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みんな仲良くしませんか?
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しばらくルアンナさんと談笑していたが、二階の騒動が収まる気配はなかった。
「安全そうなので帰りますね」
本当に様子を見に来ただけだったようで、紅茶を飲み終わったタイミングで席を立ってしまう。
「お騒がせしました」
「いえいえ、男性と一緒に紅茶が飲めて楽しかったです。またお邪魔しても良いですか?」
「もちろんです。いつでも歓迎しますよ」
「ありがとうございます」
といってルアンナさんは外に出て行ってしまった。玄関で見送った俺は再びソファに座る。
一人になったからか、より一層さわがしい声が聞こえるようになった。騒動の原因である俺が仲裁に入っても火に油を注ぐ行為だと思って放置していたが、そろそろ動こう。
階段をのぼって二階に行くと、ドアが開きっぱなしの部屋があった。中を覗けば四人が取っ組み合いをしている。殴り合いにはなっていないが、頬や服を引っ張り、足の関節をキメている。胸が見えそうになっているが気にしていないようだ。
声をかけずに開いているドアをコンコンと叩く。
四人の目が同時に俺を見た。
「みんな仲良くしませんか?」
意識して低い声を出したのが功を奏したのか、四人とも手をパッと離して立ち上がる。気まずそうな顔をしているが、怒りといった負の感情は吹き飛んでいるように感じた。
「イオ君は何か勘違いをしているよ。みんな仲良く遊んでた所だったんだよっ!」
四人を代表してレベッタさんが苦しい言い訳をしていた。目は泳いでいるし、俺を騙せるとは思っていないだろう。行き場のない俺を拾ってくれたときの、頼れるお姉さんといったイメージは完全に壊れてしまった。
だからといって別に幻滅したわけじゃない。
素の自分を出せるほど俺と仲が良くなったと思えば嬉しく感じる。
「そういうことにしておきますね」
「やったーっ! 大好きーーっ!」
手を広げて飛びついてきたので全身に力を入れて受け止めた。
「ずるい」
続いてヘイリーさん、メヌさんが続く。どさくさに紛れて尻を揉んでいるのはメヌさんだな。手の大きさからして間違いない。
竜人のアグラエルさんだけがベッドの影に隠れていた。顔を半分出して俺を見ているので、嫌われているわけではないのだろう。
「アグラエルさんは、こっちに来てくれないんですか?」
少なからず好意を抱いてもらっていると思っての発言したのだが、自意識過剰だっただろうか。動かないアグラエルさんをじっと見ながらそんなことを考えていた。
「来ないと後悔するよっ!」
レベッタさんが手招きをする。アグラエルさんは少しだけ体が出てきたが、それだけだ。じっと見ている。警戒心の強い猫みたいだな。
「もう、男になると奥手なんだからっ!」
俺から離れたレベッタさんがアグラエルさんの手を取って戻ってきた。顔を見てみると、目を伏せているが嫌そうにはしていない。
やはり恥ずかしいだけなのだろう。
顔を触ってから声をかける。
「俺のこと嫌いですか?」
「いえ……そんなことは……」
「だったら目を見てお話ししましょう」
「でも……」
まだ決心が付いてないようだ。少しだけ体が震えているようにも見える。嫌ってはいないが、何か理由があって近づけないのか。
今はこれ以上、踏み込むのはよそう。
「いつか俺の目を見て話せるようになってくれると嬉しいです」
手を離してから、ヘイリーさんとメヌさんを引き離す。
「これからのことについて少し話したいんです」
落ち着きを取り戻した彼女たちに、スキルの習熟度を上げたいこと、そのために一日でも早く冒険者として活動したいことを伝えると、今日であったばかりのアグラエルさん、メヌさんも賛成してくれた。
これで全員の賛同が得られたな。
ようやくヒモ生活を脱して、一人の人間として自立できそうだ。
* * *
女性の姿に変えてから革鎧と小さな盾、あとは大ぶりのナイフを身につけて、冒険者ギルドに入った。他の四人は使い込まれた武具を身につけているので、俺だけ駆け出し感が出ている。
「依頼ボードを見ようかっ!」
レベッタさんは羊皮紙が貼り付けられている壁に向かって行ってしまった。ものすごく張り切っているようである。
「私も行くね」
背中に大きいハンマーを背負ったメヌさんも慣れた様子で後に続く。二人とも自由だな。
ヘイリーさんは俺の後ろに立っていて周囲を鋭い目で見ている。体が触れてしまえば男バレてしまうので、ちょっかいをかけてくる人がいないか警戒しているのだろう。
「イオは行かないのか?」
女の姿になった途端、アグラエルさんは俺に近づけるようになった。目を合わせてくれるし普通に話せる。男の姿に慣れてなかったから挙動不審だったんだな。
ちゃんとコミュニケーションが取れるようになって安心した。
「人が多いので悩んでます」
依頼票の周辺は冒険者たちが密集しているので、幻で姿を変えているだけの俺が近づくと男バレの可能性がある。とはいえ、どんな依頼があるのか興味はあるので行ってみたい。
「だったら、私に任せて」
腹にアグラエルの尻尾が巻き付くと持ち上げられてしまう。さすがドラゴンの血を引いていると言われる種族である。力強い。
俺の体がアグラエルさんに密着すると、翼が体を覆い隠した。頭だけが出ている状態になる。
「これで安心だ」
確かに誰かが俺の体に触れる心配はない。完璧だろう……目立っていることを除いては!
