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(55)お口、あーん
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「たっだいまー!もう少し待ってねっ」
ユウの元気な声が、響く。
俺は、寿司だけでは物足りなさそうな5人の顔を思い浮かべて、付け合せを作る事にした。
寿司屋の道路を挟んだ向かいには、スーパーがあったので材料を買ってきたのだ。
買い物から帰ると、俺はキッチンへ。そしてユウはダイニングへと分かれた。
暫く経ち、味見をしようとしたら声を掛けられた。
「何を作ってるの?」
ビクッとして、味見をしようと箸で摘まんだまま振り返ると、副会長が立ってる。
「あ、味見をしようと思って…」
そう言うと、副会長は口を開けてきた。
「あーん…」
え、これって…。勇気を振り絞り、副会長の口に箸を入れた。
「は、はい。あーん…」
「んっ」
もぐもぐっ…と口を動かしては「美味いっ!」と言ってくれた。
「ユウは揚げ物ってしないんだよ。だから嬉しいな。」
「揚げ物って難しいですからね。」
「寿司があるのに、作るって…」
「だって、野菜類無いですよ。だから作ってるんです。」
「コウキは良い奥さんになるね。」
「男ですっ…」
副会長は、そこを動いてくれない。
動いてるのは、口だけだ。
「手際が良いね。何か手伝うよ。」
「その気持ちだけ、受け取っておきます。」
「え、なんで?」
「ユウから聞いてます。『手伝う』という言葉には、騙されないようにって。」
「え…、なにそれ?」
違う声が割って入ってきた。
「それは、お前等2人が壊し魔だからだろう。」
「誰が壊し魔…」
そう言って、副会長は父親である宮田先生を睨んでいる。
でも、先生はあっさりと受け流している。
「ほー。自覚のない壊し魔だな。」
そう言うと、先生は俺に向かって言ってきた。
「出来上がったの、持って行くぞ。」
「はい。こっちの鍋は出来上がってます。」
鍋の中を覗いたのだろう。嬉しそうな声が聞こえる。
「寿司と言えば、これだな。御汁。しかも鯛だ。」
「はい、寿司屋さんで鯛のアラを頂いたんです。」
「買いに行かせて良かった。」
昼間っから豪勢だなー。
買い物上手と料理上手の2人に、壊し魔2人。2対2であいこか♪
その楽しそうな鼻歌に、俺は笑っていた。
副会長は呆れてるのか、怒っているのか分からない口調で言ってくる。
「そこ。笑えるほどのモノではないだろっ。」
「だって…、だって……」
ユウの声もする。
「コウキ。お父ちゃんの言葉に一々笑わないで。あれが素なんだから。」
でも、俺は言っていた。
「楽しいっ。」
副会長とユウは驚いた声を出してくる。
「へっ?」
「あれが楽しい?」
「うん。楽しいよ。」
ユウは頭を横に振りながらキッチンに入ってくる。
「他にも、出来た物は?」
「揚げ物は、全部出来たよ。大皿とか有れば良いのだけど…」
「みんな客ではないから、このままで良いよ。」
そのユウの言葉に、声がした。
「ちょっと、誰が客ではないってぇ…」
高田先輩の声だ。
「テルさん、ちょうど良かった。はい、これ。まだ2つあるから。」
「人使いの荒い弟だねー」
「テルさんの弟ではないけど?」
クスクスっと笑いながら、向井先輩が声を掛けてくる。
「持って行くよ。手伝わないと、後が怖そうだ。」
「それでは、これをお願いします。」
そう言って、1つを渡して、俺も残り1つを持って行った。
そして味見をしてないのが、もう一品。
すぐにキッチンに戻って味見しようとしていた。
副会長は、俺に声を掛けてくる。
「コウキは、本当によく働くな。」
でも、俺は味付けに忙しくて、相手にしてなかった。
副会長は、なおも言ってくる。
「コウキ?」
「待ってください。あとは、この味付けだけ・・」
「味見してやるっ」
「はい。お願いします。」
そう言った俺は、スプーンにポテトサラダを乗せて、副会長の口の中に突っ込んだ。
だって、高田先輩が見てるんだもの。
アーンなんて、できっこない。
「ぐっ…、おま・・」
あら、咽ちゃった?
