アゲインスト・レグナ

神猫

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<Chapter1>始動

<1-4>変わらないもの

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コツ、コツ・・・・

廊下・・・という場所であったはずの空間にローファーの靴底からなる音が響く。
なぜ廊下と言えないのかは、その空間があまりにも広すぎるからだ。
早く登校しすぎたためか、人の気配が全く感じられず、静まり返った場所を奏翔は歩いていた。
時間にすると30分ほど・・・

「・・・ってどんだけ広いんだよこの校舎!?」

あまりの広さについに耐えきれなくなった奏翔は叫ぶが、その叫びは誰かに届くことなく、廊下の先へ先へと、やまびこのように反響していく。

本来の校舎であったならば、もうとっくに教室について、席に座り、持て余した時間を使って二度寝でもしていたはずだったのだが、豪邸へと変化を遂げてしまった奏翔の学校は迷宮のようになっており、奏翔はそれにまんまと嵌り、ずっと迷っていた。

豪邸となった校舎は、廊下からがらりと変わってしまっていた。
元はコンクリートだったはずの地面は、大理石だいりせきになっていて、廊下で転びでもした生徒への殺人性能を高めており、窓はアーチ状になっている。白色のドアは、あまり変わっていなかったが、見ただけでも前よりも質のいい物へとなっていた。

そして、奏翔は自分のクラスだったはずの1年4組を探しているのだが、その場所も以前とは変わってしまっていた。
前は1年生の教室なら1階にずらっと並んでいたはずが、現在は1年生の教室に横に3年生の教室があったりと、ごちゃ混ぜ状態になっていた。

それに、一つの教室から他の教室までが、やけに遠くもなっていた。
まだ奏翔は中に入っていないのでわからないが、中は相当広いようだ。
しかも、なによりも奏翔の頭を悩ませているのが、2階から3階へと上がったはずが1階へと戻ってしまっていたり、2階から1階へと降りたはずが、3階へと続いていたり、要するに空間がねじ曲がっているような形になってしまっていた。

全くどうなってるんだ、この校舎は?校門からも出られなかったし・・・

先ほど登校した時、奏翔は、この校舎が変わってしまったことに驚き、一度校門から出ようとしたのだが、そこには見えない壁か、何かがあり、出ることは叶わなかった。
よって、出口を失ったために、自分の教室へとただただ歩いていた。

誰か一人でもいてくれると助かるんだけどな・・・

叶わなさそうな願いをもって、奏翔はその後も歩き続けた。

*****

結論・・・誰もいなかった。
予想通り、教室の中はかなり広く、講堂レベルはあった。
あと、これも想像通り、今日は普段ある朝課外がない日であり、おそらく1時間以上も早く登校してしまっていた。
よって、自分の名前が書かれた席で一人、突っ伏してひたすら時間をつぶした。

気づくと、いつの間にか寝てしまっていたらしく、時刻は本来の登校目安時間である8時15分を指していた。
教室についていないといけない時間まではあと15分ほどあり、教室には少しずつ生徒が入ってきており、既に半数程度いた。
というのを、顔を少し上げて確認した奏翔は、再び机に突っ伏して、

「はぁ・・・」
大きなため息をついた。

あの夢は俺のじゃなかったのか・・・

教室に入ってくる生徒はいつも通りの顔ぶれであり、奏翔と同じく黒を基調としたブレザーに藍色あいいろのズボンという学校の制服を着ている生徒がほとんどだが、中にはブレザーを着ずに青色のローブをその上から来ている生徒もいた。
当然、過去にそんな物を着てくる生徒なんて奏翔の記憶にはない。

やはり、ここでも違っていた。
確実に前の世界とは違いが生まれている。

つまり奏翔は、あの少女から言われた通り、変革者たる者へとならないといけなくなったわけである。元から面倒ごとがあまり好きではない奏翔にとってみれば、いい迷惑であり、どう転んだとしても面倒なのである。

そのことを考えてしまったために、奏翔がまた深いため息をつくと、後ろからよく知っている声がかけられた。
「どうしたんだ?こんな朝っぱらから、そんなに元気失くしちゃって・・・まさかこの土日の間に恋人作って即効振られたのか!?お気の毒に・・・」
「・・・振られてもないし、作ってもいないから気遣うな」
顔をあげ、開口一言目からおかしなことを言いだす親友の方を向く。

奏翔に声をかけてきたのは、いかにも運動部に所属していそうな元気の良さがある整った顔立ちの黒髪の青年・・・
「名前は・・・何だっけ?」
「忘れんなよ!?桐嶋きりしま 正彰まさあきだよっ!」
「ああ、そういえばそんな感じだったな」
「そういえばって何だよ!?」
「人の頭の中を読むな」
「奏翔こそ、人を勝手に説明するなよ!?ってか誰に説明してたんだよ!」
「・・・あと、勘が良すぎる」
「続けるなーーーーっ!?」
という前の日常と変わらない下りをしたためか、奏翔の気分は少しだけ戻っていた。

ちなみに前の世界では、奏翔も桐嶋も部活には入っていなかった。

そうして、奏翔の慌ただしい一日は始まった・・・
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