黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

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「うおおおおおおっ!」

俺は、心の奥底から叫びを上げた。邪神の宝石のレプリカが、俺の決意に呼応するように、これまでとは比較にならないほどの禍々しい黒いオーラを迸らせる。全身の血管が沸騰し、意識が焼き切れそうになるほどの強大な力が、俺の体を駆け巡った。

「なっ……その力は……!?」
アルドレッドが、俺の異変に気づき、驚きの表情を浮かべた。

「アルドレッドォォォッ!」
俺は、獣のような咆哮と共に、アルドレッドに向かって突進した。その速度は、もはや人間のそれを超えていた。

アルドレッドは、咄嗟に黒い障壁を展開したが、俺のレプリカから放たれた極太の黒いビームは、その障壁を紙のように貫き、アルドレッドの肩を掠めた。

「ぐあああっ!」
アルドレッドが、苦痛の呻きを上げる。彼の肩からは、黒い血のようなものが流れ出ていた。

「ウルフルム……! すごい力……でも、なんだか……怖い……」
ルナが、俺の放つ禍々しいオーラに怯えたように、小さな声で呟いた。

(すまない、ルナ……。だが、こうでもしないと……!)

俺は、アルドレッドに反撃の隙を与えず、怒涛の連続攻撃を仕掛けた。黒いビーム、黒い斬撃、そして、オーラを纏った拳打。その一つ一つが、アルドレッドを確実に追い詰めていく。

「馬鹿な……! たかがレプリカの力で、この私が……!」
アルドレッドは、信じられないといった表情で後退する。彼は、邪神の宝石の力を自分のものにしているとはいえ、まだ完全に制御しきれていないようだ。一方、俺は、レプリカの力を限界まで引き出し、まさに捨て身の覚悟で戦っていた。

「これで、終わりだあああっ!」
俺は、渾身の力を込めて、黒いオーラを纏った剣をアルドレッドの心臓目掛けて突き出した。

しかし、その瞬間。
アルドレッドの背後から、ぐったりとしていたはずのガランが、突如として立ち上がった。そして、その目は……血のように赤く染まり、焦点が合っていない。

「ガランさん……!?」
俺は、驚きのあまり動きを止めてしまった。

「フフフ……フハハハハ! 遅かったな、ウルフルム!」
アルドレッドが、狂ったように高笑いした。
「我が偉大なる邪神様は、ついにこの肉体を得て、降臨なさったのだ!」

ガランの体から、邪神の宝石のそれとは比べ物にならないほど、巨大で、そして絶望的なまでに邪悪なオーラが立ち昇った。それは、もはやガランではない。何者かに体を乗っ取られた、恐るべき存在だった。

「そんな……嘘だろ……」
俺は、目の前の光景が信じられなかった。

「さあ、邪神様! まずは、その小生意気な小僧から血祭りに上げてくだされ!」
アルドレッドが、邪神に乗っ取られたガランに命じる。

「グオオオオオ……」
邪神ガランは、獣のような低い唸り声を上げ、ゆっくりと俺の方を向いた。その赤い瞳には、一切の理性も感情も感じられない。ただ、純粋な破壊衝動だけが渦巻いている。

「ガランさん! 目を覚ましてください! 俺です、ウルフルムです!」
俺は、必死に呼びかけた。だが、その声は届かない。

邪神ガランは、その巨腕を振り上げ、俺に向かって叩きつけようとしてきた。その一撃は、アルドレッドの比ではない。まともに受ければ、俺の体など一瞬で砕け散ってしまうだろう。

「危ない、ウルフルム!」
ルナが、俺の前に飛び出し、調和のオーブを掲げた。オーブから放たれた白い光が、邪神ガランの腕に当たり、その動きをわずかに鈍らせる。

「ルナ!」

「ガランさんを……助けるんだ!」
ルナの瞳には、恐怖の色もあったが、それ以上に強い決意が宿っていた。

(そうだ……まだ諦めるわけにはいかない……!)

俺は、ルナの言葉に勇気づけられ、再びレプリカの力を高めた。相手は、敬愛する隊長が邪神に乗っ取られた姿だ。だが、それでも戦わなければならない。ガランさんを、あの邪悪な存在から解放するために!

