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ネオ・クリーチャー
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ネオ・クリーチャーの通信が次々と途絶え始める。通信機能に余計なノイズが会話を邪魔し、うまくやり取りが出来ない。
ネオ・クリーチャーの通信システムは、人間でいうテレパシーのように相手に向かって心でメッセージを送るのと同様、口では喋らずに内部に内蔵されている「メンタルコミュニティシステム」というもので会話が出来る。いわば、テレパシーのように心で会話できるのである。しかし、そのシステムに異常があるようだった。
まだ生き残ったネオ・クリーチャー同士で以上の検査をしようとしたその時だった。
突然、辺りに高火力のエネルギー弾が散り、地面がエネルギー弾の衝撃で辺りの砂をまき散らした。
誰かが空中からゆっくりと降下し、地面に足を着けた。何者かを確かめるが辺りの砂嵐で全員前が見えない。
そして、前に立っている者が誰か早く確かめるために、砂嵐を払いながらも前に進む。
「オメガっていうのはどこにいる?ここか?」
その声の方に是認視線を向ける。しかし、目にも留まらぬ速さでネオ・クリーチャーを次々と胴体を斬り刻んでいく。刀らしき武器がネオ・クリーチャーの群れを瞬時に移動していく。そして、斬られて初めて分かったのだ。
ハルマ第1号だ。しかし、斬られ終わった者は、上半身と下半身が分裂され、そのまま床に倒れこむ。
「ここにはいないようだな」
残り数体のネオ・クリーチャーが黒い装甲の者に殺られないように身構えた。
「なぜ我々を襲う。まさか人間共の味方になるつもりか?」
するとその返事が全員に返ってきた。
「今あるこの世界の平和のためだ。そのための礎となれ」
黒い装甲のハルマが、相手を翻弄させるような素早い動きで、敵の攻撃を避けながら、隙あらば容赦なく体を両断していく。
自分のコピーであるネオ・クリーチャーの攻撃はだいたい予想がついているようだ。自分ならどう攻撃するか。それを考えている。そして、動作がほぼ的中し読めるのだ。
一撃も食らうことなくネオ・クリーチャーを片付け、オメガを探し出す。しかし、それらしい人物はいなかったようだ。
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辺りが真っ白の広々とした空間にオメガ様と私はいる。ここはクリーチャーの開発に使用する研究所。ここでクリーチャーが誕生した。
5年前のことだった。人工知能の進化は人間の予想を上回る勢いで進んでいた。この研究には、よりこの社会を、未来の技術の可能性が発見できるかもしれない。そう私以外の研究者も望んでいた。そして開発に成功したのがクリーチャーだ。人間がコントロールすることのできる賢い操り人形。これは後に企業でのワークスタイルを変え、人間の活動を補助する物として利用できる。それだけではなく、医療での患者の手当てや、災害時による救護の道具といて軍事にも役立てられる。誰もがそう信じていた。
しかし、私たちはそれを人間に提供するためにはいろいろとクリーチャーのサンプルが必要だった。そのため実験としてクリーチャーを使用した可動の実験を行った。だが、研究者はそのシステムを悪用した。人間社会にはそういった新たな物、人々を支える物を悪用する人間は必ずいる。
研究者にもそんな奴がいて、そのせいでクリーチャーを使った暴動を起こした。私は裏切られたのだ。この先の未来に人間を支える物だったはずが、世界を破壊する兵器のようになってしまったのだ。
結局止めようも、現代兵器では倒せない。だから研究所を荒らされた。壊された。そしてイカれた連中に悪用され町は崩壊した。
クリーチャーを止めるために必要な物を作らないといけなかった。そのために開発したのがネオ・クリーチャーである。
ネオ・クリーチャーはクリーチャーを悪用する者を排除し、クリーチャー撲滅のための存在だった。
そこでハルマ第1号が誕生した。威力をクリーチャー以上に上げ、自立してターゲットを排除するように設計した。
そのためにネオ・クリーチャーは知能指数を上げようとしたが、これがハルマ第1号を暴走させてしまった原因だ。
私以外の者は皆ハルマに殺され、もはや止められるのは私だけだった。だが出来なかったのだ。
そして彼をどう対処するかを放棄した私は、この世界の崩壊を見届けることにした。もう止められる者がいない。だから、ハルマの海の親として彼を見届ける。私も彼と同じこの世界を破壊するものとして生きることにした。
