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王都警察に連れて行かれたゴードン男爵は、すぐに牢屋に入れられた。身元不明の不審者という扱いである。
取り調べの結果、いちおう「ゴードン男爵」と自称しているので、王都警察が逮捕の翌日にゴードン男爵の屋敷に訪れた。
「奥様。本日はお忙しい中お目通りありがとうございます。王都警察のポンコツヴィチです。ゴードン男爵と名乗る男をこちらで逮捕しているのですが……まさか本当にゴードン男爵ではありませんよね?」
カチェリーナは顔が青ざめるかのような(?)素振りを見せた。
「主人が昨日出かけたきり帰ってこないのです! もしかしたら本物の主人かもしれません。見に行ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんかまいません。むしろご協力ありがとうございます。では一緒に行きましょう。その男は平民の服を着ていますし、みじめな雰囲気なので男爵様とは思えませんが……」
カチェリーナは動揺したふりをして王都警察の牢屋を訪れた。牢屋は地下にあり、不愉快な湿気に満ちている。加えて、糞尿のひどい臭いが立ち込めていた。とても長居できるような場所ではない。
浮気男の末路にはお似合いの場所だが、カチェリーナは入口の段階でとても入っていけないと思ったので、ゴードン男爵を特別面会室まで連れてきてもらうことにした。
(あんなところ、数秒いるだけでも耐えられないのに、あの人は一晩も過ごしたんだわ。いい気味ね、ふふふ)
カチェリーナの前に現れたゴードン男爵は、一晩牢屋で過ごしただけなのに非常にやつれていた。囚人どうしの喧嘩に巻き込まれたのか、顔や身体のあちこちに青アザがある。
彼は妻の姿を見たとたんに涙を流し、「すまない……」と消え入るような声で言った。
「あなた……かわいそうに……。何があったのですか?」カチェリーナはすべてを仕組んだ張本人であるが、あえて貞淑な妻を装った。
***
――カチェリーナの作戦は、アガーフィヤからの報告を受けたときに始まっていた。
ゴードン男爵がアガーフィヤを連れてグラーシモヴィチ家(=エレオノーラの住む家)へ行くことを予測した。男爵は見栄っ張りのため、おそらく一人で来たと格好をつけたがるだろう。アガーフィヤをどこか別の場所に待機させるに違いない。もしそうなったとき、アガーフィヤには王都警察への通報役を命じていた(「怪しい人がグラーシモヴィチ家の前で暴れています」と)。
カチェリーナ本人は縫い物教室に行くふりをしてグラーシモヴィチ家に先に到着し、エレオノーラと打ち合わせした。エレオノーラへの依頼事項は以下の3点。
1つ目の依頼:ゴードン男爵が来ても決して迎えないようにすること(門前払いする)。
2つ目の依頼:生徒一覧からゴードン男爵を削除しておくこと。
3つ目の依頼:門番に「最近、高齢の方で付きまとってくる人がいる。名前はわからないけど、警戒しておいて」と伝えること。
最初エレオノーラは作戦の実行に躊躇したが、やはりカチェリーナに従うほかなかった。これが最後の仕事だと考えたからである。……自分にまったく非がない場合でも、他人のためにひと肌脱がねばならないタイミングはある。
結果、すべてがカチェリーナの思惑通りに進み、浮気男のゴードン男爵は牢屋にぶち込まれたわけである。
臭い男には臭い場所がお似合いだ。
***
さて、ゴードン男爵はカチェリーナに対して必死に事情を説明し、弁解し始めた(カチェリーナはすべて知っているが)。
取り調べの結果、いちおう「ゴードン男爵」と自称しているので、王都警察が逮捕の翌日にゴードン男爵の屋敷に訪れた。
「奥様。本日はお忙しい中お目通りありがとうございます。王都警察のポンコツヴィチです。ゴードン男爵と名乗る男をこちらで逮捕しているのですが……まさか本当にゴードン男爵ではありませんよね?」
カチェリーナは顔が青ざめるかのような(?)素振りを見せた。
「主人が昨日出かけたきり帰ってこないのです! もしかしたら本物の主人かもしれません。見に行ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんかまいません。むしろご協力ありがとうございます。では一緒に行きましょう。その男は平民の服を着ていますし、みじめな雰囲気なので男爵様とは思えませんが……」
カチェリーナは動揺したふりをして王都警察の牢屋を訪れた。牢屋は地下にあり、不愉快な湿気に満ちている。加えて、糞尿のひどい臭いが立ち込めていた。とても長居できるような場所ではない。
浮気男の末路にはお似合いの場所だが、カチェリーナは入口の段階でとても入っていけないと思ったので、ゴードン男爵を特別面会室まで連れてきてもらうことにした。
(あんなところ、数秒いるだけでも耐えられないのに、あの人は一晩も過ごしたんだわ。いい気味ね、ふふふ)
カチェリーナの前に現れたゴードン男爵は、一晩牢屋で過ごしただけなのに非常にやつれていた。囚人どうしの喧嘩に巻き込まれたのか、顔や身体のあちこちに青アザがある。
彼は妻の姿を見たとたんに涙を流し、「すまない……」と消え入るような声で言った。
「あなた……かわいそうに……。何があったのですか?」カチェリーナはすべてを仕組んだ張本人であるが、あえて貞淑な妻を装った。
***
――カチェリーナの作戦は、アガーフィヤからの報告を受けたときに始まっていた。
ゴードン男爵がアガーフィヤを連れてグラーシモヴィチ家(=エレオノーラの住む家)へ行くことを予測した。男爵は見栄っ張りのため、おそらく一人で来たと格好をつけたがるだろう。アガーフィヤをどこか別の場所に待機させるに違いない。もしそうなったとき、アガーフィヤには王都警察への通報役を命じていた(「怪しい人がグラーシモヴィチ家の前で暴れています」と)。
カチェリーナ本人は縫い物教室に行くふりをしてグラーシモヴィチ家に先に到着し、エレオノーラと打ち合わせした。エレオノーラへの依頼事項は以下の3点。
1つ目の依頼:ゴードン男爵が来ても決して迎えないようにすること(門前払いする)。
2つ目の依頼:生徒一覧からゴードン男爵を削除しておくこと。
3つ目の依頼:門番に「最近、高齢の方で付きまとってくる人がいる。名前はわからないけど、警戒しておいて」と伝えること。
最初エレオノーラは作戦の実行に躊躇したが、やはりカチェリーナに従うほかなかった。これが最後の仕事だと考えたからである。……自分にまったく非がない場合でも、他人のためにひと肌脱がねばならないタイミングはある。
結果、すべてがカチェリーナの思惑通りに進み、浮気男のゴードン男爵は牢屋にぶち込まれたわけである。
臭い男には臭い場所がお似合いだ。
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さて、ゴードン男爵はカチェリーナに対して必死に事情を説明し、弁解し始めた(カチェリーナはすべて知っているが)。
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