「邪神め……! ガランさんの体を返せええええっ!」
俺は、邪神ガランに向かって再び斬りかかった。

邪神ガランの動きは、ガラン本来の戦闘技術と、邪神の圧倒的なパワーが融合しており、凄まじいものだった。俺は、レプリカの力を限界まで引き出して応戦するが、徐々に押されていく。

「くっ……強い……!」

ルナも、調和のオーブの力で邪神ガランの動きを牽制し、俺を援護してくれるが、邪神の力はあまりにも強大で、オーブの光も徐々に弱まってきている。

「フハハハハ! 無駄だ、無駄だ! 邪神様の力は無限だ! お前たちのような雑魚が、どう足掻こうとも勝てるわけがない!」
アルドレッドが、高笑いしながら戦況を見守っている。

その時、俺たちの背後から、ザナックと他の隊員たちが駆けつけてきた。彼らは、影の兵士たちを何とか退けたようだ。
「ウルフルム! 加勢するぜ!」
ザナックが叫び、邪神ガランに斬りかかる。

しかし、邪神ガランはザナックの一撃を軽々といなし、逆に強力な一撃を叩き込んだ。
「ぐはっ!」
ザナックは、地面に叩きつけられ、動かなくなってしまった。

「ザナックさん!」

他の隊員たちも、次々と邪神ガランに挑みかかるが、まるで歯が立たない。邪神の圧倒的な力の前に、なすすべもなく倒れていく。

(ダメだ……このままでは、全滅してしまう……!)

俺の心に、絶望の色が広がり始めた。レプリカの力も、もはや限界に近い。体のあちこちが悲鳴を上げ、意識が朦朧としてくる。

「もう……これまでか……」

俺が膝をつきそうになった、その時。
俺の懐で、何かが微かに温かく光った。それは、ルナが以前、ドラゴンの姿だった時に残した、あの乳白色の宝石――今はルナの力の一部となっているはずの、ドラゴンの魂の欠片だった。

そして、その光に呼応するように、ルナの体が眩い光に包まれた。
「わたしが……みんなを……守る……!」
ルナの声が、いつもよりも力強く、そしてどこか神々しく響き渡った。

光が収まった時、そこに立っていたのは、いつもの小さな少女の姿ではなかった。
銀色の髪はさらに長く輝き、頭の角は雄々しく天を突き、そして背中には……純白の美しい翼が広がっていた。それは、まさしく、かつての白きドラゴンの姿を彷彿とさせる、神々しいまでの変身だった。

「ルナ……!?」
俺は、息を飲んだ。

「邪悪なる者よ……。もう、誰も傷つけさせない……!」
覚醒したルナ――いや、白き竜の化身は、そう言うと、邪神ガランに向かって力強く羽ばたいた。

その翼から放たれる聖なる光は、邪神の禍々しいオーラを打ち消し、森全体を清浄な空気で満たしていく。

「な、なんだ、あの姿は……!? まさか……本当にドラゴンの……!?」
アルドレッドが、驚愕と恐怖に顔を引きつらせた。

邪神ガランも、覚醒したルナの姿に一瞬怯んだように見えた。しかし、すぐに獣のような咆哮を上げ、ルナに襲いかかる。

だが、覚醒したルナの力は、もはや以前とは比較にならない。彼女は、華麗な動きで邪神ガランの攻撃をかわし、逆に鋭い光の爪や、聖なる炎のブレスで反撃する。

その戦いは、まさに神話の一場面のようだった。
邪神と、聖なる竜の、壮絶なる激突。

俺は、ただ呆然と、その光景を見つめることしかできなかった。
そして、心の中で強く願った。

(ルナ……勝ってくれ……! ガランさんを……みんなを……救ってくれ……!)

ルナの聖なる力が、邪神の闇を打ち破ることを信じて――。
俺は、最後の力を振り絞り、立ち上がろうとした。
たとえ、この身が砕け散ろうとも、彼女の戦いを、最後まで見届けるために。
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