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暮れ残った空に雁の黒影が消えていく夕方、セバスチャンはコルテオのアパルトマンを訪れた。突然の訪問に驚いたコルテオは空元気でセバスチャンを迎え、いかに自分の作品づくりが進んでいるかを力説した。確かに狭い部屋には絵画がひしめき合っていたが、どれも小ぶりである。事情を知っているセバスチャンにとっては、一つ一つの作品が美しくも切なく感じられた。
「今日はコルテオに伝えることがあって来ました」セバスチャンはコルテオの絵の説明を遮るようにして切り出した。
コルテオは言葉を呑み込み、黙ってセバスチャンを見つめた。目には動揺が現れていた。
「は、はい! ……なんでしょう?」
「ヴァネッサについてです。彼女はアランという大工と同棲しています。あなたから受け取っていた90フラン……いえ、先月から180フランになりましたが……そのお金は彼らの生活や将来の貯金に回されています」
「…………?」
コルテオはあ然とした。自分がヴァネッサに180フラン支払っているのがバレている。それに……ヴァネッサが男と同棲している……?
「信じられないかもしれませんが、あなたは騙されています。ヴァネッサはあなたと結婚するつもりはなく、アランと結婚するつもりです。これはわたくしが綿密に調査した結果であり、ベランジェール様にも報告済みです。今回こうしてお伝えに参ったのも、ベランジェール様からのご指示となります」
「え、いや、ん……? すみません、突然言われて頭が整理できていません。ヴァネッサには他に恋人がいるということですか?」
「おっしゃるとおりです」
コルテオは苦笑いした後、両手を大げさに振って否定した。
「あはははは、それはありえません! つい一週間前だって、愛していると言ってくれたばかりです。会うたびに結婚の話はしているし、まさかヴァネッサが……浮気しているなんて……」
「いえ、浮気というより、ヴァネッサは最初からあなたに本気ではなかったんです。アランに言われて、あなたからお金を騙し取るよう仕組まれたのです」
「ちょっと待ってください! ……だったら、ヴァネッサは被害者じゃないですか! アランというやつに脅されたから、おいらからお金をもらってたんだ。かわいそうに……」
「お気持ちはわかりますが、ヴァネッサは共犯です。アランに脅されたから従っているわけではありません」
「そんなはずないでしょう! 失礼ですが……セバスチャン様は彼女のことをよく知りもしないのに空想で物を言っています。彼女は美しくおしとやかで、こんなおいらにも優しくて、人を騙すような女性では……」
「そうおっしゃると思いましたので、今晩、ヴァネッサとアランが暮らしている家までお連れします。迎えを差し上げますので、今夜はこのアパルトマンで待機していてください」
コルテオはセバスチャンから聞いた話をまったく受け入れない一方で、ヴァネッサが住んでいる家については気になった。どんなとこに住んでいて、どんな暮らしをしているのか、彼女から聞いたことがなかった。完璧に美しい姿で颯爽と自分の部屋に現れ、惜しむ間も無く帰っていく女神のように見えていた。コルテオはこの時初めて、一人の人間として暮らす彼女を知りたいと思ったのだった。
「今日はコルテオに伝えることがあって来ました」セバスチャンはコルテオの絵の説明を遮るようにして切り出した。
コルテオは言葉を呑み込み、黙ってセバスチャンを見つめた。目には動揺が現れていた。
「は、はい! ……なんでしょう?」
「ヴァネッサについてです。彼女はアランという大工と同棲しています。あなたから受け取っていた90フラン……いえ、先月から180フランになりましたが……そのお金は彼らの生活や将来の貯金に回されています」
「…………?」
コルテオはあ然とした。自分がヴァネッサに180フラン支払っているのがバレている。それに……ヴァネッサが男と同棲している……?
「信じられないかもしれませんが、あなたは騙されています。ヴァネッサはあなたと結婚するつもりはなく、アランと結婚するつもりです。これはわたくしが綿密に調査した結果であり、ベランジェール様にも報告済みです。今回こうしてお伝えに参ったのも、ベランジェール様からのご指示となります」
「え、いや、ん……? すみません、突然言われて頭が整理できていません。ヴァネッサには他に恋人がいるということですか?」
「おっしゃるとおりです」
コルテオは苦笑いした後、両手を大げさに振って否定した。
「あはははは、それはありえません! つい一週間前だって、愛していると言ってくれたばかりです。会うたびに結婚の話はしているし、まさかヴァネッサが……浮気しているなんて……」
「いえ、浮気というより、ヴァネッサは最初からあなたに本気ではなかったんです。アランに言われて、あなたからお金を騙し取るよう仕組まれたのです」
「ちょっと待ってください! ……だったら、ヴァネッサは被害者じゃないですか! アランというやつに脅されたから、おいらからお金をもらってたんだ。かわいそうに……」
「お気持ちはわかりますが、ヴァネッサは共犯です。アランに脅されたから従っているわけではありません」
「そんなはずないでしょう! 失礼ですが……セバスチャン様は彼女のことをよく知りもしないのに空想で物を言っています。彼女は美しくおしとやかで、こんなおいらにも優しくて、人を騙すような女性では……」
「そうおっしゃると思いましたので、今晩、ヴァネッサとアランが暮らしている家までお連れします。迎えを差し上げますので、今夜はこのアパルトマンで待機していてください」
コルテオはセバスチャンから聞いた話をまったく受け入れない一方で、ヴァネッサが住んでいる家については気になった。どんなとこに住んでいて、どんな暮らしをしているのか、彼女から聞いたことがなかった。完璧に美しい姿で颯爽と自分の部屋に現れ、惜しむ間も無く帰っていく女神のように見えていた。コルテオはこの時初めて、一人の人間として暮らす彼女を知りたいと思ったのだった。
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