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翌朝、ヴァネッサはベランジェールの屋敷を出た。謝罪をするため、コルテオのアパルトマンに向かった。郵便ポストへ入れた200フランをちゃんとコルテオが回収しているかも不安だった。
しかし、コルテオが住む部屋を訪れても、彼はいなかった。洋服は散らかったまま、絵も描きかけだった。郵便ポストには200フランの入った封筒がそのままになっており、ヴァネッサはそれを手にとって考えた。
(おかしいわね……鍵もかけずに外出したのかしら……?)
ヴァネッサはコルテオを待ったが、夜になっても帰って来なかった。いったん屋敷に帰った彼女は、コルテオに会えなかったことをセバスチャンに伝えた。すると、セバスチャンもコルテオの不在を不審に思った。コルテオに外出予定などないはずだった。
さらに翌日、ヴァネッサとセバスチャンはともにコルテオの部屋を訪れたが、やはり彼はいなかった。危険を察知したセバスチャンは部下に命じて、首都や外れの街の捜索に掛かった。
***
コルテオが失踪してから一週間、ベランジェールの不安は高まっていた。コルテオの無事を願うとともに、翌週には王国展覧会の結果発表が控えていた。王国全土から作品が集まるため激戦のコンテストなのだが、応募したコルテオにも脈があるのではないかとベランジェールは考えていた。審査は極秘であるものの、一次審査で落ちた絵画は早々に送り返される。コルテオの作品は返されていないので、少なくとも選考の対象になっているはずだった。
ベランジェールは別件にも取り組んでいた。アランについてである。コルテオからお金を奪うように仕向けた張本人であるが、セバスチャンの調査の結果、もともとアランは暴力沙汰が多く、首都でも問題になっている男だった。ベランジェールは、アランの所属する大工組合の組合長ジルと話すことにした。(アランは大工の親方で、その親方たちを束ねているのが組合である)。
白いアゲハ蝶が伯爵邸の窓格子で羽を休めていた日の午後。
組合長のジルは突然伯爵夫人の呼び出しを受けたため、びくびくしていた。この日は家にいる間も、階段を一段降りては止まり、また一段降りては止まるほどだった。首都の知事クラスの人間がようやく話せるかもしれないほどの高級貴族なのに、自分のような下っ端の大工に何の用があるのだろうと思った。しかも呼び出しとなると、褒められることや相談事などはありえない。
ジルは屋敷の応接室に通された。足首に鉛玉が付いているのかと思うほど、足取りは重かった。脇汗でシャツはぐっしょり濡れ、ソファーに座ることなく直立の姿勢で待機した。
「待たせたわね。あなたがジル?」
絵画のチェックを中断させられてイライラしているベランジェールが応接室に入った。
しかし、コルテオが住む部屋を訪れても、彼はいなかった。洋服は散らかったまま、絵も描きかけだった。郵便ポストには200フランの入った封筒がそのままになっており、ヴァネッサはそれを手にとって考えた。
(おかしいわね……鍵もかけずに外出したのかしら……?)
ヴァネッサはコルテオを待ったが、夜になっても帰って来なかった。いったん屋敷に帰った彼女は、コルテオに会えなかったことをセバスチャンに伝えた。すると、セバスチャンもコルテオの不在を不審に思った。コルテオに外出予定などないはずだった。
さらに翌日、ヴァネッサとセバスチャンはともにコルテオの部屋を訪れたが、やはり彼はいなかった。危険を察知したセバスチャンは部下に命じて、首都や外れの街の捜索に掛かった。
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コルテオが失踪してから一週間、ベランジェールの不安は高まっていた。コルテオの無事を願うとともに、翌週には王国展覧会の結果発表が控えていた。王国全土から作品が集まるため激戦のコンテストなのだが、応募したコルテオにも脈があるのではないかとベランジェールは考えていた。審査は極秘であるものの、一次審査で落ちた絵画は早々に送り返される。コルテオの作品は返されていないので、少なくとも選考の対象になっているはずだった。
ベランジェールは別件にも取り組んでいた。アランについてである。コルテオからお金を奪うように仕向けた張本人であるが、セバスチャンの調査の結果、もともとアランは暴力沙汰が多く、首都でも問題になっている男だった。ベランジェールは、アランの所属する大工組合の組合長ジルと話すことにした。(アランは大工の親方で、その親方たちを束ねているのが組合である)。
白いアゲハ蝶が伯爵邸の窓格子で羽を休めていた日の午後。
組合長のジルは突然伯爵夫人の呼び出しを受けたため、びくびくしていた。この日は家にいる間も、階段を一段降りては止まり、また一段降りては止まるほどだった。首都の知事クラスの人間がようやく話せるかもしれないほどの高級貴族なのに、自分のような下っ端の大工に何の用があるのだろうと思った。しかも呼び出しとなると、褒められることや相談事などはありえない。
ジルは屋敷の応接室に通された。足首に鉛玉が付いているのかと思うほど、足取りは重かった。脇汗でシャツはぐっしょり濡れ、ソファーに座ることなく直立の姿勢で待機した。
「待たせたわね。あなたがジル?」
絵画のチェックを中断させられてイライラしているベランジェールが応接室に入った。
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