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アランが帰ってからもコルテオは窓を覗き続けた。セバスチャンは地べたに腰を下ろして彼を見守りつつ、スケッチを続けた。コルテオはアランが筋肉隆々な大男であることに驚いた。喧嘩したところで敵う相手ではないと一瞬で悟った。ヴァネッサからは普段、「センスのある芸術家が好き」と聞いていたので、(真逆やないか……)と心の中でツッコんだ。
「お前、まだ起きてやがったのか。どうした、そんなに俺の帰りが待ち遠しかったか?」アランはパンパンに膨れ上がったリュックサックを下ろしながら、ヴァネッサをからかうように言った。そして彼女のくちびるにしゃぶりつくようにキスし、しなやかな背中やお尻をひととおり撫でた後、ピチピチのシャツを脱ぎ始めた。
「そうよ、アラン。あなたの帰りを待たない日なんてないわ。いつも心配なの。無事に帰ってきてほしいって思いながら夜を過ごしてる」
アランが着替えるのを手伝いながら体を密着させ、ヴァネッサは人差し指で彼の胸筋をなぞる。ヴァネッサの甘い声を聞き、コルテオはショックを受けた。ヴァネッサが自分に見せたことのない受け入れ方をして、猫なで声を出している。ねっとりとしたまなざしはアランに向けられていて、自分ではない。くねらせた腰は目の前のオスを欲している。人間の顔かたちは一定した造形のはずなのに、ここまで使い分けられるのだと、コルテオは美術書にはないリアルを目の当たりにした。
「ヴァネッサ……今日も興奮してるんだな。性欲まみれのいやらしい女め……。おら、ケツ出せや」
アランはヴァネッサのスカートをまくって下着を下ろすと、彼女の頭をつかむようにしてテーブルに押し付けた。野蛮そのものだった。裁縫セットは乱暴に床へ投げられ、糸の玉がころころと窓際まで転がる。
童貞のコルテオは悪魔に取り憑かれたように、二人の行為を覗き続けた。目をそらせなかった。白目は血走っていた。まるで最も大事な義務のごとく目に焼き付けた。アランへの怒りはやがて悔しさに変わり、最後は諦めに変わった。気がつけば自分の下半身も大きくなっていた。セバスチャンはすかさずスケッチする。
長屋の外にヴァネッサのあえぎ声が聞こえてきたが、セバスチャンは何も思わなかった。「あん! あーーーん!」という、叫び声に近い音波が、無の状態でスケッチをするセバスチャンの鼓膜に届いただけだった。
アランが一発を放ち終わり、腰をぷるぷる震わせたヴァネッサが床にへたりこんだ時、コルテオもまたズボンを濡らしていた。冷静になり、窓から離れた。強がりの彼は、一連のつまらない寸劇を認めなかった。理想とする聖夜ではなかった。突き刺して、応えて、終わる。それだけのこと! 一片の美もそこに存在しなかった!
セバスチャンも察するようにして立ち上がり、歩き始めた彼の後ろをついて行った。
「ご自宅まで……お送りします」
セバスチャンの声に反応することなく、コルテオはふらふらと歩いた。どっと疲れが押し寄せてきた。もし自分の墓場があるのなら、このまま向かいたかった。婚約者だった女性――少なくとも自分がそう認識していた女性に裏切られた。コルテオの心にぽっかりと穴が空いた。何も考えられなかった。
コルテオが歩む虚無の道は、幸せな恋人たちのわだちを隠した。いつの間にか雨の降り始めた空に、コルテオはその魂の破片を叫び立てた。
「お前、まだ起きてやがったのか。どうした、そんなに俺の帰りが待ち遠しかったか?」アランはパンパンに膨れ上がったリュックサックを下ろしながら、ヴァネッサをからかうように言った。そして彼女のくちびるにしゃぶりつくようにキスし、しなやかな背中やお尻をひととおり撫でた後、ピチピチのシャツを脱ぎ始めた。
「そうよ、アラン。あなたの帰りを待たない日なんてないわ。いつも心配なの。無事に帰ってきてほしいって思いながら夜を過ごしてる」
アランが着替えるのを手伝いながら体を密着させ、ヴァネッサは人差し指で彼の胸筋をなぞる。ヴァネッサの甘い声を聞き、コルテオはショックを受けた。ヴァネッサが自分に見せたことのない受け入れ方をして、猫なで声を出している。ねっとりとしたまなざしはアランに向けられていて、自分ではない。くねらせた腰は目の前のオスを欲している。人間の顔かたちは一定した造形のはずなのに、ここまで使い分けられるのだと、コルテオは美術書にはないリアルを目の当たりにした。
「ヴァネッサ……今日も興奮してるんだな。性欲まみれのいやらしい女め……。おら、ケツ出せや」
アランはヴァネッサのスカートをまくって下着を下ろすと、彼女の頭をつかむようにしてテーブルに押し付けた。野蛮そのものだった。裁縫セットは乱暴に床へ投げられ、糸の玉がころころと窓際まで転がる。
童貞のコルテオは悪魔に取り憑かれたように、二人の行為を覗き続けた。目をそらせなかった。白目は血走っていた。まるで最も大事な義務のごとく目に焼き付けた。アランへの怒りはやがて悔しさに変わり、最後は諦めに変わった。気がつけば自分の下半身も大きくなっていた。セバスチャンはすかさずスケッチする。
長屋の外にヴァネッサのあえぎ声が聞こえてきたが、セバスチャンは何も思わなかった。「あん! あーーーん!」という、叫び声に近い音波が、無の状態でスケッチをするセバスチャンの鼓膜に届いただけだった。
アランが一発を放ち終わり、腰をぷるぷる震わせたヴァネッサが床にへたりこんだ時、コルテオもまたズボンを濡らしていた。冷静になり、窓から離れた。強がりの彼は、一連のつまらない寸劇を認めなかった。理想とする聖夜ではなかった。突き刺して、応えて、終わる。それだけのこと! 一片の美もそこに存在しなかった!
セバスチャンも察するようにして立ち上がり、歩き始めた彼の後ろをついて行った。
「ご自宅まで……お送りします」
セバスチャンの声に反応することなく、コルテオはふらふらと歩いた。どっと疲れが押し寄せてきた。もし自分の墓場があるのなら、このまま向かいたかった。婚約者だった女性――少なくとも自分がそう認識していた女性に裏切られた。コルテオの心にぽっかりと穴が空いた。何も考えられなかった。
コルテオが歩む虚無の道は、幸せな恋人たちのわだちを隠した。いつの間にか雨の降り始めた空に、コルテオはその魂の破片を叫び立てた。
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