愛人を連れてきた夫とは当たり前ですが暮らせません。どうぞお幸せに。

Hibah

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父も母も私の話に驚いていた。父は机をガンッと叩いていたし、母も眉間にシワを寄せて怒っていた。

父は強い調子で言った。


「アドルフとクロエはうまくいっているのかと思っていたのに、真逆だったんだな。仕事熱心なアドルフのことだから安心していたが、まさか早々に愛人を連れ込むとは。信じられん! あの野郎……」


母も父に同調した。


「アドルフとは関係も長いですし、クロエをきっと大切にしてくれると考えていましたが、違っていたようですね……。どうしましょう、わたしは一気にアドルフのことが嫌いになりましたわ」


父は怒り狂ってしまいそうなのを必死に抑えるようにして、私に質問した。


「クロエ、お前はどうなんだ? アドルフとまだ夫婦を続けたいのか? 許せないだろ?」


私が耐えれば、結婚生活は続けられるだろう。でも、もうここ数年、アドルフの愛情がないことはわかっていた。見て見ぬふりをしてきた。愛人を連れてくるだけならまだしも、私が楽しみにして作り上げた寝室を追い出されたときに、私のなかで何かが崩れ去った。たぶん、もう限界なんだと思う。だからこうして両親に話している。まだがんばれるなら、きっと話していないもの……。


「お父様……私はもうアドルフと夫婦生活を続けていく自信がないです。できれば離縁したいです。愛人とは暮らせません」


「そうだな、新婚早々に愛人をつくるのも問題だが、平民を連れてくるというのも問題だ。我々の家をなんだと思っているんだあのアホは。このままではメンツに関わるから、伯爵家として厳正に対処する。まずはアドルフの家との仕事の取引を停止する。加えて、二人の離縁を成立させる」


仕事に影響すると聞き、私は戸惑った。


「あの、お父様、仕事の取引停止なんて……大丈夫なのですか?」


父は笑顔だった。


「いいんだよ。先方とは昔なじみだから取引していただけで、別の取引先は実はもっと安いんだ。クロエをないがしろにするなら、こちらも儲けさせてやる義理はない」


家族みんなの顔が少しやわらかくなってきた。

母は私に言った。


「大丈夫よクロエ。わたしたちがなんとかするからね。アドルフを絶対に許さないんだから。あなたも許しちゃダメよ。そして、前を向きなさい。必ずあなたを大切にしてくれる方が現れるから」


「ありがとう、お父様お母様。私迷惑ばかりかけてごめんなさい……」


「なにが迷惑なものか! 悪いのはアドルフだ。クロエは一度戻って荷物をまとめてこい。またここへ引っ越しだ。とびっきりの使用人もつけてやるからな」



私は使用人を五人引き連れて、アドルフとアドルフの愛人がいる家に戻った。するとアドルフが出てきて私に言った。


「どこをほっつき歩いていたんだこんな夜中に! 新婚の荷物もまだ整理しきっていないだろまったく。お前は俺の言うことを聞いていればいいんだ」
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