69 / 188
格好よかったです
しおりを挟む
「イオちゃんの事情は他国の騎士に関係ありませーーんっ! 黙っててくださいっ!」
理論もなにもないレベッタさんの発言に、ヘンリエッタさんは呆れた顔をしていた。随分と評価は下がってしまったとも浮けど、効果はあったはずだ。
正論で追及しようとしても突破できないとわかってくれただろう。
感情で考えて話す相手に議論なんて不可能。何を言っても本人以外はわからない反論をするだけだ。
「ふぅ」
息を吐くと同時にヘンリエッタさんから力が抜けた。
その隙を見計らったかのようにダークエルフのテレシアさんが提案する。
「お互いに詳しい事情が話せないんだ。このぐらいで引き下がってもらえないか?」
「だが護衛対象の情報は……」
「重要なのは分かるが、それは信頼関係を築いてからでも良いのでは? それに護衛対象の近くに住むんだ。毎日接していれば、すぐにでも分かるだろ」
「そう言われると反論しにくいな」
「では、この話題は終わりにしよう」
パンと軽く手を叩いてテレシアさんがまとめてしまった。
説得する相手が落ち着いたタイミングを見極めて落とし所を提案するなんてすごい。僕にはマネできないと思ってしまうのと同時に、頼りになるお姉さんだと感じる。
感動してじっーっと見つめていたら、テレシアさんが軽くウィンクしたので微笑んでしまった。それが良かったのだろうか、彼女も笑ってくれる。
短いやりとりだったけど、心が通じ合ったような不思議な感覚だった。
「これで顔合わせは終わりだ。私は五人を男性特区まで送り届けるから、後は任せた」
すっと立ち上がったテレシアさんが僕の手を取った。引っ張り上げられると腰に手が回る。一緒に部屋を出て行ってしまった。
「あーーーっ!」
突然の行動に反応が遅れたレベッタさんの叫んだ声が聞こえた。ドタドタと追ってくる足音が聞こえる。
「今日の私は役に立ったと思わないかい?」
周囲の騒動なんて気にしてない彼女は、体をピタリとつけながら聞いてきた。
「格好よかったです」
「そうか、君にはそう見えたか」
すごく満足そうな顔をしている。自尊心みたいなものが満たされたのかな。機嫌は良さそうだ。
なんて思っていたら、後ろからレベッタさんが飛びつき続いてヘイリーさんたちも来ると、テレシアさんから引き離そうとする。
「いたいですよ~」
お互いに譲らないので体が引き裂かれそうだ。きっと彼女たちは男を奪い合えとDNAに刻まれているのだろう。じゃないと今の状況は納得できないッ!
「おい。約束忘れるなよ。守らないのであれば私にも考えがあるぞ」
レベッタさんとヘイリーさんがピタリと止まると、僕から離れる。
「約束を破るつもりはないよ。みんなで仲良く帰ろーっ!」
「仲良く、大事」
二人とも態度を急変させてメヌさんとアグラエルさんを連れて先に行ってしまった。
どんな約束をしていたのか少しだけ気にあったけど、微笑んでいるテレシアさんの目がなにも聞くなと言っているように感じる。
「さぁ、私たちも行こう」
また腰に手を回され、僕たちは衛兵所から出て行くことにした。
* * *
「誰か、俺をここから出せッ! 俺はツエル様だぞッ!」
数日前に牢獄から出されたので解放されたと思ったのだが、今度は窓のない部屋に入れられている。拘束はされていないが、一歩も出ることは出来ず、不味い飯を食い続けるだけ。
子種を提供するようなこともなく、一日一日を無意味に過ごしている。
いつもどおり、どうでもいい女を痛めつけていただけなのに、どうして俺はこんな目に合わなければいけないのだ。悪いのはデカい胸をゆらすキモい女なのに。
近くにいたらイライラするんだから、暴力を振るうのが当然だ。男性は神によって特別な存在だと決められているのだから何をしても許される。
なのに拘束するなんて許せない!
絶対に抜け出して、後悔させてやる!
「早く出せ!」
ドアをガンガンと蹴っているが反応はない。近くに警備をしている女がいるはずなのに無視しやがって!
怒りにまかせて何度も蹴りつけるが、すぐに意気が上がってしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
疲れたので固い床に座るが、すぐに痛くなって横に倒れる。
汗で体が濡れていたこともあって体が冷えてきた。ブルブルと震えるが、誰も温めに来ない。
声を出すのも面倒になってきたので、じっと耐えているとドアが開いた。
「おい。飯だ」
トレーには湯気が出ているスープと、ふっくらとした白いパン。あとはステーキがある。飲み物としてはワインが用意されていた。
この俺の口に入れるにしては質素で量も少ないが、今は腹が空いている寒いので許してやろう。
すぐに食事を始める。
「食事を出されたらむさぼるように食べるとは……まるで豚だな」
飯を持ってきた女が何か言っていたようだが、食事に集中していたので聞き逃してしまった。
口の中に入れた肉を飲み込んでから質問しようと思ったのだが、ドアが閉まって姿が見えなくなる。
終わるのを待たずに出て行くなんて身勝手な女だ。俺が自由になれたときには、死ぬほど痛めつけてやる。男である俺にはその権利があるのだッ!