人間はみんな屑で愚かなのだ。クリーチャーを悪用するのは人間の本能だ。だから仕方がない。止めることはできない。ならば、人間ごと滅ぼそう。そして、ネオ・クリーチャーの支配する新たな世界を作ることに賛成したのだ。
ハルマ第1号も、人間を観察する知恵が備わり、破壊を行った。人間の世界は何をやっても平和にはならない。平和など不可能だ。そう判断していた。今の我々のように。
しかし、人間が使用する戦闘兵器と彼のパワーで巨大な爆破に巻き込まれたハルマは、ブレインのデータが破損してしまい死んだ。しかし、それは仮死状態だった。
そして、過去の記憶をなくした彼は再び蘇ったのだ。
ハルマはそこまで詳しく自分のことを知らない。彼の記憶がなくとも、我々は覚えている。4年前の事件をね。
オメガ様に彼の話をしていると、妙に嬉しそうで楽しい表情を浮かべる。
彼もネオ・クリーチャーだ。しかもハルマのタイプとはまた別で、彼の身体はあらゆる武器が体内に備わっている。本物のサイボーグだ。
もはや人間と同じような形のネオ・クリーチャーとは違い、よりサイボーグ化したのがオメガ様だ。
「にやけが止まりませんか?」
「そりゃねぇ。彼と戦ってみたいというのは何度も聞いているだろ?彼を超えてみたいんだ。だから、欲しいんだ。かつてこの世界をネオ・クリーチャーの世界に導こうとした者を。我々にとってヒーローになってもおかしくなかった彼をね。頼もしい仲間がいたほうが心強くていいだろう?同じ者として仲間にしたいんだ。そして彼を超えてみたい。彼は俺にとって最高の友でありライバルさ。だからどうしても手に入れたいんだ。彼を。ハルマ第1号を」
やはりにやけ顔になっている。どうやらだいぶ気に入っているみたいだ。
さて、後はハルマの決断次第だ。どうする?黒い人間...。
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エルガと離れて、俺は今研究所の最上階にいる。真っ白な艶やかなタイルに包まれたフロアには、真ん中に大きな装置が設置されてある。その装置が我々ネオ・クリーチャーのエネルギーを創り出す高炉となっている。これによりネオ・クリーチャーのパワーがダウンしても、再び健全な状態へとパワーを上げてくれる。
この装置にはその他にも、クリーチャーの修理、データの管理、内部の改造システムが備わっている。
これ一つにクリーチャーのトラブルを改善させるシステムが蓄積されており、いつでもクリーチャーの開発に取り組めるのだ。
負傷したクリーチャーのメンテナンスはここで行われる。尚、この中にあるデータは今後の新たな時代を創るための貴重な資料となる。
クリーチャーの誕生はここから始まった。そしてこの忌々しい人類が、ついに我々ネオ・クリーチャーによって破壊される。
もうすぐ人類の歴史にピリオドが打たれる。その犠牲にはなってほしくないのが彼だ。
ネオ・クリーチャー第1号、ハルマだ。黒い人間と世間で呼ばれ、数々のクリーチャーをたった一人で滅ぼしてきた。
だがその正体はかつて今ある世界の破壊を始め、平和を奪った者。ネオ・クリーチャーはそういう存在であり、彼はその象徴だ。我々と共に新時代の幕開けを手伝ってくれ。それが俺の願い。
俺は巨大な高炉を見つめ彼が今何をしているか考える。
数分経って、このフロアが少し揺れ始めたのが伝わってきた。地震か?一体何が起きているのか。
俺はフロアに向かう際に使用したエレベーターに乗ろうとしたその時だった。
いきなり背後から何か爆破する音が聞こえ、後ろを振り向いた。
「お前が...オメガ、だな?」
「...ハルマ第1号」
「お前の部下共に教えてもらった。ここが俺たち、ネオ・クリーチャーを造った施設なんだって?俺たちが死ぬにはちょうどいい場所じゃねぇか。仲良く心中しようぜ」
床を突き破ってきたのは、黒い装甲の者。これがハルマ第1号及びネオ・クリーチャーの第1号だ。
床に上半身を降ろしていた彼は、すぐに起き上がり俺を見ている。そのバイザーの奥で。
「なぁ、エルガも呼んで欲しいんだが、どこにいる?」
「フン。残念だがここにはいないね。彼に何かメッセージがあるなら伝えておくが。言いたまえ」
「いや、直接聞きたいんだがなぁ。あと、もう時間もないようだし。まぁとりあえず、お前だけは片付ける」
そう言って彼は、筒状の物に何か小さなチップらしきアイテムを装填させ「YES」と一言答える。すると、先から刀の刃の形をした黒い長細い物体が現れた。
右手に力強く握りしめた後、刃の部分を右肩に乗せる。その状態でこちらに向かった走ってきたのだ。
