死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた

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あれはなんです?

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 馬車に乗って港まできた。

 女性に変装しているので誰も注目していない。

 大きく息を吸えば潮の香りが体内に入り、特別な場所に来たんだなと感じる。

 空は青く、美しい海は広い。

 日本にいた頃は一度も訪れたことはなく、映像の中だけの特別な場所。それが目の前にある。自分が置かれている状況なんて忘れて興奮してしまっていた。

「何を見に行きます?」

 隣にいるベルさんは質問しながら酒を飲んでいた。

 この島で出会った女性と雰囲気が違う。敬虔な信徒という感じはしない。

「ベルさんも想像上の彼氏いるんですか?」

 だから会話をぶった切って、別のことを聞いてしまった。だというのに嫌な顔はしていない。何でも無いと言った感じだ。

「いませんね。時代はリアルですよ、リアル」
「ぷぷっ、たしかに!」

 ストレートな言い方に思わず笑ってしまった。

 やっぱり妄想に逃げるなんておかしいよね。

「ですよね。でも、だからといって否定まではしませんね。実際に男を取り合うことはなく、平和に暮らせているんだから」
「効果はあるんですね」
「うん。暴走しないようになってるから、各国でもポンチャン教の信者は重宝されているんです。男性の護衛を任されることも珍しくありません」

 ということは、小麦倉庫の一件は、普通では発生しない。それでも起きてしまったのは、原因は僕に隙が多かったからだろうか。それとも普通の男とは違うフェロモンを出している……とか?

 いやいや、そんなの生物としておかしい。ありえないでしょ。

 首を横に振って馬鹿らしい妄想を忘れる。

「行きたい場所でしたよね。とりあえず船を見たいかな。中には入れます?」
「さすがに無理ですね。逃亡されたらマズイですし」
「そんなつもりないんだけどなぁ。でも、警戒する気持ちは分かります」
「ご理解ありがとうございます~」

 間延びした声を出した後、水筒に口を付けてグビグビと酒を飲んだ。ドワーフらしさ全開だ。

「中に入れなくても、外観ぐらいなら見ても良いですよね?」
「それならオッケーです。行きましょう」

 水筒を腰に付けると、ベルさんはさらっと僕の手を握った。あまりにも自然だったので抵抗なんてできず、そのまま引っ張られてしまう。

「ちょっと、ベルさん?」
「迷子になったら危険ですから、ね?」
「わかりました。今回は指示に従います」

 もう大人なんだけどなぁと思いながらも反対せず、歩いて船に向かって進む。

 港は活気があって賑やかだ。屋台がいくつもあって、船員らしき人たちに声をかけている。串焼きを買っては食べていた。香ばしい香りがここまで来てお腹が鳴ってしまう。

「食べますか?」
「ううん。先に船を見ましょう」

 僕の興味は食ではなく初めて現実で見る船だ。海ももっと近くで見たい。

 酒が入って殴り合いをしている人たちの見つつ、船の前に着く。

「大きいーーーっ!」

 見上げるほどだ。マストが三つもある。すごい長い距離も安定して航海できそうだ。

 今は船に積んだ荷物を降ろしているみたいで、上半身裸になった女性たちが木箱を担いでる。

 同性ばかりだから恥ずかしいって気持ちにはならないのだろう。

「あれは香辛料や宝石、鉄といったこの島じゃ手に入らない物が入ってます」
「貿易ですね。ということは島からの輸出品もあるんですか?」
「うん。塩と小麦がメインですね。ポンチャン教独自の技術を使って真っ白で上質な塩を作っているから高く売れるんです」

 親指と人差し指でわっかを作りながら、歯を見せて笑顔を作っていた。

 お金が大好きそうな表情だ。

 あとは男とギャンブルを入れたらダメ女コンプリートだよね。真面目だと思ってたんだけど、意外と危ない人なのかも。

 こんな人と側仕えとして一緒に行動しても大丈夫なのだろうか。変なトラブルに巻き込まれないと良いなと思いつつ、視線を船に戻す。

 牢屋みたいに鉄格子のある木箱が、船と地上をつなぐ板の上を移動している。驚くことに中には女性たちが入っていた。

「あれはなんです?」
「ん? 奴隷ですよ」

 さらっと当然のように言われてしまったけど、僕は大きな衝撃を受けた。

 まさか、この世界に奴隷制度があるなんて思わなかったよ。

「何のために買われたんですか?」
「島周辺にいる魔物の討伐ですね。とくに海周の近くには強いのが多いから、奴隷の力を借りて駆除しているんです」
「強制的に命懸けで戦う人たち、か……」

 僕が奴隷に対して嫌だなと感じていることが伝わってしまったみたいだ。

「無理はさせてないよ! 食事や休憩はたっぷりとれるし、ケガをしたらスキルで回復させている。扱いとしてはかなり良好な部類に入るんだから!」

 メヌさんがポンチャン教の制度についてフォローしてくれたけど、僕の気持ちは変わらなかった。やっぱり女性を無理やり従わせるのはおかしいよ。反論はいくつも浮かぶ。

 だからといって意見を押しつけようとは思わなかった。

 今はもっと世界の常識を学んで、全体を俯瞰して見られるようにならないと。

「扱いが良いなんてポンチャン教はしっかりしていますね」
「そうですよね! 私たちは貴族と違って、不必要な贅沢はしないようにしているし、隣人を愛するようにしているんです」

 ベルさんも信者なんだなぁと感じる発言だった。

「他の所も見に行きましょう。すごい釣り場を教えてあげます!」

 機嫌が悪くなった下人……奴隷を見せたくないみたいで、手を引っ張られてしまう。

 船を見て満足したので黙ってついてくことにした。
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