シャム猫

ジョエルの場合１１

湖箔との手繋ぎデートを楽しんでいる時、知らない男から声をかけられた、あっちもデートのようだ。

隣に彼女を連れて、湖箔に声をかけるか？

写真を撮って欲しいなら、俺や榊でもいいはずだ。

より近くに居るのだから。

榊が間に入って用件を聞いたが、湖箔に用があるという。

俺の彼女に何の用かを聞けば、名前を教えて欲しいだと？

俺の彼女だと言っているのに、堂々とナンパかよ！

思わず睨んでしまったが、名前を聞いて、どうするのか聞いたら、まさかの人捜し。

湖箔って名前の男の子で似ている？・・・ほぼ、本人だろ。

銀髪ですみれ色の目？・・・いやっ、違うのか？

それとも、髪を染めて、目はコンタクトにでもしていたのか？・・・いやっ、でも、だったらそう言うか。

友達の恋人が、急に居なくなった・・・か。

ん？！恋人？！

思わず後ろを振り返ってしまったが、湖箔は顔面蒼白で、今にも倒れそうになりながら、首を横に振っている。

繋いだ手も、小刻みに震えていた。

本人で間違いなさそうだ。

・・・よし、黙ってよう。

何らかの理由で、逃げてきたのだろう。

理由は、とても気になるが、後で聞き出せばいい。

取り敢えずは安心させる為に、繋いだ手をぎゅっと握った。

「知らないみたいだ」

「そうか、そっくりなんだけどなぁ、ほら」

写真を見せてきたから覗いてみたが、そこに映っていたのは、色味は違っていたが、やはり湖箔だった。

そりゃ、そっくりだろう。

思わず、無言になってしまった。

「確かに、白雪に似てるな」

榊、Ｇｏｏｄ　ｓｕｐｐｏｒｔ！

だが、まだ疑っているみたいだ。

引く為の決め手にかけるのか？

どうしたものか・・・


まっ、どっちにしろ、意地でも白は切り通させてもらおう。