どうやらこれから彼と一戦を交えることになるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おらぁぁぁぁぁ!」
怒声を交えた掛け声と共に、俺は刀をオメガというネオ・クリーチャーに向かって振りかざす。オメガは華麗に俺の剣捌きをを避け、隙を見つけられた間に強烈な蹴りを食らってしまった。その蹴りは、装甲にもダメージを与え、内部にまで食らった感覚を伝達させる。
こいつは俺のコピーの奴とは違うな。何か身体を改造してやがる。俺は瞬時に頭の中でそう予想した。
俺が躊躇している間に向こうから反撃をしてきた。こっちはさっきのダメージがまだ身体に残っている。こいつは気を抜いていたら確実に殺られる。
俺が何とかギリギリのところでオメガの打撃技を避け、隙を見つけようとしたが見つけられない。それどころか防御さえも出来なかった。
何故こいつだけこんなにも手強いのか。
「お前、どうなってんだ?なんでこんなに!」
「俺はお前のコピーであるが、それと同時に通常のクリーチャーが使用できる効果技も使用可能なんだよ。パワーは同じでも、それ以上にクリーチャーは持つ様々な効果を使いこなしてる。俺のほうが上なのはそのため。お前はただのネオ・クリーチャー。俺は両方の特性を持つ者!」
台詞の後にこれまた強烈なアッパーを顎に食らった。俺の身体が数センチ宙に浮いた後、後ろ回し蹴りにより後方へ吹き飛ばされた。顎と胸辺りがダメージにより痛みを感じる。そのまま背中から倒れ、背中にもダメージがある。
「うっ...。アイツ、俺よりも凶悪な奴になりそうだなぁ」
俺がぼやいた後オメガがボソッと何か言った。
「この程度なのか?」
何がと返事をした俺に、オメガはこう返す。
「お前がこの世界を滅ぼそうとした。その規模は絶大であり、もはやお前が戦ったネオ・クリーチャーに比べれば遙かにパワーが上な筈。どういうことだ?」
俺は立ち上がり言った。
「こっちが聞きたいくらいだよ。お前はただのネオ・クリーチャーじゃないんだろ?」
「それでもこの差はおかしい。どういうことなんだ一体」
「んなこと言ってられんのも今の内だけどな。言っただろ?俺たちはここで死ぬって」
「そうだ、それは何なのか聞きたいなぁ」
だが俺は答えなかった。
それよりも俺が聞きたいのは、4年前のことだ。俺がどういう奴だったか詳しく聞きたかった。だから知っている人物と言えばエルガだけだと思った。しかし、こいつも知っているようだ。
俺はオメガに質問をした。
「それより、お前は知ってんのか?俺が4年前どういう奴だったか?この世界を壊そうとしたっていうのを聞いたぞ。その時の状況が知りたいなぁ」
「4年前ねぇ。お前は我々にとってヒーローだよ。人類をたった一人で滅びしていく中、君は1度死んだ。仮死状態でね。そして君は、自動修復機能によってその1年後によみがえった。だが残念なことに、お前はその時の記憶がない。記憶までは修復不可能だったようだな。だが、お前の功績は素晴らしいものなんだ。是非胸を張ってほしい。俺も一度は拝見した。そして俺は気に入った。仲間にしたくなったんだ。そして、再び見習った。その栄光を俺に引き受けようとエルガも手伝ったんだ。そして我々ネオ・クリーチャーはこの世界に宣言する。『この世界に革命を起こす』とね。愚かで救いようのない人間を滅亡させ、新たなる生命であるネオ・クリーチャーによる新時代を開拓したい。人間のいない世界。それが本当の平和だ」
俺はすべてを聞いて思わず仮面の下でにやける。そうか...。やはり俺はかつてこの世界の平和を壊したんだな。
確か1千万人も命を奪ったんだっけな。もう俺は凶悪犯であることに変わりはない。
俺はオメガの食らった痛みを堪え、反撃をする。敵の動きに集中し、しっかりと目を見て隙ができる瞬間を確認する。
オメガが拳を顔面に一発ぶつかるのを見抜いた俺は、同時に左手で拳をキャッチした。そして、素早く刀で一振りオメガに食らわせようとしたが、なぜか瞬時にキャッチされた。
その状態でオメガが言う。
「だから、お前もこっち側に戻ってきてほしい。人間はクリーチャーを使って人間の生きる世界に害をもたらした。どれ程の犠牲が出たか。同じ種族同士傷つけあい、平和な街を破壊し、欲や野望に飲み込まれこの町に生きてきた。皆クリーチャーを求めては破壊を繰り返し、互いに共存することもしない。人間はなぜ一人で生きていけないか。それは一人一人が責任感がなく、自立心が乏しく、他人を傷つけるのが好きだからさ。孤独になるのを恐れるが集団になれば間違ったことでも多数決で多い方が正しいと判断する。だから無理なのさ」
「じゃあ、俺たちはそんな事がないっていうのか?」
「まぁ、ネオ・クリーチャーは人間とは違い知能数も高い。及び人間では成し遂げられないことも成し遂げられる。また、人間と違い自ら学習しようとする思考も高いため、君も記憶力や判断力が極端に高かったりするだろう?」
俺たちはお互い腹部を蹴り、距離を離した。
確かにそうかもしれない。俺の記憶力、それに様々な武器を開発する技術力もあったのは不思議だった。やっとその答えがわかった。間違いなく俺はネオ・クリーチャーなんだ。俺は確信する。
「お前はネオ・クリーチャー。人間が世界を汚すための道具を片付けをするなんて言う汚れ仕事をするのがヒーローではない。人間を滅ぼしてこそ本当のヒーローだ」
俺は左手をキャノンに変える。そしてエルガの発言にこう返した。
「確かに人間ってどうしようもない種だよな。クリーチャーを対峙できた俺だったから平和にできただけで人間の
力ではどうすることも出来ないし、そもそも全ての悲劇を招いたのも人間だ。クリーチャーは悪くない。本当の悪は人間なんだなぁ」
「やっとわかってくれたか!ならば、もう答えは決まっただろ!我々と共に人類を滅ぼし...」
「だが、人間だろうがクリーチャーだろうが世界の平和を壊す奴はみんな止める。俺がかつて世界の平和を壊したように。俺は戦うぜ。今度は、今あるこの世界の平和を愛する者のために」
「もうお前は人間を守るヒーローなんかじゃない。そんなことしても4年前の罪は消えるわけではないぞ!」
「そんなもん知ってる!俺はいろんな連中に何度も言ってきた。まぁ、お前に言うのは初めてだがな。俺は人間のためじゃない。この世界の平和のためだ。俺は、今あるこの世界を守るんだ!俺はヒーローでもない。だが悪でもない。ただ今ある平和のために戦う『黒き戦士』だ!」
俺はエネルギー弾を辺りに放つ。オメガは必死に身構えながらも俺を止めに行こうと近づいてきたが、クレーンで天井に登り上からエネルギー弾を投下させる。途中で謎の大きな装置に的中し、フロア中に大きなボリュームのサイレンが鳴り響いた。辺りに赤いランプが点滅し、フロア中が真っ赤に変わった。その中でひたすらエネルギー弾を発射し続ける。
オメガが何か言っているようだが、装甲のマスク内にも影響するほどのうるさいブザーとサイレンの音で何も聞こえなかった。
エネルギー弾をオメガめがけて放とうとした時だった。
オメガの身体から4つの触手が現れ俺に纏わりつく。地面に引きずり降ろし、今度はランチャーで俺の装甲に売ってきた。何発もの弾丸が装甲とぶつかり、火花を散らして地面に砕け落ちる。
俺は刀で触手を切り離すと、今度はスモークを取り出してオメガに投げつける。煙幕が周りを囲い俺はバイザーのクリアヴィジョン機能で障害物を透明化にして奥が見えるようにした。オメガの姿が見える。煙幕の中を堂々と立っていた。
俺は距離を近づけながら膝蹴りを食らわせることに成功した。その下敷きになったオメガは、強力で俺の上半身を両手で支えそのまま前のめりにさせられたと思ったら、勢いよく前方に飛ばされた。フロアの壁に衝突し地面に倒れる。
やはりオメガだけはただ者じゃなかった。
俺はオメガをどう対処するべきか悩みながらも立ち上がり、キャノンの銃口をオメガに向けた。しかし、瞬間的ともいえるスピードでこちらに走ってきて銃口を掴まれた。そして、刀とキャノンを勢いよく握り破壊されてしまった。
「黒き戦士...お前のその正義、ここで終わらせてやる」
だが、俺の身体がだんだん麻痺していき動きにくくなったのと同時に、オメガも身体から火花を散らしながら前のめりで倒れる。
「ようやくか...よ」
オメガはゆっくりと俺の顔を見て言う。
「何を...した...」
俺はオメガに向かって答える。
「地下のクリーチャーのアクティブプロテクターシステムを...シャットダウンした。ただし...あれは...リミッター式だから、時間がここまでが最低だったんだ。そのあとに爆破できるよう起爆装置もセットした。恐らくシャットダウン後に爆破する。これで俺たちクリーチャーは全員死ぬ。仮死状態とかはなく、永遠に動かなくなるだろうな」
「誰がそんな...もの」
俺は考えたが恐らくエルガだろう。何かあった時のために秘密で作ったのだな。
もうオメガは動かなくなった。それと同時に俺も意識がなくなっていく。ゆっくりとその場に倒れる。指先を動かそうとしたが無理だった。もう何も考えることが出来なくなっていく。何かが俺から離れていく感覚がする。恐らくこれが魂という奴なんだな...
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どうやら地下のクリーチャーの意識を保ち機能するアクティブプロテクターをシャットダウンされたようだ。
これですべてのクリーチャーは死んだと言えよう。私が念のために作った装置にオメガかハルマのどちらかが停止させたのかもしれない。
私が起動してもよかったのだが、あの後爆破が起きて何も使えなくなったのだ。
つまりこれは、人類はクリーチャーによる破壊から免れ助かったという結末となったわけだ。
私たちはこの世界でまだ生きていくことを許された。しかし、人間は助かったとは言え全てが終わったわけじゃない。我々人間は愚かで救いようもなく、このまま衰退を続く世界に取り残されたのだ。
人間はより良い社会を目指し、人間を支える物を生み出す。それは時代と共に進化していくだろう。その過程で人間は新たな生命の発見により人間を超える存在を生み出す。今この物語を読破している間にも、その存在は私たちの生きるこの世に姿を現していることでしょう。
その正体は果たしてこの人類にどう影響を及ぼすのか。その生命は人間達をどう見るのだろうか。
もしその存在は人類を滅ぼしていき、人間が生きる世界を破壊する時が来た場合、誰が助けてくれるだろうか。そんな人間を救済する者が存在するのだろうか。
それは皆さんのご想像にお任せしましょう
ネオ・クリーチャーの通信システムは、人間でいうテレパシーのように相手に向かって心でメッセージを送るのと同様、口では喋らずに内部に内蔵されている「メンタルコミュニティシステム」というもので会話が出来る。いわば、テレパシーのように心で会話できるのである。しかし、そのシステムに異常があるようだった。
まだ生き残ったネオ・クリーチャー同士で以上の検査をしようとしたその時だった。
突然、辺りに高火力のエネルギー弾が散り、地面がエネルギー弾の衝撃で辺りの砂をまき散らした。
誰かが空中からゆっくりと降下し、地面に足を着けた。何者かを確かめるが辺りの砂嵐で全員前が見えない。
そして、前に立っている者が誰か早く確かめるために、砂嵐を払いながらも前に進む。
「オメガっていうのはどこにいる?ここか?」
その声の方に是認視線を向ける。しかし、目にも留まらぬ速さでネオ・クリーチャーを次々と胴体を斬り刻んでいく。刀らしき武器がネオ・クリーチャーの群れを瞬時に移動していく。そして、斬られて初めて分かったのだ。
ハルマ第1号だ。しかし、斬られ終わった者は、上半身と下半身が分裂され、そのまま床に倒れこむ。
「ここにはいないようだな」
残り数体のネオ・クリーチャーが黒い装甲の者に殺られないように身構えた。
「なぜ我々を襲う。まさか人間共の味方になるつもりか?」
するとその返事が全員に返ってきた。
「今あるこの世界の平和のためだ。そのための礎となれ」
黒い装甲のハルマが、相手を翻弄させるような素早い動きで、敵の攻撃を避けながら、隙あらば容赦なく体を両断していく。
自分のコピーであるネオ・クリーチャーの攻撃はだいたい予想がついているようだ。自分ならどう攻撃するか。それを考えている。そして、動作がほぼ的中し読めるのだ。
一撃も食らうことなくネオ・クリーチャーを片付け、オメガを探し出す。しかし、それらしい人物はいなかったようだ。
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辺りが真っ白の広々とした空間にオメガ様と私はいる。ここはクリーチャーの開発に使用する研究所。ここでクリーチャーが誕生した。
5年前のことだった。人工知能の進化は人間の予想を上回る勢いで進んでいた。この研究には、よりこの社会を、未来の技術の可能性が発見できるかもしれない。そう私以外の研究者も望んでいた。そして開発に成功したのがクリーチャーだ。人間がコントロールすることのできる賢い操り人形。これは後に企業でのワークスタイルを変え、人間の活動を補助する物として利用できる。それだけではなく、医療での患者の手当てや、災害時による救護の道具といて軍事にも役立てられる。誰もがそう信じていた。
しかし、私たちはそれを人間に提供するためにはいろいろとクリーチャーのサンプルが必要だった。そのため実験としてクリーチャーを使用した可動の実験を行った。だが、研究者はそのシステムを悪用した。人間社会にはそういった新たな物、人々を支える物を悪用する人間は必ずいる。
研究者にもそんな奴がいて、そのせいでクリーチャーを使った暴動を起こした。私は裏切られたのだ。この先の未来に人間を支える物だったはずが、世界を破壊する兵器のようになってしまったのだ。
結局止めようも、現代兵器では倒せない。だから研究所を荒らされた。壊された。そしてイカれた連中に悪用され町は崩壊した。
クリーチャーを止めるために必要な物を作らないといけなかった。そのために開発したのがネオ・クリーチャーである。
ネオ・クリーチャーはクリーチャーを悪用する者を排除し、クリーチャー撲滅のための存在だった。
そこでハルマ第1号が誕生した。威力をクリーチャー以上に上げ、自立してターゲットを排除するように設計した。
