8 / 8
8 最終話
やはりという感じですが、エマニュエルの事情がわかりました。
修道院に送られたくないあまり、エマニュエルは私との復縁をもちかけてきたのです。私はお父様から侯爵様の考えを聞いていたので、驚きはありませんでした。私との婚約が有効である限り、侯爵様は息子を修道院に送ることはできませんでした。おそらく、事態の推移を静観していたのでしょう。エマニュエルの行動の変化を期待していたのは、誰よりも侯爵様だったのかもしれません。
エマニュエルはボロボロ涙を流して私の足元にすがり付き、「許してくれ! 愛している!」と繰り返しました。しかし、過去の人に何を言われたところで響くわけがありません。ましてや救うわけもありません。過去に「最後のチャンス」を与えていたのは私のほうです。彼は人に与えてもらうことしかわからないのですから。
「エマニュエル、私はもう結婚したの。夫は誰よりも私を大切にしてくれているわ。あなたと婚約していた一年間、私はあなたを愛そうと努力してきた。どんなにひどい扱いを受けても、周りに頭を下げても……あなたが変わってくれるならと思って……でも、そんな日は来なかったわ」
彼は地面に顔をこすりつけて泣き続けています。落ち葉が彼の周りに散らばっており、その姿はさらに哀れに見えました。嗚咽する音が薄く響き、彼が小さくしぼんでしまったかのようです。
私は心を強く持ち、別れの言葉を続けました。
「あなたのおかげでわかったことがあるわ。『運命の伴侶』は他人が決めるものじゃなくて、自分が決めるもの。私は今の夫を『運命の伴侶』にしたい。彼を――愛しているから。エマニュエル……これで本当にお別れです。さようなら」
エマニュエルの泣き声が背後で響きましたが、私はその音が遠ざかっていくのを感じながら歩み続けました。手の中の、綺麗に包装された夫へのプレゼントの感触が、私に勇気を与えてくれるかのようでした。
街中をせわしなく移動する人々に紛れながら歩いていると、夫の温かな笑顔が脳裏に浮かび、胸の奥底に喜びの波がじんわりと広がっていきます。
愛する人のもとへ帰る――その単純で、かけがえのない幸せを噛みしめながら、新しい人生をスタートさせたのでした。
修道院に送られたくないあまり、エマニュエルは私との復縁をもちかけてきたのです。私はお父様から侯爵様の考えを聞いていたので、驚きはありませんでした。私との婚約が有効である限り、侯爵様は息子を修道院に送ることはできませんでした。おそらく、事態の推移を静観していたのでしょう。エマニュエルの行動の変化を期待していたのは、誰よりも侯爵様だったのかもしれません。
エマニュエルはボロボロ涙を流して私の足元にすがり付き、「許してくれ! 愛している!」と繰り返しました。しかし、過去の人に何を言われたところで響くわけがありません。ましてや救うわけもありません。過去に「最後のチャンス」を与えていたのは私のほうです。彼は人に与えてもらうことしかわからないのですから。
「エマニュエル、私はもう結婚したの。夫は誰よりも私を大切にしてくれているわ。あなたと婚約していた一年間、私はあなたを愛そうと努力してきた。どんなにひどい扱いを受けても、周りに頭を下げても……あなたが変わってくれるならと思って……でも、そんな日は来なかったわ」
彼は地面に顔をこすりつけて泣き続けています。落ち葉が彼の周りに散らばっており、その姿はさらに哀れに見えました。嗚咽する音が薄く響き、彼が小さくしぼんでしまったかのようです。
私は心を強く持ち、別れの言葉を続けました。
「あなたのおかげでわかったことがあるわ。『運命の伴侶』は他人が決めるものじゃなくて、自分が決めるもの。私は今の夫を『運命の伴侶』にしたい。彼を――愛しているから。エマニュエル……これで本当にお別れです。さようなら」
エマニュエルの泣き声が背後で響きましたが、私はその音が遠ざかっていくのを感じながら歩み続けました。手の中の、綺麗に包装された夫へのプレゼントの感触が、私に勇気を与えてくれるかのようでした。
街中をせわしなく移動する人々に紛れながら歩いていると、夫の温かな笑顔が脳裏に浮かび、胸の奥底に喜びの波がじんわりと広がっていきます。
愛する人のもとへ帰る――その単純で、かけがえのない幸せを噛みしめながら、新しい人生をスタートさせたのでした。
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。
しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。
マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。
マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。
そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。
しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。
怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。
そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。
そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
私たち、殿下との婚約をお断りさせていただきます!というかそもそも婚約は成立していません! ~二人の令嬢から捨てられた王子の断罪劇
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「私たち、ハリル王子殿下との婚約をお断りさせていただきます!」伯爵家の姉妹フローラとミルドレッドの声がきれいに重なった。王家主催の夜会で、なんとハリル王子に対し二人の姉妹が婚約破棄を申し出たのである。国王も列席する場で起きた前代未聞の事態に、会場はしんと静まり返る。不貞を働いたことを理由に婚約破棄を申し渡したはずのフローラと、心から愛し合っていたはずの新しい婚約相手ミルドレッドからの婚約破棄の申し出に、混乱するハリル王子。しかもそもそもフローラとの婚約は受理されていないと知らされ、ハリルは頭を抱える。そこにハリルの母親であるこの国の側妃アルビアが現れ、事態は運命の断罪劇へと進んでいく。
一風変わった婚約破棄からはじまる断罪ざまぁストーリーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨム等他サイトでも掲載中です。
(完結)婚約解消は当然でした
青空一夏
恋愛
エヴァリン・シャー子爵令嬢とイライジャ・メソン伯爵は婚約者同士。レイテ・イラ伯爵令嬢とは従姉妹。
シャー子爵家は大富豪でエヴァリンのお母様は他界。
お父様に溺愛されたエヴァリンの恋の物語。
エヴァリンは婚約者が従姉妹とキスをしているのを見てしまいますが、それは・・・・・・
本当の貴方
松石 愛弓
恋愛
伯爵令嬢アリシアは、10年来の婚約者エリオットに突然、婚約破棄を言い渡される。
貴方に愛されていると信じていたのに――。
エリオットの豹変ぶりにアリシアは…。
シリアス寄りです。
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。