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(25)告白する
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ユタカから意外な言葉を聞いた。
「なんで…。死んだと聞いたのに……」
ビックリして自分の耳を疑ってしまった。
なに言ってるんだ、こいつは。
そう思ってたら、ユタカは続けて言ってくれる。
「事故に遭い、ヤブに頭を50縫われ、その間に息の根が止まった、って…」
50?
「…トモ?どした?しかも、その顔…、変形してない?それに、それってメガネ…?」
ヤブに50だと?
額に手を当て俯いてた私は、溜息をつくと顔を上げてユタカをギロッと睨みながら訂正してやる。
「1回しか言わないからな。
私は事故に遭い、名医に15針縫ってもらい成功した。そして、入院中に息の根が止まる前に母親の歌う声で、この世に引き戻された」
「えっ、あれ…、50じゃないの?」
「誰だ、そんなデマ飛ばしたのは…」
すると、こう返してきた。
「それは、紙だよ。fiftyって書いてあったらしい」
「fifty?fifteenーだ!」
片眉を吊り上げて怒鳴っていたが、カズキの事をしないと。
「それよりも、さっき言った件」
「はい、ラジャです」
ああ、そうだ。
「ユタカ…」
ん?と振り向いたユタカは、晴れ晴れとした表情になっていた。
私が生きてる事が、そんなに嬉しいのか。
そう思うと私も嬉しくなってくる。
だから、ユタカに言ってやった。
「私の事は訂正しなくていいからな。そのまま死んだことにすれば良い」
「OK!生きてると分かったら、めんどくさいことになりそうだよな」と返ってきた。
「あっ、そうだ。カズキに…」
「あいつは知ってる。さっき、テレビでシンガポールの銃撃戦を見て倒れた」
なるほど、そういう事ね…と呟きながら「ギャラは、トモの手料理で」と、言ってきた。
「シンガポールには、コンピューターバカと呼ばれてる奴がいる。随分危険な人物なんだが」
「誰?」
耳元で言ってやる。
「シンガポールマフィアのドンの秘書をやっている。フィルだ」と。
エッ!!
目をぱちくりしていたが、やがて溜息と共に「あいつか…」と小声で言ってきた。
知り合いなのか、それは良かった。
ユタカの後ろ姿に声を掛けてやった。
前払いとして、三日後にフルコース作ってやる、と。
ユタカは、片手を上げて了解の合図をしてきた。
その夜。
博人さんは、急いで帰ってきたらしい。
なにしろ、私より早く家にいたもの。
私は、今日のことを博人さんに言った。
そして、勇気を出して告白した。
「博人さん。私にとって貴方は居なくてはならない存在だ。
私の…、私のそばに居てくれる?」
博人さんは、優しく微笑んでくれた。
「もちろん、私も同じ気持ちだよ」
博人さんは、私を抱きしめてくれては、言い続けてくれる。
「トモ。私はね、最初は迷ったんだ。一番最初に迷ったのは、福岡で会った時だ」
博人さんは言い続けてくれた。
いや、私に告白してくれた。
そうしたら、大学卒業した後の事故に触れてきた。
「あの時、トモに渡したよな。退院した時に、卒業祝いと退院祝いとを称して。
また、あれを付けて見せて欲しい」
う……。
アレは、似合わないかと思うんだけど…。
言い渋っていたら、今度はシンガポールでのアノ事件に触れてきた。
「あの時は、左目を失明してたなんて知らなかった。
知ってたら病室でセックスはしなかったよ。静かに寝させてた。
で、パースに行くかどうするかは、そんなに迷わなかった。
ここに来るということは、あの病院を捨てるという事と同意語だけど、少し考えただけだ。
おそらく、今は…、あの病院は潰れてるだろう。
建物名義はあいつの名前に変更したが、土地はお爺様名義だ。
差し押さえになっても、あの土地は差し押さえの対象にはならない」
そこまで言うと、口を閉じては遠い目をしていた。
たぶん、自分が院長として働いてた病院の事を思い出してるのだろう。
もしかして、私はあそこの病院を潰させてしまったのか?
自分が入院していた病院を。
そう思っていたら、声が聞こえてきた。
「まあ、私はボスという器ではなかったからな。
なにしろ、お飾りの院長だった。
そこに居るだけで、座ってるだけで良かったんだから。
体格が良いし、『私はボスだ』というオーラを出してれば、それだけで良いと言われてたからな。
その証拠に…すぐに、院長として立候補してくれたよ。
内科から3人も…。
私を追い出したくてウズウズしていた連中だ。
良いチャンスだと、思ったんだろうよ。
だから、トモは気にしなくていい。
私は、ドイツでは専門しかしなかったから。
今のような『何処吹く風』のように、契約してる病院を中心に他の病院にヘルプとしてオペをしてる方が私的には良いんだよ」
その言葉は嘘でない、というのが表情から読み取れる。
「なんで…。死んだと聞いたのに……」
ビックリして自分の耳を疑ってしまった。
なに言ってるんだ、こいつは。
そう思ってたら、ユタカは続けて言ってくれる。
「事故に遭い、ヤブに頭を50縫われ、その間に息の根が止まった、って…」
50?
