ネオ・クリーチャー

Aiリアン

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謎の男(後編)

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 俺は、以前手持ちのクリーチャーで暴走した別のクリーチャーを止めようとした傷だらけの女子高生「リン」からもらったクリーチャーを操るコントローラーを貰った。この中に何かクリーチャーに関する貴重なデータが入っている可能性があると調べている最中だった。こんなことに俺は時間と労力をかなり注ぎ込んでいる。もしかしたら、俺が世界でクリーチャーに関する情報を一番知っている人間ではないかとつくづく思う。俺のこの基地にはクリーチャーが出没した時の新聞記事、ネットの記事、映像を保管している。それも、記事として取り上げられる場合その部分を切り取り、文具店にあるノートに張り付けている。映像に関しては、動画やSNSで見つけたものは保存する癖をつけている。これじゃあ、ただの怪獣、怪人マニアだと思われるだろう。しかし、俺はクリーチャーから人々の平和を守るために戦う戦士。まだ世間ではいい印象を持たれてはいないが、実際はヒーローのような存在だろ?
 俺は慢心をした後に、テレビのニュースで取り上げられていた。謎の会社員2人が自殺をしたニュースを見る。しかも、その社員は同じ会社に勤務するサラリーマンのようだ。一人は家族持ちの住宅マンションに住んでいた男性が妻を殺害し自殺。もう一人は、突然奇妙な唸り声を出し会社近くの地下鉄駅で苦しみだしたという。その後周りの人たちに暴行を加えた後、電車の線路に飛び出て自殺。地下鉄電車に弾かれて死亡したらしい。
 たまたま見たこのニュースには何か引っかかるところがある。なぜ同じ会社員なのか?何があったのか。
 俺が考えている時に、コントローラーからクリーチャーの詳細データが確認できたとの通知がパソコンのミニターに出た。クリーチャーの構造、クリーチャーのパワー、さらにはクリーチャーを使った形跡や、クリーチャー視点から見た映像が出てきた。

 「なんだ?ERUGA。エルガ?何の意味が」

 データの文字から、複数その言葉が目立つように現れる。いったいERUGAとは何なのか?そして俺は映像のデータを確認する。

 「あの少女とヤンキー集団。そうか。このヤンキーたちが別のクリーチャーを操っていた奴らか。んで、同時にいじめっ子たちだったってことね」

 女子高生の言うとおりだった。いじめっ子のヤンキー集団がこの後逃げていくと言っていたのを思い出す。本当にコントローラーを捨てて逃げていった。なんて奴らだ。この後町がとんでもない目に遭うというのに。
 しかし、このコントローラーはどこで誰から得たのか。それを調べることにしよう。そのついでに、ERUGAは何の意味があるかも調べておくか。

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  高級スーツの男は、ある現場に向かっていた。時刻は23時。とある噴水がある広々とした公園にある女性と待ち合わせをしている。
 男の手には、クリーチャーを操るコントローラーを手にしている。この男はこれまで数々のクリーチャーを提供してきた。その幅層は老若男女問わず。中には家族に虐待をされて逃げ場を失った子供にプレゼントとしてクリーチャーを与えたことも、そして、ホームレスの人や裏社会で生きる人にも。世の中のありとあらゆる人がクリーチャーを手にしている。
 そして今回も、クリーチャーを求める依頼人に渡すのである。

 「クリーチャーをお買い上げいただきありがとうございます。マリ様」

 今回渡す女性がマリと呼ばれる女性である。見た目はロングの茶髪に清楚な服装、身体も細めの日本人の特融な黄色い肌。まさに日本人清楚な見た目の女性である。

 「これお金です。20万ですよね?確かめてみてください」

 茶色の封筒の中に入っているお札の数を数えだす。確かに20万入っていた。

 「確かにお受け取りいたしました。では、もう一体のクリーチャーを」

 「じゃあ、使ってみます」

 マリはクリーチャーのコントローラーを手にする。どうやらマリはすでに一体クリーチャーを手にしていた。しかし、それだけでは不満であるというため、もう一体のクリーチャーが欲しいという。

 「どうやら上手に使っていただけたようですね。いかがですか?」

 「もうスッキリするわ。私のことを裏切った罰なのよ。これは、ちょうどいい罰の執行道具よ。これからもあなたに依頼するわ」

 「かしこまりました。ではまた」

 そして二人はお互いに背を向けて別れていった。

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 夜のとあるIT企業に一人残って残業をしている女社員がいた。部屋は暗く、その女はパソコンに集中しひたすら作業に取り掛かる。外を見ればもう深夜であるのをはっきりとわかるくらいの暗さで、近くのテーマパークにカラフルなLEDによるフラッシュで奏でる景色が見える。
 女が外の景色に魅了されている中、もっと近くで景色を見ようと窓の近くまで寄っていく。
 綺麗だった。この会社に勤めて、残業がたくさんあったけど、こんなにも綺麗な彩りを見ることはなかった。早く帰りたいなぁと頭の中で考えている時だった。突然窓の外に女と同じくらいの伸長をした洋風の人形が、女の視界を下からだんだん目の前まで上がってきた。そして目の前に現れる。しかもその距離は真正面と言えるほど。その人形は、水色のドレスを着て、細長い腕と脚にロングの茶髪の髪の毛。目の前に現れびっくりした女は後ろへ4歩下がった。

