恋人は副会長

福山ともゑ

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(61)豪勢な朝食

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 「起きて…」

 「ん…」

誰かに身体を揺さぶられている。
でも、まだ眠い。
 「コウキ…」
 「ん…、おやしゅ・・」

ガリッ。
 「みっ!」

 「朝早く起こして悪いが、約束してくれた事はして。」
ねっ、と微笑んできたのは副会長。
そういえば、朝飯と弁当を作って欲しいと、言われたっけ。
 「こういう起こし方はしないで下さいね…」
と、パジャマ代わりのTシャツの胸部分を擦りながらキッチンに行き朝食を先に作って、差し出してくれた弁当箱に入れてやる。
副会長は嬉しそうに食べてる。
 「嬉しいね。ユウとは違って、具だくさんの味噌汁。」
 「夏とは言え、こんな早朝は寒いですからね。」

宮田先生の声が聞こえてきた。
 「悪い、悪い…って、ああ、コウキが作ってくれてたのか。」
副会長は、父である宮田先生に言っていた。
 「昨日のアレで、起きてこないだろうなって思ったからね。」

俺は、副会長に渡した。
 「はい、出来ました。」
サンキュ、と言って弁当箱を受け取った副会長は、腕時計を見て出掛けようとする。
その副会長に、俺は声を掛けた。
 「行ってらっしゃい。」
 「行ってきます。」
と、俺の顔を見て言ってくれた。
なんか、こういうのって嬉しいな。


宮田先生の声が聞こえてくる。
 「コウキ、これって…」

振り返ると、先生はキッチンに入ってテーブルの上に並んでる皿を見ている。
 「あ、まだ早い時間ですけど、弁当と一緒に作ったので朝食にどうかな、と思って…。」
味見、と言っては先生は唐揚げを口にした。
 「うん、美味いっ!醤油とゴマ油の香ばしい味だ。」
嬉しくなり、俺は皿にラップを掛けて冷蔵庫に入れていった。
 「朝食は何時ですか?」
 「休みの日は、8時位かな…」
 「二度寝して良いですか?」
 「ああ、良いよ。早起き、お疲れさん。」


iPhoneを7時40分にアラームセットして、二度寝に入った。
8時ちょっと前にキッチンに上がると、まだ誰も下りてないみたいだ。
味噌汁の鍋を火に掛け、ポテトサラダと唐揚げも温め直す。
目玉焼きも付けるか、と考えていたら足音が聞こえた。

一番先に下りてきたのは先生だ。
 「早いな。」
 「でも、少し前に上がってきたばかりですよ。」
残り3人に声掛けてくる。
そう言って、先生は階段を上がって行った。

先に3階に行ったのだろう。
高田先輩の声がする。
 「すぐ下りますっ!」

最後に2階、ユウの部屋。
ドンドンッ!
 「ユウ、起きてるか?」

ドンドンッ!
 「朝飯だっ!」
ユウの声が、1階まで響いてくる。
 「煩いっ!」
 「ユウ」
 「要らな」
 「コウキが作ってくれたぞ。」



バタンッ!
ドアとのぶつかりを避けてくれた父親を睨みながら、ユウは言っていた。
 「それ、早く言ってよねっ!」

ばたばたばたばたっ…。
賑やかな足音と声が聞こえてくる。
 「おっはよー、コウキ!」
 「おはよ、ユウ。」
 「朝から豪勢だねぇ。」
 「副会長の弁当作ったから…」
 「あー、忘れてたよ。」

いや、その顔を見ると分かるよ。
作る気無かっただろう。


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