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エリザベスは子どもの頃ぶりにニコルの屋敷を訪れた。ニコルとも幼馴染であるのだが、歳を重ねるにつれ人間の”タイプ”の相違がはっきりして、疎遠になっていた。小さい頃は分け隔てなく遊べても、思春期を迎えればそうはいかなくなる。この二人はその典型的な例だった。
客間に座りコーヒーが運ばれてくると、ニコルからエリザベスに話しかけた。
「久しぶりねエリザベス。姿は見かけていたけど、こうして二人で話すのはいつぶりかしら」
「ニコル。今日は忙しい中お時間ありがとう。久しぶりに話せて嬉しいわ」
「いいのよ別に。退屈だからね」
「オスカーが逮捕されたニュースは知ってるかしら?」
「ええもちろん。巷ではそればかり話題になってるわね」
「オスカーが逮捕された日の前日、舞踏会でオスカーとイザベラが話していたの知ってる?」
ニコルはコーヒーカップを口元に運び、少し飲んだ。
「さあ……どうだったかしら」
二人はしばらく黙っていたが、エリザベスが口火を切った。
「留置場にいるオスカーと面会したの。そうしたら、オスカーとイザベラが話す前、イザベラはあなたと話していたそうね」
「そうだったような気もするけど……よく覚えていないわ。なんせ舞踏会なんて星の数ほどあるのだから、いちいち思い出せない」
「ねえ聞いて、ニコル……。私はオスカーを助けたいの。オスカーは舞踏会の夜に、イザベラと駆け落ちの約束をしたらしいわ。だから翌日、イザベラを迎えに行った。お互いに了承していたのよ。不法侵入でもなんでもない」
「へえ、なるほど。新事実かしら? じゃあなんでイザベラは約束した覚えがないなんて言ったのでしょうね。不思議ねぇ」
ニコルは他人事のようにコーヒーをすすり、わかっていながらも澄ました顔をしている。その様子を見て、エリザベスは奥歯を噛み締めた。
「あなたにはわかってるでしょ? イザベラがオスカーを陥れたって。もしかしてあなたもこの件に加担しているの?」
エリザベスの疑いを受け、この日はじめてニコルはエリザベスの目をまともに見た。
「そんなわけないでしょ。イザベラが何をするかなんて知ったことではないわ」
ニコルが語気を強めて否定するのを聞き、エリザベスは軽く小刻みにうなずいた。
「そうね。ニコルは昔から優しいから、変な計画に乗ったりしないわよね。ごめんね」
「優しさが何の役に立つと言うの? お金がなければ……愛も続かない」
エリザベスはニコルの家が金銭に困り、土地や家財を切り売りしているという噂があることを思い出した。実際来てみても、屋敷はとても質素な状態であり、貴族の家にありがちな贅沢品が見当たらない。客間を見渡しても、無名の画家による作品であろう絵が一枚飾られているだけである。
「ねえニコル。あなたもしかして、オスカーとイザベラの会話を聞いていた、なんてことはないかしら? もしそうなら、裁判で証言してほしい。あなただって小さい頃はオスカーと一緒に遊んだでしょ? 幼馴染が困ってるの。どうか……お願いします」
ニコルは目線を横にずらし、沈んだ表情で答えた。
「昔は昔。今は今よ。わたしだって自分のことであっぷあっぷなんだから……。一フランにもならない話に興味ないわ……。他をあたってちょうだい」
ニコルは椅子から立ち上がり、去ろうとした。しかしエリザベスはとっさにニコルの前をふさぎ、手を握った。
「もし見当違いの提案ならごめんなさい。お礼なら……させてもらうわ」
客間に座りコーヒーが運ばれてくると、ニコルからエリザベスに話しかけた。
「久しぶりねエリザベス。姿は見かけていたけど、こうして二人で話すのはいつぶりかしら」
「ニコル。今日は忙しい中お時間ありがとう。久しぶりに話せて嬉しいわ」
「いいのよ別に。退屈だからね」
「オスカーが逮捕されたニュースは知ってるかしら?」
「ええもちろん。巷ではそればかり話題になってるわね」
「オスカーが逮捕された日の前日、舞踏会でオスカーとイザベラが話していたの知ってる?」
ニコルはコーヒーカップを口元に運び、少し飲んだ。
「さあ……どうだったかしら」
二人はしばらく黙っていたが、エリザベスが口火を切った。
「留置場にいるオスカーと面会したの。そうしたら、オスカーとイザベラが話す前、イザベラはあなたと話していたそうね」
「そうだったような気もするけど……よく覚えていないわ。なんせ舞踏会なんて星の数ほどあるのだから、いちいち思い出せない」
「ねえ聞いて、ニコル……。私はオスカーを助けたいの。オスカーは舞踏会の夜に、イザベラと駆け落ちの約束をしたらしいわ。だから翌日、イザベラを迎えに行った。お互いに了承していたのよ。不法侵入でもなんでもない」
「へえ、なるほど。新事実かしら? じゃあなんでイザベラは約束した覚えがないなんて言ったのでしょうね。不思議ねぇ」
ニコルは他人事のようにコーヒーをすすり、わかっていながらも澄ました顔をしている。その様子を見て、エリザベスは奥歯を噛み締めた。
「あなたにはわかってるでしょ? イザベラがオスカーを陥れたって。もしかしてあなたもこの件に加担しているの?」
エリザベスの疑いを受け、この日はじめてニコルはエリザベスの目をまともに見た。
「そんなわけないでしょ。イザベラが何をするかなんて知ったことではないわ」
ニコルが語気を強めて否定するのを聞き、エリザベスは軽く小刻みにうなずいた。
「そうね。ニコルは昔から優しいから、変な計画に乗ったりしないわよね。ごめんね」
「優しさが何の役に立つと言うの? お金がなければ……愛も続かない」
エリザベスはニコルの家が金銭に困り、土地や家財を切り売りしているという噂があることを思い出した。実際来てみても、屋敷はとても質素な状態であり、貴族の家にありがちな贅沢品が見当たらない。客間を見渡しても、無名の画家による作品であろう絵が一枚飾られているだけである。
「ねえニコル。あなたもしかして、オスカーとイザベラの会話を聞いていた、なんてことはないかしら? もしそうなら、裁判で証言してほしい。あなただって小さい頃はオスカーと一緒に遊んだでしょ? 幼馴染が困ってるの。どうか……お願いします」
ニコルは目線を横にずらし、沈んだ表情で答えた。
「昔は昔。今は今よ。わたしだって自分のことであっぷあっぷなんだから……。一フランにもならない話に興味ないわ……。他をあたってちょうだい」
ニコルは椅子から立ち上がり、去ろうとした。しかしエリザベスはとっさにニコルの前をふさぎ、手を握った。
「もし見当違いの提案ならごめんなさい。お礼なら……させてもらうわ」
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