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姉の婚約破棄事件から三ヶ月が経った。
この事件は国のスキャンダルのようになり、姉は才色兼備の完璧令嬢の立場から一気に転落した。ゴシップ記者のかっこうの餌食となって、姉は外出するたびにつけまわされた。
最初は変装するくらいで済んでいたものの、やはり街に出ると目立ってしまい、そのうち姉は家から出なくなった。両親の姉への心配は尽きることがなく、洋服や宝石にとどまらず雑貨や家具なども新調するようになる。家から出られない姉の機嫌をなんとかとろうとする両親の姿は、あらためて見ると哀れだったけど、昔からこういうものだったなと諦めの気持ちが私にはあった。父と母が互いにいかに姉を喜ばせるかで衝突しているときもあり、私の婚約の話なんて両親には頭の片隅にもない。
あの事件以来、私とオリバーは結婚に向けて準備を進めていた。
でも、オリバーはやはり姉が家から出られないような状態になったことに責任を感じているようで、私の家に出入りするたびにため息をもらした。エバンズ家が心配でたくさん来てくれるのは嬉しいんだけど。
「なんかほんと、いつも申し訳ないって思うよ……」
気のせい……かな。オリバーの落ち込み方にどこかわざとらしいものを感じた。
「しかたないでしょ。王子様との婚約が台無しになったのよ。伯爵家としてお仕事にも関わってくるでしょうし、家はぐちゃぐちゃだし、災難よ」
実際には、私は心のなかでほくそ笑んでいた。
「ざまぁみろ」という言葉が喉まで出かかって、ぐっと押し込めた。
両親はいまだにレオの勘違いで婚約が破棄されたと思っていて、しつこく嘆願書と慰謝料を送っている。姉を疑う気持ちなんて一つもなく、本当に”おめでたい”人たちだ。
たしかに、道中でレオとばったり会ってしまった姉は不運だったと思う。でも不運だからといって、姉に責任がないわけじゃない。やっぱり自業自得よ。姉は今でも両親に過剰に可愛がってもらっているし、私がなにかしてあげようなんて思わない。とにかく私たちは血の繋がりとしては姉妹かもしれないけど、素質も育てられ方もまったく違うのだから、共感しようもない。
「お姉さんのこと……心配だろ?」
オリバーが真顔できいてきた。妹なんだから、姉のことを心配するのが当然、みたいな雰囲気で。
「ふんっ……早く出発しよ」
私はオリバーに不機嫌がわかるようにあえて冷たく振る舞った。
でも、オリバーは私の顔なんて少しも見ずに、姉の部屋のほうを見ていた。
「あ……もう行くの……?」オリバーがなぜか止めようとする。
「なにかやり残したことがある?」
「いや……ないけど……」
オリバーの私への関心が薄まっている。
姉のことは……もういいじゃない……。
出会った頃のように、私を褒めてくれることもない。
褒めてくれなくてもいいから、せめて私を見て、私と話してほしい。
……それでも、オリバーとの結婚は進んでいる。
ただそれだけを支えにして、
オリバーとの違和感には見て見ぬ振りをしてしまった……。
そして両親と姉に、新たな不幸が舞い降りるのだった。
この事件は国のスキャンダルのようになり、姉は才色兼備の完璧令嬢の立場から一気に転落した。ゴシップ記者のかっこうの餌食となって、姉は外出するたびにつけまわされた。
最初は変装するくらいで済んでいたものの、やはり街に出ると目立ってしまい、そのうち姉は家から出なくなった。両親の姉への心配は尽きることがなく、洋服や宝石にとどまらず雑貨や家具なども新調するようになる。家から出られない姉の機嫌をなんとかとろうとする両親の姿は、あらためて見ると哀れだったけど、昔からこういうものだったなと諦めの気持ちが私にはあった。父と母が互いにいかに姉を喜ばせるかで衝突しているときもあり、私の婚約の話なんて両親には頭の片隅にもない。
あの事件以来、私とオリバーは結婚に向けて準備を進めていた。
でも、オリバーはやはり姉が家から出られないような状態になったことに責任を感じているようで、私の家に出入りするたびにため息をもらした。エバンズ家が心配でたくさん来てくれるのは嬉しいんだけど。
「なんかほんと、いつも申し訳ないって思うよ……」
気のせい……かな。オリバーの落ち込み方にどこかわざとらしいものを感じた。
「しかたないでしょ。王子様との婚約が台無しになったのよ。伯爵家としてお仕事にも関わってくるでしょうし、家はぐちゃぐちゃだし、災難よ」
実際には、私は心のなかでほくそ笑んでいた。
「ざまぁみろ」という言葉が喉まで出かかって、ぐっと押し込めた。
両親はいまだにレオの勘違いで婚約が破棄されたと思っていて、しつこく嘆願書と慰謝料を送っている。姉を疑う気持ちなんて一つもなく、本当に”おめでたい”人たちだ。
たしかに、道中でレオとばったり会ってしまった姉は不運だったと思う。でも不運だからといって、姉に責任がないわけじゃない。やっぱり自業自得よ。姉は今でも両親に過剰に可愛がってもらっているし、私がなにかしてあげようなんて思わない。とにかく私たちは血の繋がりとしては姉妹かもしれないけど、素質も育てられ方もまったく違うのだから、共感しようもない。
「お姉さんのこと……心配だろ?」
オリバーが真顔できいてきた。妹なんだから、姉のことを心配するのが当然、みたいな雰囲気で。
「ふんっ……早く出発しよ」
私はオリバーに不機嫌がわかるようにあえて冷たく振る舞った。
でも、オリバーは私の顔なんて少しも見ずに、姉の部屋のほうを見ていた。
「あ……もう行くの……?」オリバーがなぜか止めようとする。
「なにかやり残したことがある?」
「いや……ないけど……」
オリバーの私への関心が薄まっている。
姉のことは……もういいじゃない……。
出会った頃のように、私を褒めてくれることもない。
褒めてくれなくてもいいから、せめて私を見て、私と話してほしい。
……それでも、オリバーとの結婚は進んでいる。
ただそれだけを支えにして、
オリバーとの違和感には見て見ぬ振りをしてしまった……。
そして両親と姉に、新たな不幸が舞い降りるのだった。
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