしにはあんなことはできない。
有沙はルイが屋敷を出るのを見送ってから、わたしを見た。
「じゃあ藍水、行こう。豪勢なベッドで眠れるし、おいしい食事が出るよ」
「そうなんだ。楽しみ」
有沙に手を引かれるようにして、わたしは屋敷の二階へと上っていく。
これで、わたしはもう一般人には戻れない。あの平穏で退屈だった日常はもう戻ってこない。
けれど、わたしに後悔はない。わたしは有沙と一緒にいたいのだから。
有沙の手を握りながら、思う。
ああ、わたしは、有沙のことが好きなんだな、と。
「ねえ、有沙」
「なに?」
振り返った有沙に、わたしはキスをした。唇が触れ合うだけの優しいキス。
唇はすぐに離れて、有沙が戸惑っているのが見えた。
「どうしたの、藍水」
「ううん。キスしたかっただけ」
わたしがそう答えると、有沙はふっと笑った。
「そう。珍しいこともあるんだね」
わたしと、有沙では、キスが持つ意味が違うから。
いつかきっと、同じ意味を持たせてやるんだからね。
わたしはそう心に誓って、階段を上る有沙についていった。
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