そのためにネオ・クリーチャーは知能指数を上げようとしたが、これがハルマ第1号を暴走させてしまった原因だ。
私以外の者は皆ハルマに殺され、もはや止められるのは私だけだった。だが出来なかったのだ。
そして彼をどう対処するかを放棄した私は、この世界の崩壊を見届けることにした。もう止められる者がいない。だから、ハルマの海の親として彼を見届ける。私も彼と同じこの世界を破壊するものとして生きることにした。
人間はみんな屑で愚かなのだ。クリーチャーを悪用するのは人間の本能だ。だから仕方がない。止めることはできない。ならば、人間ごと滅ぼそう。そして、ネオ・クリーチャーの支配する新たな世界を作ることに賛成したのだ。
ハルマ第1号も、人間を観察する知恵が備わり、破壊を行った。人間の世界は何をやっても平和にはならない。平和など不可能だ。そう判断していた。今の我々のように。
しかし、人間が使用する戦闘兵器と彼のパワーで巨大な爆破に巻き込まれたハルマは、ブレインのデータが破損してしまい死んだ。しかし、それは仮死状態だった。
そして、過去の記憶をなくした彼は再び蘇ったのだ。
ハルマはそこまで詳しく自分のことを知らない。彼の記憶がなくとも、我々は覚えている。4年前の事件をね。
オメガ様に彼の話をしていると、妙に嬉しそうで楽しい表情を浮かべる。
彼もネオ・クリーチャーだ。しかもハルマのタイプとはまた別で、彼の身体はあらゆる武器が体内に備わっている。本物のサイボーグだ。
もはや人間と同じような形のネオ・クリーチャーとは違い、よりサイボーグ化したのがオメガ様だ。
「にやけが止まりませんか?」
「そりゃねぇ。彼と戦ってみたいというのは何度も聞いているだろ?彼を超えてみたいんだ。だから、欲しいんだ。かつてこの世界をネオ・クリーチャーの世界に導こうとした者を。我々にとってヒーローになってもおかしくなかった彼をね。頼もしい仲間がいたほうが心強くていいだろう?同じ者として仲間にしたいんだ。そして彼を超えてみたい。彼は俺にとって最高の友でありライバルさ。だからどうしても手に入れたいんだ。彼を。ハルマ第1号を」
やはりにやけ顔になっている。どうやらだいぶ気に入っているみたいだ。
さて、後はハルマの決断次第だ。どうする?黒い人間...。
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エルガと離れて、俺は今研究所の最上階にいる。真っ白な艶やかなタイルに包まれたフロアには、真ん中に大きな装置が設置されてある。その装置が我々ネオ・クリーチャーのエネルギーを創り出す高炉となっている。これによりネオ・クリーチャーのパワーがダウンしても、再び健全な状態へとパワーを上げてくれる。
この装置にはその他にも、クリーチャーの修理、データの管理、内部の改造システムが備わっている。
これ一つにクリーチャーのトラブルを改善させるシステムが蓄積されており、いつでもクリーチャーの開発に取り組めるのだ。
負傷したクリーチャーのメンテナンスはここで行われる。尚、この中にあるデータは今後の新たな時代を創るための貴重な資料となる。
クリーチャーの誕生はここから始まった。そしてこの忌々しい人類が、ついに我々ネオ・クリーチャーによって破壊される。
もうすぐ人類の歴史にピリオドが打たれる。その犠牲にはなってほしくないのが彼だ。
ネオ・クリーチャー第1号、ハルマだ。黒い人間と世間で呼ばれ、数々のクリーチャーをたった一人で滅ぼしてきた。
だがその正体はかつて今ある世界の破壊を始め、平和を奪った者。ネオ・クリーチャーはそういう存在であり、彼はその象徴だ。我々と共に新時代の幕開けを手伝ってくれ。それが俺の願い。
俺は巨大な高炉を見つめ彼が今何をしているか考える。
数分経って、このフロアが少し揺れ始めたのが伝わってきた。地震か?一体何が起きているのか。
俺はフロアに向かう際に使用したエレベーターに乗ろうとしたその時だった。
いきなり背後から何か爆破する音が聞こえ、後ろを振り向いた。
「お前が...オメガ、だな?」
「...ハルマ第1号」
「お前の部下共に教えてもらった。ここが俺たち、ネオ・クリーチャーを造った施設なんだって?俺たちが死ぬにはちょうどいい場所じゃねぇか。仲良く心中しようぜ」
床を突き破ってきたのは、黒い装甲の者。これがハルマ第1号及びネオ・クリーチャーの第1号だ。
床に上半身を降ろしていた彼は、すぐに起き上がり俺を見ている。そのバイザーの奥で。
「なぁ、エルガも呼んで欲しいんだが、どこにいる?」
「フン。残念だがここにはいないね。彼に何かメッセージがあるなら伝えておくが。言いたまえ」
「いや、直接聞きたいんだがなぁ。あと、もう時間もないようだし。まぁとりあえず、お前だけは片付ける」
そう言って彼は、筒状の物に何か小さなチップらしきアイテムを装填させ「YES」と一言答える。すると、先から刀の刃の形をした黒い長細い物体が現れた。
右手に力強く握りしめた後、刃の部分を右肩に乗せる。その状態でこちらに向かった走ってきたのだ。
どうやらこれから彼と一戦を交えることになるだろう。
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「おらぁぁぁぁぁ!」