理論もなにもないレベッタさんの発言に、ヘンリエッタさんは呆れた顔をしていた。随分と評価は下がってしまったとも浮けど、効果はあったはずだ。
正論で追及しようとしても突破できないとわかってくれただろう。
感情で考えて話す相手に議論なんて不可能。何を言っても本人以外はわからない反論をするだけだ。
「ふぅ」
息を吐くと同時にヘンリエッタさんから力が抜けた。
その隙を見計らったかのようにダークエルフのテレシアさんが提案する。
「お互いに詳しい事情が話せないんだ。このぐらいで引き下がってもらえないか?」
「だが護衛対象の情報は……」
「重要なのは分かるが、それは信頼関係を築いてからでも良いのでは? それに護衛対象の近くに住むんだ。毎日接していれば、すぐにでも分かるだろ」
「そう言われると反論しにくいな」
「では、この話題は終わりにしよう」
パンと軽く手を叩いてテレシアさんがまとめてしまった。
説得する相手が落ち着いたタイミングを見極めて落とし所を提案するなんてすごい。僕にはマネできないと思ってしまうのと同時に、頼りになるお姉さんだと感じる。
感動してじっーっと見つめていたら、テレシアさんが軽くウィンクしたので微笑んでしまった。それが良かったのだろうか、彼女も笑ってくれる。
短いやりとりだったけど、心が通じ合ったような不思議な感覚だった。
「これで顔合わせは終わりだ。私は五人を男性特区まで送り届けるから、後は任せた」
すっと立ち上がったテレシアさんが僕の手を取った。引っ張り上げられると腰に手が回る。一緒に部屋を出て行ってしまった。
「あーーーっ!」
突然の行動に反応が遅れたレベッタさんの叫んだ声が聞こえた。ドタドタと追ってくる足音が聞こえる。
「今日の私は役に立ったと思わないかい?」
周囲の騒動なんて気にしてない彼女は、体をピタリとつけながら聞いてきた。
「格好よかったです」
「そうか、君にはそう見えたか」
すごく満足そうな顔をしている。自尊心みたいなものが満たされたのかな。機嫌は良さそうだ。
なんて思っていたら、後ろからレベッタさんが飛びつき続いてヘイリーさんたちも来ると、テレシアさんから引き離そうとする。
「いたいですよ~」
お互いに譲らないので体が引き裂かれそうだ。きっと彼女たちは男を奪い合えとDNAに刻まれているのだろう。じゃないと今の状況は納得できないッ!
「おい。約束忘れるなよ。守らないのであれば私にも考えがあるぞ」
レベッタさんとヘイリーさんがピタリと止まると、僕から離れる。
「約束を破るつもりはないよ。みんなで仲良く帰ろーっ!」
「仲良く、大事」
二人とも態度を急変させてメヌさんとアグラエルさんを連れて先に行ってしまった。
どんな約束をしていたのか少しだけ気にあったけど、微笑んでいるテレシアさんの目がなにも聞くなと言っているように感じる。
「さぁ、私たちも行こう」
また腰に手を回され、僕たちは衛兵所から出て行くことにした。
* * *
「誰か、俺をここから出せッ! 俺はツエル様だぞッ!」
数日前に牢獄から出されたので解放されたと思ったのだが、今度は窓のない部屋に入れられている。拘束はされていないが、一歩も出ることは出来ず、不味い飯を食い続けるだけ。
子種を提供するようなこともなく、一日一日を無意味に過ごしている。
いつもどおり、どうでもいい女を痛めつけていただけなのに、どうして俺はこんな目に合わなければいけないのだ。悪いのはデカい胸をゆらすキモい女なのに。
近くにいたらイライラするんだから、暴力を振るうのが当然だ。男性は神によって特別な存在だと決められているのだから何をしても許される。
なのに拘束するなんて許せない!
絶対に抜け出して、後悔させてやる!
「早く出せ!」
ドアをガンガンと蹴っているが反応はない。近くに警備をしている女がいるはずなのに無視しやがって!
怒りにまかせて何度も蹴りつけるが、すぐに意気が上がってしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
疲れたので固い床に座るが、すぐに痛くなって横に倒れる。
汗で体が濡れていたこともあって体が冷えてきた。ブルブルと震えるが、誰も温めに来ない。
声を出すのも面倒になってきたので、じっと耐えているとドアが開いた。
「おい。飯だ」
トレーには湯気が出ているスープと、ふっくらとした白いパン。あとはステーキがある。飲み物としてはワインが用意されていた。
この俺の口に入れるにしては質素で量も少ないが、今は腹が空いている寒いので許してやろう。
すぐに食事を始める。
「食事を出されたらむさぼるように食べるとは……まるで豚だな」
飯を持ってきた女が何か言っていたようだが、食事に集中していたので聞き逃してしまった。
口の中に入れた肉を飲み込んでから質問しようと思ったのだが、ドアが閉まって姿が見えなくなる。
終わるのを待たずに出て行くなんて身勝手な女だ。俺が自由になれたときには、死ぬほど痛めつけてやる。男である俺にはその権利があるのだッ!
4
あなたにおすすめの小説
男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜
メトト
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。
だけど蓮は違った。
前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。
幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。
そして蓮はと言えば――。
「ダンジョン潜りてえなあ!」
誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。
自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。
カクヨムさんの方で先行公開しております。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。
楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」
10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。
……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。
男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。
俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。
「待っていましたわ、アルト」
学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。
どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。
(俺の平穏なモブ生活が……!)
最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる