泉の聖

大器晩成らしい

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時が流れアレキサンドも70歳位だろうか?

途中から面倒になって、歳を数えなくなったから、はっきりとした年齢は分らない。

今日は跡継ぎだといって、孫を連れてきた。

金髪金目で、アレキサンドの若い頃にそっくり。

その男の子は、私を見て随分と驚いた顔をしている。

「失礼しました。ミハエル カルバニールと申します。」

どうやら、私の容貌が、思っていたより、若すぎたらしい。

永遠の乙女だからね。

強制的に。

チラッとヴォルフを見たら、何かを察知したのか、ブルッと震えていた。

「何か一瞬寒気が・・・」

おじいさんが、自分と同じぐらいの歳から、ここに通って来ているのを聞いていたら、そりゃ驚くだろ。

アレキサンドも一時期私を見て、何かを聞きたそうにそわそわしていたけれど、いつのまにかそれが無くなっていたから、何も言わなくても、自然と理解したのだろう。


「私も、もう齢です。後、何回、こちらに来られるかも、いつお迎えが来るかも判りません。ですので、私亡き後は、孫のミハエルが、引き続き御用をお聞きに参りますので、顔を覚えてやって下さい」

とうとうそういう齢になったのか・・・

年に数回しか会えないとはいえ、人恋しい寂しさと退屈さを埋めてくれたのは、アレキサンドだ。

柄にもなく、眼が潤んでくる。

まだまだ来れる限りは会いに来て、視察の際の街の様子や世間で流行っている事とかを教えて欲しい。

「ええ、もちろんです。今日が最後ではありませんよ。顔繋ぎをしておいただけです。急に、知らない男が来て、私が死んだから、次からは、自分が来ます。と言われても、直ぐには信用できないでしょう?慣れる様、来れる限り二人で伺いますよ」

そうだね、そうして貰えると助かる。

ありがとう、アレキサンド。
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