怒声を交えた掛け声と共に、俺は刀をオメガというネオ・クリーチャーに向かって振りかざす。オメガは華麗に俺の剣捌きをを避け、隙を見つけられた間に強烈な蹴りを食らってしまった。その蹴りは、装甲にもダメージを与え、内部にまで食らった感覚を伝達させる。
こいつは俺のコピーの奴とは違うな。何か身体を改造してやがる。俺は瞬時に頭の中でそう予想した。
俺が躊躇している間に向こうから反撃をしてきた。こっちはさっきのダメージがまだ身体に残っている。こいつは気を抜いていたら確実に殺られる。
俺が何とかギリギリのところでオメガの打撃技を避け、隙を見つけようとしたが見つけられない。それどころか防御さえも出来なかった。
何故こいつだけこんなにも手強いのか。
「お前、どうなってんだ?なんでこんなに!」
「俺はお前のコピーであるが、それと同時に通常のクリーチャーが使用できる効果技も使用可能なんだよ。パワーは同じでも、それ以上にクリーチャーは持つ様々な効果を使いこなしてる。俺のほうが上なのはそのため。お前はただのネオ・クリーチャー。俺は両方の特性を持つ者!」
台詞の後にこれまた強烈なアッパーを顎に食らった。俺の身体が数センチ宙に浮いた後、後ろ回し蹴りにより後方へ吹き飛ばされた。顎と胸辺りがダメージにより痛みを感じる。そのまま背中から倒れ、背中にもダメージがある。
「うっ...。アイツ、俺よりも凶悪な奴になりそうだなぁ」
俺がぼやいた後オメガがボソッと何か言った。
「この程度なのか?」
何がと返事をした俺に、オメガはこう返す。
「お前がこの世界を滅ぼそうとした。その規模は絶大であり、もはやお前が戦ったネオ・クリーチャーに比べれば遙かにパワーが上な筈。どういうことだ?」
俺は立ち上がり言った。
「こっちが聞きたいくらいだよ。お前はただのネオ・クリーチャーじゃないんだろ?」
「それでもこの差はおかしい。どういうことなんだ一体」
「んなこと言ってられんのも今の内だけどな。言っただろ?俺たちはここで死ぬって」
「そうだ、それは何なのか聞きたいなぁ」
だが俺は答えなかった。
それよりも俺が聞きたいのは、4年前のことだ。俺がどういう奴だったか詳しく聞きたかった。だから知っている人物と言えばエルガだけだと思った。しかし、こいつも知っているようだ。
俺はオメガに質問をした。
「それより、お前は知ってんのか?俺が4年前どういう奴だったか?この世界を壊そうとしたっていうのを聞いたぞ。その時の状況が知りたいなぁ」
「4年前ねぇ。お前は我々にとってヒーローだよ。人類をたった一人で滅びしていく中、君は1度死んだ。仮死状態でね。そして君は、自動修復機能によってその1年後によみがえった。だが残念なことに、お前はその時の記憶がない。記憶までは修復不可能だったようだな。だが、お前の功績は素晴らしいものなんだ。是非胸を張ってほしい。俺も一度は拝見した。そして俺は気に入った。仲間にしたくなったんだ。そして、再び見習った。その栄光を俺に引き受けようとエルガも手伝ったんだ。そして我々ネオ・クリーチャーはこの世界に宣言する。『この世界に革命を起こす』とね。愚かで救いようのない人間を滅亡させ、新たなる生命であるネオ・クリーチャーによる新時代を開拓したい。人間のいない世界。それが本当の平和だ」
俺はすべてを聞いて思わず仮面の下でにやける。そうか...。やはり俺はかつてこの世界の平和を壊したんだな。
確か1千万人も命を奪ったんだっけな。もう俺は凶悪犯であることに変わりはない。
俺はオメガの食らった痛みを堪え、反撃をする。敵の動きに集中し、しっかりと目を見て隙ができる瞬間を確認する。
オメガが拳を顔面に一発ぶつかるのを見抜いた俺は、同時に左手で拳をキャッチした。そして、素早く刀で一振りオメガに食らわせようとしたが、なぜか瞬時にキャッチされた。
その状態でオメガが言う。
「だから、お前もこっち側に戻ってきてほしい。人間はクリーチャーを使って人間の生きる世界に害をもたらした。どれ程の犠牲が出たか。同じ種族同士傷つけあい、平和な街を破壊し、欲や野望に飲み込まれこの町に生きてきた。皆クリーチャーを求めては破壊を繰り返し、互いに共存することもしない。人間はなぜ一人で生きていけないか。それは一人一人が責任感がなく、自立心が乏しく、他人を傷つけるのが好きだからさ。孤独になるのを恐れるが集団になれば間違ったことでも多数決で多い方が正しいと判断する。だから無理なのさ」
「じゃあ、俺たちはそんな事がないっていうのか?」
「まぁ、ネオ・クリーチャーは人間とは違い知能数も高い。及び人間では成し遂げられないことも成し遂げられる。また、人間と違い自ら学習しようとする思考も高いため、君も記憶力や判断力が極端に高かったりするだろう?」
俺たちはお互い腹部を蹴り、距離を離した。
確かにそうかもしれない。俺の記憶力、それに様々な武器を開発する技術力もあったのは不思議だった。やっとその答えがわかった。間違いなく俺はネオ・クリーチャーなんだ。俺は確信する。
「お前はネオ・クリーチャー。人間が世界を汚すための道具を片付けをするなんて言う汚れ仕事をするのがヒーローではない。人間を滅ぼしてこそ本当のヒーローだ」
俺は左手をキャノンに変える。そしてエルガの発言にこう返した。
