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学生らしい寄り道
学生の本分は勉学だ。勉学に勤しむことこそ、学生に求められていることだ。
決して、学校帰りに寄り道したりとか、恋愛に浮かされたりとか、そういうことをしてはいけない。青春だと言うけれど、学生は勉強することが仕事なのだから、青春は二の次であるべきなのだ。
と、僕は思っている。思っているだけだが。
だって、僕は毎日寄り道しているし、今だって好きな女の子と帰っているのだから。
「せんぱぁい、また難しいこと考えてるんでしょー?」
アユミは僕の手に指を絡めて、きゅっと握ってくる。最近はもうそれくらいでは動じなくなった僕は、軽く握り返してやる。アユミが幸せそうに笑う。
「いいんですよぉ、学生は恋愛する時代ですよ?」
まるで僕が考えていたことを当てるかのように、アユミが言った。
「だから、毎日こうしてあたしと歩くのも、学生を楽しむために必要なことなんです」
「楽しむため、ねえ」
「そぉです、学生は一回しかないんですから。転職とか普通ないですから、がんがん楽しまなきゃ損ですよぉ」
なんだかうまく言いくるめられているような気がする。学生の本分は恋愛だ、と言われている気分になる。
僕はアユミと二人で歩きながら、駅前に向かっていく。今日の目的地はどこなのだろうか。いつも帰りの寄り道はアユミの気分で決められる。アユミの家に直行する日もあれば、ファミレスやカラオケに行くこともある。だから、僕は今の行き先を知らないまま歩いている。
とりあえず駅前に向かっているようだから、アユミの家に行くということはないだろう。僕は残念なような、ほっとしたような、複雑な気持ちを抱く。
「せんぱい、ファミレス行きましょ。あたしポテト食べたーい」
「はいはい」
僕は抗うこともないままに、アユミと二人でファミレスに入る。この時間は学生の姿が多い。みんな、僕たちと同じように学校帰りに寄っているのだろう。
席に通され、ボックス席に座る。普通、二人だったら向かい合わせに座ると思うのだが、アユミは僕の隣に座る。結果、片側が空くという謎の現象が起きる。
毎度言っているから無駄だと思いながらも、僕はアユミに疑問をぶつけた。
「なんであっち座らないの?」
「あっちじゃせんぱいが遠いでしょ。あたしはせんぱいといちゃいちゃしたくてファミレスに来てるんですから、これくらい近くないと意味ないです」
アユミはさも当然というように言い切った。ここまで堂々と言われると、こちらが間違っているような気がしてくる。
いや、別に、向かい側の席でもいちゃいちゃできると思うんだけど。そういうわけにはいかないんだろうな。
不思議そうに僕たちを見る店員にアユミが注文して、店員が去ってから、アユミは僕に寄り添ってくる、
「ほら、あっちじゃせんぱいが遠いでしょ?」
「ああ、まあ、なるほどねえ」
「だからこっちに座るんですよー。わかっていただけましたぁ?」
「わかったわかった。わかったから、離れて」
周りを見てみても、アユミみたいにべったりと彼氏にくっついている女子生徒はいない。みんな節度あるお付き合いをしている。まるで僕たちだけが不純な付き合いをしている気分になる。
けれど、アユミは不満げに唇を尖らせた。
「適当に話合わせないでください。わかってないでしょー」
「わかったよ。とにかく、アユミはアユミなりの理由があってそうしているんだろう」
僕が理解できたのはそこまでだった。あとはもう、わからない。アユミがそうしたいならそうすればいいや。僕もアユミに触れることが許されるんだし、悪いことはないのだ。
「わかったなら、離れなくてもいいですよねっ」
「ああ、うん、いいよ」
「ふふん、あたしの恋心の勝利ですね」
アユミは勝ち誇った顔をして、僕の肩に頭をもたれさせる。ふわり、と髪から良い匂いが漂ってくる。その香りを嗅ぐと気持ちが安らぐくらいには、僕も変態に片足を突っ込んでいるようだ。
注文したフライドポテトを店員が運んでくる。学生カップルなど見慣れているのだろう、動じることもなくテーブルに置いて去っていった。僕たちみたいなカップルなんて毎日見ているんだろうな。大変な仕事だ。
「さ、食べましょ。せんぱい、あーんして」
「ええ? やだよ、恥ずかしい」
「いいじゃないですかぁ。ほら、あーん」
アユミが口を開ける。妙に扇状的に感じてしまうのは、きっと僕が汚れているからだろう。
やむなく、僕はポテトフライを摘んでアユミの口の中に入れた。アユミが嬉しそうな顔をして食べる。
「せんぱいにもやってあげましょうか?」
「いらないよ。僕は自分で食べられる」
「なぁんだ。おいしいですよ、あーんして食べるのも」
僕は抵抗を示すため、自分の手で摘んでポテトフライを食べた。程良い塩味が口の中に広がる。
「せんぱい、もう一回」
「却下」
「えぇー? ひどぉい」
アユミはころころと笑い、ポテトフライを摘んで食べた。元から僕がやるとは思っていなかったのだろう。
「あ、そぉいえば駅ビルの中に新しいお店ができたらしいですよ」
アユミの興味はそちらに流れていく。もともと興味が移るのが早い子だ。スマートフォンで検索を始めている。
僕はポテトフライを食べながら、アユミの言葉を待つ。
こんな日々がいつまでも続けばいいと思った。せめて、僕が卒業するまでは。
決して、学校帰りに寄り道したりとか、恋愛に浮かされたりとか、そういうことをしてはいけない。青春だと言うけれど、学生は勉強することが仕事なのだから、青春は二の次であるべきなのだ。
と、僕は思っている。思っているだけだが。
だって、僕は毎日寄り道しているし、今だって好きな女の子と帰っているのだから。
「せんぱぁい、また難しいこと考えてるんでしょー?」
アユミは僕の手に指を絡めて、きゅっと握ってくる。最近はもうそれくらいでは動じなくなった僕は、軽く握り返してやる。アユミが幸せそうに笑う。
「いいんですよぉ、学生は恋愛する時代ですよ?」
まるで僕が考えていたことを当てるかのように、アユミが言った。
「だから、毎日こうしてあたしと歩くのも、学生を楽しむために必要なことなんです」
「楽しむため、ねえ」
「そぉです、学生は一回しかないんですから。転職とか普通ないですから、がんがん楽しまなきゃ損ですよぉ」
なんだかうまく言いくるめられているような気がする。学生の本分は恋愛だ、と言われている気分になる。
僕はアユミと二人で歩きながら、駅前に向かっていく。今日の目的地はどこなのだろうか。いつも帰りの寄り道はアユミの気分で決められる。アユミの家に直行する日もあれば、ファミレスやカラオケに行くこともある。だから、僕は今の行き先を知らないまま歩いている。
とりあえず駅前に向かっているようだから、アユミの家に行くということはないだろう。僕は残念なような、ほっとしたような、複雑な気持ちを抱く。
「せんぱい、ファミレス行きましょ。あたしポテト食べたーい」
「はいはい」
僕は抗うこともないままに、アユミと二人でファミレスに入る。この時間は学生の姿が多い。みんな、僕たちと同じように学校帰りに寄っているのだろう。
席に通され、ボックス席に座る。普通、二人だったら向かい合わせに座ると思うのだが、アユミは僕の隣に座る。結果、片側が空くという謎の現象が起きる。
毎度言っているから無駄だと思いながらも、僕はアユミに疑問をぶつけた。
「なんであっち座らないの?」
「あっちじゃせんぱいが遠いでしょ。あたしはせんぱいといちゃいちゃしたくてファミレスに来てるんですから、これくらい近くないと意味ないです」
アユミはさも当然というように言い切った。ここまで堂々と言われると、こちらが間違っているような気がしてくる。
いや、別に、向かい側の席でもいちゃいちゃできると思うんだけど。そういうわけにはいかないんだろうな。
不思議そうに僕たちを見る店員にアユミが注文して、店員が去ってから、アユミは僕に寄り添ってくる、
「ほら、あっちじゃせんぱいが遠いでしょ?」
「ああ、まあ、なるほどねえ」
「だからこっちに座るんですよー。わかっていただけましたぁ?」
「わかったわかった。わかったから、離れて」
周りを見てみても、アユミみたいにべったりと彼氏にくっついている女子生徒はいない。みんな節度あるお付き合いをしている。まるで僕たちだけが不純な付き合いをしている気分になる。
けれど、アユミは不満げに唇を尖らせた。
「適当に話合わせないでください。わかってないでしょー」
「わかったよ。とにかく、アユミはアユミなりの理由があってそうしているんだろう」
僕が理解できたのはそこまでだった。あとはもう、わからない。アユミがそうしたいならそうすればいいや。僕もアユミに触れることが許されるんだし、悪いことはないのだ。
「わかったなら、離れなくてもいいですよねっ」
「ああ、うん、いいよ」
「ふふん、あたしの恋心の勝利ですね」
アユミは勝ち誇った顔をして、僕の肩に頭をもたれさせる。ふわり、と髪から良い匂いが漂ってくる。その香りを嗅ぐと気持ちが安らぐくらいには、僕も変態に片足を突っ込んでいるようだ。
注文したフライドポテトを店員が運んでくる。学生カップルなど見慣れているのだろう、動じることもなくテーブルに置いて去っていった。僕たちみたいなカップルなんて毎日見ているんだろうな。大変な仕事だ。
「さ、食べましょ。せんぱい、あーんして」
「ええ? やだよ、恥ずかしい」
「いいじゃないですかぁ。ほら、あーん」
アユミが口を開ける。妙に扇状的に感じてしまうのは、きっと僕が汚れているからだろう。
やむなく、僕はポテトフライを摘んでアユミの口の中に入れた。アユミが嬉しそうな顔をして食べる。
「せんぱいにもやってあげましょうか?」
「いらないよ。僕は自分で食べられる」
「なぁんだ。おいしいですよ、あーんして食べるのも」
僕は抵抗を示すため、自分の手で摘んでポテトフライを食べた。程良い塩味が口の中に広がる。
「せんぱい、もう一回」
「却下」
「えぇー? ひどぉい」
アユミはころころと笑い、ポテトフライを摘んで食べた。元から僕がやるとは思っていなかったのだろう。
「あ、そぉいえば駅ビルの中に新しいお店ができたらしいですよ」
アユミの興味はそちらに流れていく。もともと興味が移るのが早い子だ。スマートフォンで検索を始めている。
僕はポテトフライを食べながら、アユミの言葉を待つ。
こんな日々がいつまでも続けばいいと思った。せめて、僕が卒業するまでは。
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