死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた

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腕を斬り捨ててやる

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「男に暴力を振るったらダメ。捕まる」
「でも!」
「ねえ。わかって。我慢して。男の為なら多くの犯罪は見逃されるの。それが常識なのっ!」
「そんなのおかしいよ」

 言い合っている間に母親はもう一度蹴られてしまった。立ち上がろうとすると、男を護衛している一人の女性が剣を抜いて近寄る。

「ツエル様の邪魔をしたのだ。腕を斬り捨ててやる」

 冷たい目をして親子を見下ろしている。

 なぜ肉を買っていただけで、こんな理不尽を受けなければいけないんだろう。おかしい。許せない。

「ダメー!」

 母親を助けようとしたのか、子供が両腕を広げて間に立った。

 ピクリと、剣を持っている女性の腕が動く。

 危ない。と思ったときにはスキルを発動させていた。対象はレベッタさんとヘイリーさんだ。

 スキルブーストがかかって驚いたようで、二人の拘束力が弱まる。

「女性を助けるのであれば、問題ないですよね」

 全力で走り出す。護衛の女性は剣を振り上げたところで俺は子供を抱きしめる。間に合ったと安堵したが、危機は去っていない。

「何故、邪魔をする?」
「…………」

 男だとバレてはいけないので黙って睨みつけた。

 子供を後ろに回して守るように立つ。

「無視するとは良い度胸じゃないか」

 嗜虐的な笑みを浮かべた女性が剣を振り下ろした。

 金属音が鳴り響く。俺の頭に当たる直前で、ヘイリーさんの剣が間に入って守ってくれたのだ。

 ヘイリーさんは腕を振り上げて押し返すと、護衛の女性が後ろに下がる。

 母親はレベッタさんが立ち上がらせていたので、抱きかかえていた子供を向かわせた。

「お前たちッ!! 許さんッ!」

 二度も邪魔されて激怒した護衛の女性の目が光った。刀身に薄いオーラが発生する。

「あれはオーラブレードのスキル。私も対抗する」

 ヘイリーさんの目も光った。スキルを使ったのだろう。ブーストはかけたままだから、能力の底上げはできているはず。

「死ね!」

 オーラをまとった剣で突きを放ってきたので、ヘイリーさんはラウンドシールドで受け流す。護衛の女性はバランスを崩すことなく、今度は連続して斬りつけてくるが直撃はくらっていない。全ての攻撃を回避していた。

 ヘイリーさんのスキルは『動体視力強化』だと聞いていたけど、数秒先の未来を見ているように思える。事前に全ての動きを察知しているかのような動きなのだ。

「なんで当たらないっ!!」

 何度も攻撃しているのに回避されて怒りが高まっているのか、護衛の女性は息が荒くなり、苛立っている。このままならヘイリーさんは勝てそうだ。

 邪魔をしそうな男を見る。
 肉は買い終わっているみたいで、女性に荷物持ちをさせながら戦いを見物していた。

「勝てない……」

 息切れした護衛の女性は膝をついてしまう。
 足の筋肉に疲労が溜まったのか動けないようだ。

 これで騒動は終わりになればよかったんだが、ついに男が動き出す。

「弱い女はいらない。俺の元から離れろ」
「ツエル様! まだ私は負けていませんっ!」

 護衛の女性が叫んだが、男は話を聞いていない。無視されていた。

「見苦しいわよ。さっさと消えなさい」

 別の護衛が吐き捨てるように言うと、男は去って行った。

 逆上して襲ってくると思っていたから意外な行動だ。

「おっと。一つ忘れてた」

 男は立ち止まって振り返る。

「誰かこいつらの名前を知っているヤツはいるか?」

 男が周囲に問いかけるが誰も動かない。

 身内を売る人なんていないと安堵したが、護衛の女性はちがったようだ。男に耳打ちをしている。

「ヘイリーとレベッタか。有名な冒険者らしいな」

 男はニヤリと口角を上げて、悪意のこもった笑顔になる。

「お前達のことは衛兵に伝えておく。顔を隠している臆病者と一緒に、後で地獄を見させてやる」

 前言撤回。やっぱりコイツはクソ野郎だった。

 ヘイリーの動きを見て、残りの護衛を使っても勝てないと判断し、俺のことを見逃しているように演じつつ、衛兵隊を使うことにしたのだ。

 罪のない女性に暴力を振るったくせに。

 俺が教育してやるか?

 手を強く握りしめ、怒りに身を任せようとする。

 むにゅ。

 柔らかい感触が俺の頭を包み込んだ。

「落ち着いて。お姉さんは、笑っている方が好きだよ」

 レベッタさんが抱き付いたのだ。

 高ぶっていた感情が落ち着いていく。スキルを解除して力を抜いた。

「ありがとう。もう大丈夫です」
「よかった」

 安心したのかすぐに解放してくれた。

 残された護衛の女性が気になったので様子を見ると、呆然とした表情で座り込んでいる。ブツブツと何かを呟いているが俺には聞き取れない。

「可愛そうだとは思うけど、関わるのはよそうね」
「わかってます」

 レベッタさんに言われなくてもわかっている。性格の悪い男に付き従い、罪のない女性を斬ろうしたのだ。同情の余地はない。放置するべきだろう。

「多分、夜ぐらいに衛兵が来ると思うけど、私たちが対応するから。安心してね」
「ごめんなさい。また迷惑をかけてしまいました」
「ううん。気にしないで良いよ。私たちもムカついていたから」

 俺の行動を否定せずに全て肯定してくれる。油断したらダメ男になってしまいそうだ。レベッタさんの優しさに甘えるだけの男にはなりたくない。

「細かいことは後回しにして、家に帰ろっ!」

 レベッタさんに手を引かれて歩き出す。

 暴力が発生した現場を放置して良いのかな、なんて思いもしたが、ツエルは勝手に去ってしまったので問題はないだろう。

 宣言されたとおり、後で衛兵の誰かが来て事情徴収される流れになるはず。その時にちゃんと、俺たちは正しいことをしたんだって伝えればいいのだ。
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