シャム猫

大器晩成らしい

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ジョエルの場合18

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終わりのベルが鳴り、教室を出ようとしたら、生徒に呼び止められた。

解からない所を教えて欲しいと言われ、応じていて、食堂に行く時間が遅くなったが、今日はもう、受け持ちの授業はなかった筈。

ゆっくりと食事を取り、職員室に戻ると、部屋の中が少し、ざわついていた。


「何かありました?」

「ええ、湖箔君が熱を出したらしくて、ついさっき、美和先生が保健室の鍵を持って、かなり慌てて出て行ったから、驚いたというか何と言うか・・・」

「私も付き添ってあげたかったけど、次、授業がありますし~」

「心配だけど、もう行かなきゃならないのよね」

「この後、ないんで、見ときますよ。部活の顧問でもありますから」

「狼が2匹になっただけじゃ・・・」

「失礼な」

「あっと、時間がないですから、もう行きますけど、お願いしますね」

なんだろう、湖箔は、女性教職員の妹的立場なのだろうか?


先生達が慌ただしく職員室を出て行くのを横目に、自分の席へと戻り、帰りの支度をした。

クラス担任をしている訳じゃないから、就業のベルが鳴ると同時に、帰ろうと思えば、帰れる。

机の上を軽く片付けると、スマホをボディバッグに入れてから肩にかけ、ホワイトボードに、保健室にいると記入し、教頭に断わりを入れてから、職員室を出た。


保健室の扉を静かに開け、中に入る。

窓際の一角、カーテンは閉まってるが、人影が透けて見える。

近寄って行き、カーテンを開け、中を見た。

てっきり、美和先生が付き添っているとばかり思っていたが、違う奴だ、意外だな。

「(美和先生は?)」

「(かなり熱が出てきたから、美和先生は、湖箔が持ってるって言った解熱剤を、寮まで取りに行ってます)」

「(そう・・・君は?もう、とっくに授業、始まってるよ?)」

「(先生が取りにいってる間、一人にするわけにはいかなかったので・・・)」

「((ふぅん)じゃあ、後は見ておくから、行っていいよ)」

「(いやっ、戻るまで、見てるよう言われてるので)」

「(一人いれば充分だろ)」

「(えっ、でも・・・)」

やけに食い下がるな?

ああ、そうか。

「(美和先生には言っておくから、大丈夫。それに、湖箔が、ウィッグなのは、俺も知ってるよ)」

湖箔のウィッグを、梳かす様に触りながら、告げた。

「えっ?」

クスッ、そんなに驚く事か?

「(他の奴に教えるつもりは無いから、安心して。まっ、そういう訳だから、君は授業に戻りなさい)」


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