人違いで恋してしまった私を許してください。溺愛伯爵様は旅に出ました。

Hibah

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9 ローレンス視点

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僕はようやく知ることができた。

初めて顔合わせをした日の前月。ジュリエッタとリリアンは”ローレンス様”と呼ばれている男を見た。その男は僕と同じ名前だけど、僕ではなかった。

ジュリエッタはその男を僕だと思い、恋い焦がれていた。それなのに、顔合わせ当日に来たのは別の男(すなわち僕)。

ジュリエッタが落ち込む気持ちも理解できる。そんな偶然の出来事が起きていたなんて……。ジュリエッタを責めるわけにはいかない。彼女は少なくとも僕との結婚に前向きな気持ちで準備をしていた。まず僕は、それが知れて嬉しかった。彼女は望まない結婚に向かっていたのではなく、不運な事故のせいで気持ちをかき乱されただけだったのだ。



「リリアン。教えてくれてありがとう」

「いえ……今まで黙っていて申し訳ございません……」

「いや、そんな偶然の出来事、黙っていて当然だよ。にわかには信じがたいし……。でも、リリアンの説明のおかげで、すべてが腑に落ちたよ。とりあえず……僕が何かしてしまったわけじゃなくてよかった」

「ジュリエッタ様はローレンス様の愛情に心から感謝しています。ローレンス様を大切に思っているのも事実です……ジュリエッタ様の心のわだかまりは……時間が解決してくれるのではないでしょうか?」

リリアンの言うとおり、時間が解決してくれるのかもしれない。街にいた例の男は、たまたま街を訪れただけなのだろう。僕と生活をしていくうちに、男のことは忘れ、夫婦生活に慣れていってくれる……はず……?

いや、でも…………もしその男が、ジュリエッタにとって運命の男だったとしたら? 普通、街で見かけたくらいで、心奪われるなんてめったにない。それは、その男が彼女にとって特別な何かを持っていたからじゃないか? 僕はこのままこの事実を放っておいてよいのだろうか?

「ローレンス様……?」

リリアンが心配そうな顔をしてこちらを見ている。

「何でもないよ。リリアン、仕事の邪魔をして悪かったね」

「いえ! とんでもございません!」

僕は庭を離れて、屋敷に戻った。自分の部屋の椅子に腰掛けて、ぼうっと外を眺めた。

(身なりが貴族風だったということは……貴族なのだろう。しかし……僕と同じ名前の貴族はこの国にはいないはず。僕が知らないだけかもしれないけど、同じ名前であれば目立つだろうし、知ってておかしくない。――異国の貴族か?)

確かめよう。

それが一番すっきりする。ローレンスという名の貴族を探そう。明日、ウィリアム様のもとへ向けて出立する。ウィリアム様だったら異国の貴族とも繋がりがあるし、何か知っているかもしれない。

ジュリエッタとリリアンが見たという男を、この屋敷まで連れて帰ろう。そしてジュリエッタに会ってもらう。ジュリエッタは困るかもしれないけど、直接会えば未練がなくなるのではないか。仮に本当に運命の男だとしたら、僕がその恋のキューピットになるだけだ。遅かれ早かれ出会う可能性もあるわけだし、そのとき突然駆け落ちされるよりも、夫である僕自身が探してあげよう。それがきっと一番安全で……一番ジュリエッタのためになる。




雲ひとつ無く晴れ渡り、気持ちの良い朝になった。

「ジュリエッタ。隣の領主のウィリアム様にお会いしてくる。交易のことに関して、政治的な調整だね。何日間か家を空けるよ。留守を頼むね」
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