「確かに人間ってどうしようもない種だよな。クリーチャーを対峙できた俺だったから平和にできただけで人間の
力ではどうすることも出来ないし、そもそも全ての悲劇を招いたのも人間だ。クリーチャーは悪くない。本当の悪は人間なんだなぁ」
「やっとわかってくれたか!ならば、もう答えは決まっただろ!我々と共に人類を滅ぼし...」
「だが、人間だろうがクリーチャーだろうが世界の平和を壊す奴はみんな止める。俺がかつて世界の平和を壊したように。俺は戦うぜ。今度は、今あるこの世界の平和を愛する者のために」
「もうお前は人間を守るヒーローなんかじゃない。そんなことしても4年前の罪は消えるわけではないぞ!」
「そんなもん知ってる!俺はいろんな連中に何度も言ってきた。まぁ、お前に言うのは初めてだがな。俺は人間のためじゃない。この世界の平和のためだ。俺は、今あるこの世界を守るんだ!俺はヒーローでもない。だが悪でもない。ただ今ある平和のために戦う『黒き戦士』だ!」
俺はエネルギー弾を辺りに放つ。オメガは必死に身構えながらも俺を止めに行こうと近づいてきたが、クレーンで天井に登り上からエネルギー弾を投下させる。途中で謎の大きな装置に的中し、フロア中に大きなボリュームのサイレンが鳴り響いた。辺りに赤いランプが点滅し、フロア中が真っ赤に変わった。その中でひたすらエネルギー弾を発射し続ける。
オメガが何か言っているようだが、装甲のマスク内にも影響するほどのうるさいブザーとサイレンの音で何も聞こえなかった。
エネルギー弾をオメガめがけて放とうとした時だった。
オメガの身体から4つの触手が現れ俺に纏わりつく。地面に引きずり降ろし、今度はランチャーで俺の装甲に売ってきた。何発もの弾丸が装甲とぶつかり、火花を散らして地面に砕け落ちる。
俺は刀で触手を切り離すと、今度はスモークを取り出してオメガに投げつける。煙幕が周りを囲い俺はバイザーのクリアヴィジョン機能で障害物を透明化にして奥が見えるようにした。オメガの姿が見える。煙幕の中を堂々と立っていた。
俺は距離を近づけながら膝蹴りを食らわせることに成功した。その下敷きになったオメガは、強力で俺の上半身を両手で支えそのまま前のめりにさせられたと思ったら、勢いよく前方に飛ばされた。フロアの壁に衝突し地面に倒れる。
やはりオメガだけはただ者じゃなかった。
俺はオメガをどう対処するべきか悩みながらも立ち上がり、キャノンの銃口をオメガに向けた。しかし、瞬間的ともいえるスピードでこちらに走ってきて銃口を掴まれた。そして、刀とキャノンを勢いよく握り破壊されてしまった。
「黒き戦士...お前のその正義、ここで終わらせてやる」
だが、俺の身体がだんだん麻痺していき動きにくくなったのと同時に、オメガも身体から火花を散らしながら前のめりで倒れる。
「ようやくか...よ」
オメガはゆっくりと俺の顔を見て言う。
「何を...した...」
俺はオメガに向かって答える。
「地下のクリーチャーのアクティブプロテクターシステムを...シャットダウンした。ただし...あれは...リミッター式だから、時間がここまでが最低だったんだ。そのあとに爆破できるよう起爆装置もセットした。恐らくシャットダウン後に爆破する。これで俺たちクリーチャーは全員死ぬ。仮死状態とかはなく、永遠に動かなくなるだろうな」
「誰がそんな...もの」
俺は考えたが恐らくエルガだろう。何かあった時のために秘密で作ったのだな。
もうオメガは動かなくなった。それと同時に俺も意識がなくなっていく。ゆっくりとその場に倒れる。指先を動かそうとしたが無理だった。もう何も考えることが出来なくなっていく。何かが俺から離れていく感覚がする。恐らくこれが魂という奴なんだな...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうやら地下のクリーチャーの意識を保ち機能するアクティブプロテクターをシャットダウンされたようだ。
これですべてのクリーチャーは死んだと言えよう。私が念のために作った装置にオメガかハルマのどちらかが停止させたのかもしれない。
私が起動してもよかったのだが、あの後爆破が起きて何も使えなくなったのだ。
つまりこれは、人類はクリーチャーによる破壊から免れ助かったという結末となったわけだ。
私たちはこの世界でまだ生きていくことを許された。しかし、人間は助かったとは言え全てが終わったわけじゃない。我々人間は愚かで救いようもなく、このまま衰退を続く世界に取り残されたのだ。
人間はより良い社会を目指し、人間を支える物を生み出す。それは時代と共に進化していくだろう。その過程で人間は新たな生命の発見により人間を超える存在を生み出す。今この物語を読破している間にも、その存在は私たちの生きるこの世に姿を現していることでしょう。
その正体は果たしてこの人類にどう影響を及ぼすのか。その生命は人間達をどう見るのだろうか。
もしその存在は人類を滅ぼしていき、人間が生きる世界を破壊する時が来た場合、誰が助けてくれるだろうか。そんな人間を救済する者が存在するのだろうか。
それは皆さんのご想像にお任せしましょう
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