 「え?何これ」

 すると人形がだんだん女のほうへ近づいていき、窓をすり抜け中に入ってきた。

 「何?いや!来ないで!誰か!」

 真っ暗な部屋に女の叫ぶ声が聞こえる。しかし、誰も来なかった。
 人形が奇妙に微笑むような声で女に近づいていく。すると、人形の目が赤く光って女を凝視する。
 女は目を見つめた。そして3秒くらい後に、女は気絶した。そして人形が目を赤く光るのをやめ、指をパチンと鳴らすと、突然女が発狂し暴れだす。床を蹴り、自分の首を自分の手で絞めつけ、白目をむきながら暴れる。そして立ち上がっては奇妙な叫び声でデスクに頭を数回打ち、突然身体が痙攣するように震えだす。まともにしゃべることができない状態であるその姿は、危険ドラックの効き目が効く時のような姿だった。そして女は床に散らばった筆記具を一本手にした。
 人形は左頬を上げて、ニヤリと笑う。しかし、その姿は誰も見えない。
 女性がゆっくりと立ち上がって、人形のほうに近づいていく。そして、無言のまま人形を見つめる。次の瞬間、女性は喉元にペンの先端を向け勢いよく差し込んだ。その部位をえぐりながら血が人形に飛び散る。そして女性は倒れていった。喉から出た血と口から噴き出した血が床に広がっていく。
 
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 俺は、またニュースで同じ会社で働く会社員が昨日死亡しているニュースを見ていた。原因は社内で自殺だという。
 続けて同じ会社員が死んでるとなると仕事に支障が出るんじゃないか?いったいこの会社には何があったのか知りたくて仕方がなかった。ただ、どうも奇妙なのだ。どうして、こうも続けて変な死に方なのか?今回は女性であるというのも気になる。以前は男性2人がマンションと駅で自殺。もう一人は社内で自殺。この事件に何か嫌な予感がするのを俺は察した。

 「クリーチャーか?」

 俺は、その会社付近に向かうことにした。
 俺は机の上にあった「ERUGA」という文字を書いたメモに目をお向けた。いったい何の言葉なのか?未だにわからない。何か関係ある言葉なのか?
 俺はその意味を後回しにして、現場に向かう準備をした。

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 とある商店街に人々が集まっていた。商店街はにぎわっている。その群れの中に、あの高級スーツの男が歩いていた。道の真ん中を堂々と歩いている。ここにいる人たちの中でかなり目立つファッションであるが、気にしなかった。歩く途中であまりにも多い人込みなので、若いショートカットの黒髪でビジュアルスタイルの服装を着た女性と肩がぶつかった。

 「申し訳ない」
 
 高級スーツの男が謝るが、女は無視して歩いて行った。なんだあの女は。そんなことを考えていると、突然商店街にワゴン車が突っ込み、商売をしている人やお客さんが大慌てで非難する。

 「なんだ?」

 高級スーツの男がそういうと、ワゴン車から、血だらけの男が社内から出てきた。頭からちを流し、手やお腹あたりに刃物か何かで刺した跡がある。
 
 「キャー――――!!」

 人々が叫びだす。そしてその場を逃げていく。

 「まさかあの人、コロナコーポレーションの」

 すると人々の群れの中から人形のクリーチャーが浮いて出てきた。

 「やはり、マリ様の仕業ですか」

 すると逃げて誰もいなくなったところに、高級スーツの男が会いたがっていた人物が現れる。
 黒い装甲を身にまとい、片手に刀を持つ。奇跡の再会のようだった。そう、その人物とは

 「ハルマ...。ようやく出会えた」

 黒い装甲の人間が人形のクリーチャーに向かって高速スピードで走りだし距離を近づける。

 「お前は標的に洗脳をさせることができる「マインドコントロール」のクリーチャーだな」

 刀をクリーチャーに向かって振り、両断しようとする。しかし、人形のクリーチャーが交わし避ける。

 「今までもお前の仕業か!お前がすべての!」

 台詞を言い切ろうとしたその時。ハルマの背後に男の声が聞こえる。

 「ハルマ!ようやく会えたな。クリーチャーを多々一人で片付ける者!お前の出会いを待ち望んでいた」

 ハルマは背後の高級スーツの男をバイザーでとらえる。なんでこんなところに人が。危ないだろ。
 謎の男に逃げるようハルマは伝えた。

 「なんだあんたは!逃げろ!」

 人形のクリーチャーは宙に浮かび装甲の人間を凝視する。

 「降りてこい!言っておくがお遊びなんかじゃないぜ。これは立派な仕事だ」

 両足に体重をかけると、人形に向かって高くジャンプする。そして、両断の瞬間だと思えるところで刀を一振りした。しかし、刃が人形のクリーチャーの首元で止まる。
 重装甲のロボットが盾になっていた。

 「機械生命体のクリーチャー!?」

 そして黒い装甲のハルマを一蹴りして地面に向かって吹っ飛ばす。
 身体中に衝撃を感じたハルマはゆっくりと立ち上がろうとするが、ダメージがでかい。すると高級スーツの男がハルマに近づいてきた。

 「お前の戦いはそんなものか?」

 「なんだあんたは!逃げろよ!何してんだ」

 「お前のことを見届けるためにここにいるんだよ。ハルマ」

 そういえばさっきこの男俺の名を言っていた。いったい何者だ?何故俺のことを知っている?

 「誰だ、お前」

 「俺は...エルガ」

 エルガ...その言葉でハルマは硬直した

 

 
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