シャム猫

ジョエルの場合９

「？恋人誘えばいいじゃないですか？」

・・・ちょっとへこむ。

「じゃあ告白してみたらどうです？ジョエルから告白されて、断わる人いないんじゃないですか？」

自分だとは思っていないのだろうな・・・

まぁ、すぐにすぐ、どうにかなるとは思っていなかったのだから、しょうがない。

ぬいぐるみをあげた時の喜び様を見れば、好感度は上がった筈。

地道につめていくか。

手繋ぎデートもできたし、頬やこめかみだけど、ＫＩＳＳもできた。

明日も、手を繋ぐ約束ができているのだから、それで良しとしよう。

男湯の暖簾を掻き分けて中に入る。

奥の方の空いているロッカーの中に、持ってきた着替えを開いて置いた時、替えの靴下が無い事に気が付いた。

途中で落としたか？

とりあえず、中から部屋の鍵だけを取り出し、ロッカーの鍵を閉め、来た道を探しながら戻った。

・・・部屋の前まで戻ってきたが、ここに来るまで、どこにも落ちていなかった。

後は、部屋の中だな。

鍵を開け、入って行く。

あっ、あった　あった。

ベッドの脇に落としていた。

拾って、振り返ると、湖箔が壁の方を向いて、横になっているのが見えた。

寝るの早くないか？

風呂場からはシャワーの音が聞こえている。

榊は風呂に入っているのか。

湖箔の横に移動し、小さな声で名前を呼んでみるが、返事がない。

やっぱり寝てるようだ。

起こさない様、静かにベッドに手をついて、顔を覗き込んでみる。

可愛い・・・

湖箔の頬にかかっている髪の毛を、そっと搔き揚げ耳の後ろに流し、ＫＩＳＳをしようと顔を近づけた。