泉の聖

４２

それからアレキサンドは定期的に現れるようになった。

現れるようになってさらに８年経ち、もう２６歳になった筈。

指摘されてはいないが、たぶん、何となく気付いているだろう。

私が、まったく歳を取らない事に。

この世界に来たのは、花も恥らう乙女１７歳、高校３年になったばかりの、ゴールデンウイーク初日の朝。

それから、私の時は止まったままだ。

アレキサンドが１４歳の時に出会い１２年。

そういえば、爪も髪も伸びてない。

今頃気付いた・・・

アレキサンドが来る前、不老を感じる事も気にする事もなかった。

来るようになり、その成長を見る事で、時の流れを知り、自分が取り残されていくのをまざまざと感じるようになった。

後、何回、アレキサンドはここに訪れてくれるのだろうか？

代わり映えのない日々の中での楽しみになっている。

その内、結婚して、子供が出来、孫が出来、年老いて死んでいく。

年４回来るとして、平均寿命はどれくらい？

医療が発達していなそうだし、やっぱり短いのかな・・・

死ぬ間際まで来いなんて言えないから、数える程しか会えないのかも知れない。

・・・

私は、この泉にどれ位の期間、拘束されるのだろう。

「聖様？どうされました？」

私が珍しく考え込んでいるからか、ヴォルフが話しかけてきた。

・・・そう言えば、ヴォルフにも寿命があるよね。

確か、一族で何世代も的な事を、言っていたのだから。

普通の狼なら６～８年くらい？

だとしたら、とっくに死んでるだろう。

ヴォルフは後何年、一緒に居てくれるのだろうか。

長生きだといいな・・・