「…トモ?どした?しかも、その顔…、変形してない?それに、それってメガネ…?」
ヤブに50だと?
額に手を当て俯いてた私は、溜息をつくと顔を上げてユタカをギロッと睨みながら訂正してやる。
「1回しか言わないからな。
私は事故に遭い、名医に15針縫ってもらい成功した。そして、入院中に息の根が止まる前に母親の歌う声で、この世に引き戻された」
「えっ、あれ…、50じゃないの?」
「誰だ、そんなデマ飛ばしたのは…」
すると、こう返してきた。
「それは、紙だよ。fiftyって書いてあったらしい」
「fifty?fifteenーだ!」
片眉を吊り上げて怒鳴っていたが、カズキの事をしないと。
「それよりも、さっき言った件」
「はい、ラジャです」
ああ、そうだ。
「ユタカ…」
ん?と振り向いたユタカは、晴れ晴れとした表情になっていた。
私が生きてる事が、そんなに嬉しいのか。
そう思うと私も嬉しくなってくる。
だから、ユタカに言ってやった。
「私の事は訂正しなくていいからな。そのまま死んだことにすれば良い」
「OK!生きてると分かったら、めんどくさいことになりそうだよな」と返ってきた。
「あっ、そうだ。カズキに…」
「あいつは知ってる。さっき、テレビでシンガポールの銃撃戦を見て倒れた」
なるほど、そういう事ね…と呟きながら「ギャラは、トモの手料理で」と、言ってきた。
「シンガポールには、コンピューターバカと呼ばれてる奴がいる。随分危険な人物なんだが」
「誰?」
耳元で言ってやる。
「シンガポールマフィアのドンの秘書をやっている。フィルだ」と。
エッ!!
目をぱちくりしていたが、やがて溜息と共に「あいつか…」と小声で言ってきた。
知り合いなのか、それは良かった。
ユタカの後ろ姿に声を掛けてやった。
前払いとして、三日後にフルコース作ってやる、と。
ユタカは、片手を上げて了解の合図をしてきた。
その夜。
博人さんは、急いで帰ってきたらしい。
なにしろ、私より早く家にいたもの。
私は、今日のことを博人さんに言った。
そして、勇気を出して告白した。
「博人さん。私にとって貴方は居なくてはならない存在だ。
私の…、私のそばに居てくれる?」
博人さんは、優しく微笑んでくれた。
「もちろん、私も同じ気持ちだよ」
博人さんは、私を抱きしめてくれては、言い続けてくれる。
「トモ。私はね、最初は迷ったんだ。一番最初に迷ったのは、福岡で会った時だ」
博人さんは言い続けてくれた。
いや、私に告白してくれた。
そうしたら、大学卒業した後の事故に触れてきた。
「あの時、トモに渡したよな。退院した時に、卒業祝いと退院祝いとを称して。
また、あれを付けて見せて欲しい」
う……。
アレは、似合わないかと思うんだけど…。
言い渋っていたら、今度はシンガポールでのアノ事件に触れてきた。
「あの時は、左目を失明してたなんて知らなかった。
知ってたら病室でセックスはしなかったよ。静かに寝させてた。
で、パースに行くかどうするかは、そんなに迷わなかった。
ここに来るということは、あの病院を捨てるという事と同意語だけど、少し考えただけだ。
おそらく、今は…、あの病院は潰れてるだろう。
建物名義はあいつの名前に変更したが、土地はお爺様名義だ。
差し押さえになっても、あの土地は差し押さえの対象にはならない」
そこまで言うと、口を閉じては遠い目をしていた。
たぶん、自分が院長として働いてた病院の事を思い出してるのだろう。
もしかして、私はあそこの病院を潰させてしまったのか?
自分が入院していた病院を。
そう思っていたら、声が聞こえてきた。
「まあ、私はボスという器ではなかったからな。
なにしろ、お飾りの院長だった。
そこに居るだけで、座ってるだけで良かったんだから。
体格が良いし、『私はボスだ』というオーラを出してれば、それだけで良いと言われてたからな。
その証拠に…すぐに、院長として立候補してくれたよ。
内科から3人も…。
私を追い出したくてウズウズしていた連中だ。
良いチャンスだと、思ったんだろうよ。
だから、トモは気にしなくていい。
私は、ドイツでは専門しかしなかったから。
今のような『何処吹く風』のように、契約してる病院を中心に他の病院にヘルプとしてオペをしてる方が私的には良いんだよ」
その言葉は嘘でない、というのが表情から読み取れる。
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