冒険者達に笑われながら、依頼を見に行くことになってしまった。
「安全そうなので帰りますね」
本当に様子を見に来ただけだったようで、紅茶を飲み終わったタイミングで席を立ってしまう。
「お騒がせしました」
「いえいえ、男性と一緒に紅茶が飲めて楽しかったです。またお邪魔しても良いですか?」
「もちろんです。いつでも歓迎しますよ」
「ありがとうございます」
といってルアンナさんは外に出て行ってしまった。玄関で見送った俺は再びソファに座る。
一人になったからか、より一層さわがしい声が聞こえるようになった。騒動の原因である俺が仲裁に入っても火に油を注ぐ行為だと思って放置していたが、そろそろ動こう。
階段をのぼって二階に行くと、ドアが開きっぱなしの部屋があった。中を覗けば四人が取っ組み合いをしている。殴り合いにはなっていないが、頬や服を引っ張り、足の関節をキメている。胸が見えそうになっているが気にしていないようだ。
声をかけずに開いているドアをコンコンと叩く。
四人の目が同時に俺を見た。
「みんな仲良くしませんか?」
意識して低い声を出したのが功を奏したのか、四人とも手をパッと離して立ち上がる。気まずそうな顔をしているが、怒りといった負の感情は吹き飛んでいるように感じた。
「イオ君は何か勘違いをしているよ。みんな仲良く遊んでた所だったんだよっ!」
四人を代表してレベッタさんが苦しい言い訳をしていた。目は泳いでいるし、俺を騙せるとは思っていないだろう。行き場のない俺を拾ってくれたときの、頼れるお姉さんといったイメージは完全に壊れてしまった。
だからといって別に幻滅したわけじゃない。
素の自分を出せるほど俺と仲が良くなったと思えば嬉しく感じる。
「そういうことにしておきますね」
「やったーっ! 大好きーーっ!」
手を広げて飛びついてきたので全身に力を入れて受け止めた。
「ずるい」
続いてヘイリーさん、メヌさんが続く。どさくさに紛れて尻を揉んでいるのはメヌさんだな。手の大きさからして間違いない。
竜人のアグラエルさんだけがベッドの影に隠れていた。顔を半分出して俺を見ているので、嫌われているわけではないのだろう。
「アグラエルさんは、こっちに来てくれないんですか?」
少なからず好意を抱いてもらっていると思っての発言したのだが、自意識過剰だっただろうか。動かないアグラエルさんをじっと見ながらそんなことを考えていた。
「来ないと後悔するよっ!」
レベッタさんが手招きをする。アグラエルさんは少しだけ体が出てきたが、それだけだ。じっと見ている。警戒心の強い猫みたいだな。
「もう、男になると奥手なんだからっ!」
俺から離れたレベッタさんがアグラエルさんの手を取って戻ってきた。顔を見てみると、目を伏せているが嫌そうにはしていない。
やはり恥ずかしいだけなのだろう。
顔を触ってから声をかける。
「俺のこと嫌いですか?」
「いえ……そんなことは……」
「だったら目を見てお話ししましょう」
「でも……」
まだ決心が付いてないようだ。少しだけ体が震えているようにも見える。嫌ってはいないが、何か理由があって近づけないのか。
今はこれ以上、踏み込むのはよそう。
「いつか俺の目を見て話せるようになってくれると嬉しいです」
手を離してから、ヘイリーさんとメヌさんを引き離す。
「これからのことについて少し話したいんです」
落ち着きを取り戻した彼女たちに、スキルの習熟度を上げたいこと、そのために一日でも早く冒険者として活動したいことを伝えると、今日であったばかりのアグラエルさん、メヌさんも賛成してくれた。
これで全員の賛同が得られたな。
ようやくヒモ生活を脱して、一人の人間として自立できそうだ。
* * *
女性の姿に変えてから革鎧と小さな盾、あとは大ぶりのナイフを身につけて、冒険者ギルドに入った。他の四人は使い込まれた武具を身につけているので、俺だけ駆け出し感が出ている。
「依頼ボードを見ようかっ!」
レベッタさんは羊皮紙が貼り付けられている壁に向かって行ってしまった。ものすごく張り切っているようである。
「私も行くね」
背中に大きいハンマーを背負ったメヌさんも慣れた様子で後に続く。二人とも自由だな。
ヘイリーさんは俺の後ろに立っていて周囲を鋭い目で見ている。体が触れてしまえば男バレてしまうので、ちょっかいをかけてくる人がいないか警戒しているのだろう。
「イオは行かないのか?」
女の姿になった途端、アグラエルさんは俺に近づけるようになった。目を合わせてくれるし普通に話せる。男の姿に慣れてなかったから挙動不審だったんだな。
ちゃんとコミュニケーションが取れるようになって安心した。
「人が多いので悩んでます」
依頼票の周辺は冒険者たちが密集しているので、幻で姿を変えているだけの俺が近づくと男バレの可能性がある。とはいえ、どんな依頼があるのか興味はあるので行ってみたい。
「だったら、私に任せて」
腹にアグラエルの尻尾が巻き付くと持ち上げられてしまう。さすがドラゴンの血を引いていると言われる種族である。力強い。
俺の体がアグラエルさんに密着すると、翼が体を覆い隠した。頭だけが出ている状態になる。
「これで安心だ」
確かに誰かが俺の体に触れる心配はない。完璧だろう……目立っていることを除いては!
冒険者達に笑われながら、依頼を見に行くことになってしまった。
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