突っ込みすぎたかな…。
高田先輩は笑ってる。
「ふふふっ…。わーははははっ!!」
「テルゥー…」
「いいねぇ、この漫才コンビ…。はははっ…」
なにやら、この夏は楽しみな時間を過ごしそうだ。
ユウの元気な声が、響く。
俺は、寿司だけでは物足りなさそうな5人の顔を思い浮かべて、付け合せを作る事にした。
寿司屋の道路を挟んだ向かいには、スーパーがあったので材料を買ってきたのだ。
買い物から帰ると、俺はキッチンへ。そしてユウはダイニングへと分かれた。
暫く経ち、味見をしようとしたら声を掛けられた。
「何を作ってるの?」
ビクッとして、味見をしようと箸で摘まんだまま振り返ると、副会長が立ってる。
「あ、味見をしようと思って…」
そう言うと、副会長は口を開けてきた。
「あーん…」
え、これって…。勇気を振り絞り、副会長の口に箸を入れた。
「は、はい。あーん…」
「んっ」
もぐもぐっ…と口を動かしては「美味いっ!」と言ってくれた。
「ユウは揚げ物ってしないんだよ。だから嬉しいな。」
「揚げ物って難しいですからね。」
「寿司があるのに、作るって…」
「だって、野菜類無いですよ。だから作ってるんです。」
「コウキは良い奥さんになるね。」
「男ですっ…」
副会長は、そこを動いてくれない。
動いてるのは、口だけだ。
「手際が良いね。何か手伝うよ。」
「その気持ちだけ、受け取っておきます。」
「え、なんで?」
「ユウから聞いてます。『手伝う』という言葉には、騙されないようにって。」
「え…、なにそれ?」
違う声が割って入ってきた。
「それは、お前等2人が壊し魔だからだろう。」
「誰が壊し魔…」
そう言って、副会長は父親である宮田先生を睨んでいる。
でも、先生はあっさりと受け流している。
「ほー。自覚のない壊し魔だな。」
そう言うと、先生は俺に向かって言ってきた。
「出来上がったの、持って行くぞ。」
「はい。こっちの鍋は出来上がってます。」
鍋の中を覗いたのだろう。嬉しそうな声が聞こえる。
「寿司と言えば、これだな。御汁。しかも鯛だ。」
「はい、寿司屋さんで鯛のアラを頂いたんです。」
「買いに行かせて良かった。」
昼間っから豪勢だなー。
買い物上手と料理上手の2人に、壊し魔2人。2対2であいこか♪
その楽しそうな鼻歌に、俺は笑っていた。
副会長は呆れてるのか、怒っているのか分からない口調で言ってくる。
「そこ。笑えるほどのモノではないだろっ。」
「だって…、だって……」
ユウの声もする。
「コウキ。お父ちゃんの言葉に一々笑わないで。あれが素なんだから。」
でも、俺は言っていた。
「楽しいっ。」
副会長とユウは驚いた声を出してくる。
「へっ?」
「あれが楽しい?」
「うん。楽しいよ。」
ユウは頭を横に振りながらキッチンに入ってくる。
「他にも、出来た物は?」
「揚げ物は、全部出来たよ。大皿とか有れば良いのだけど…」
「みんな客ではないから、このままで良いよ。」
そのユウの言葉に、声がした。
「ちょっと、誰が客ではないってぇ…」
高田先輩の声だ。
「テルさん、ちょうど良かった。はい、これ。まだ2つあるから。」
「人使いの荒い弟だねー」
「テルさんの弟ではないけど?」
クスクスっと笑いながら、向井先輩が声を掛けてくる。
「持って行くよ。手伝わないと、後が怖そうだ。」
「それでは、これをお願いします。」
そう言って、1つを渡して、俺も残り1つを持って行った。
そして味見をしてないのが、もう一品。
すぐにキッチンに戻って味見しようとしていた。
副会長は、俺に声を掛けてくる。
「コウキは、本当によく働くな。」
でも、俺は味付けに忙しくて、相手にしてなかった。
副会長は、なおも言ってくる。
「コウキ?」
「待ってください。あとは、この味付けだけ・・」
「味見してやるっ」
「はい。お願いします。」
そう言った俺は、スプーンにポテトサラダを乗せて、副会長の口の中に突っ込んだ。
だって、高田先輩が見てるんだもの。
アーンなんて、できっこない。
「ぐっ…、おま・・」
あら、咽ちゃった?
突っ込みすぎたかな…。
高田先輩は笑ってる。
「ふふふっ…。わーははははっ!!」
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なにやら、この夏は楽しみな時間を過ごしそうだ。
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