黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

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ルナが俺たちとの記憶を失い、聖なる光を失ってしまったという事実は、俺たちに計り知れないほどの衝撃と絶望を与えた。彼女の存在は、これまでの戦いにおいて、常に俺たちの心の支えであり、希望の光だったからだ。

「ルナちゃん……! そんな……嘘だろ……!?」
ザナックは、信じられないといった表情で、意識を失ったルナに駆け寄る。

「カイロス……! よくも……よくもルナ様を……!」
アルドリスは、怒りに顔を歪ませ、カイロスを睨みつけた。

「フハハハハ! どうだ、これが絶望というものだ! お前たちの絆など、しょせんはこの程度のものよ!」
カイロスは、高笑いしながら、さらに終末の砂時計の力を解放し、俺たちに襲いかかってきた。

彼の操る時間の力は、あまりにも強大で、ルナを失った俺たちは、もはやまともに抵抗することすらできなかった。カイロスは、俺たちの過去のトラウマや弱点を的確に突き、精神を徹底的に追い詰めていく。

ザナックは、再び過去の仲間を失った時の絶望感に苛まれ、戦意を喪失しかける。
アルドリスは、兄アルドレッドの幻影に唆され、自らの闇の力に再び飲み込まれそうになる。
カイとリアラは、互いを守ろうとするあまり、連携が乱れ、孤立してしまう。
リオとセナは、自分たちの無力さを痛感し、戦うことへの恐怖に囚われてしまう。

そして俺、ウルフルムもまた、ルナを失ったという絶望感と、仲間たちをまとめきれないリーダーとしての無力感に打ちのめされ、虹色に輝いていた魂の剣も、その輝きを完全に失いかけていた。

「もう……終わりなのか……? 俺たちは、ここで……」
俺の心に、完全な諦めの念がよぎった、その時。

「フン……期待外れだな、ウルフルム。お前たちの絆も、所詮はその程度だったか」
冷たい声と共に、俺たちの前にクロノスが現れた。しかし、その表情は、いつもの冷静沈着なものではなく、どこか歪んだ、嘲るような笑みを浮かべていた。

「クロノス……!? お前、一体何を……!?」
俺は、驚いてクロノスを見た。

「私は、時の略奪者・カイロスが、未来の可能性の一つとして残しておいた『最後の切り札』。カイロスが敗れた場合、この時間軸そのものを破壊し、全てを『無』に帰すための存在だ。お前たちの絆が強ければ強いほど、その絶望もまた深くなるというわけだ」
クロノスの正体は、カイロスの分身、あるいは後継者とも言える存在だったのだ。そして、彼がウルフルムたちに協力していたのは、絆の力を最大限に高めさせ、それを一気に絶望へと叩き落とすためだった。

「お前も……カイロスの仲間だったのか……!」
俺たちは、愕然とした。信じていた仲間からの裏切りは、俺たちの心にさらなる絶望を刻みつけた。

クロノスは、懐中時計を掲げ、終末の砂時計の力をさらに増幅させた。世界の時間が急速に歪み始め、空間には亀裂が走り、そこから虚無の残響・エコーが、以前とは比較にならないほどの強大な力を持って溢れ出してきた。

「さあ、始めようか。世界の終焉を告げる、最後の祝宴を!」
クロノスは、高らかに宣言した。

アトロポスもまた、クロノスの力によって完全に復活を遂げ、運命の糸を操り、俺たちの未来を絶望へと紡ぎ変えようとする。

クロノス、アトロポス、そして無数のエコー。
絶望的な戦力差の前に、俺たちはなすすべもなく打ちのめされていく。
ザナックは倒れ、アルドリスは闇に囚われ、カイとリアラ、リオとセナもまた、力尽きていく。

そして、ついに俺も、クロノスの時間の力によって動きを封じられ、その胸に致命的な一撃を受けてしまう。
「ぐ……ああ……っ……」
俺の意識は、急速に遠のいていく。虹色の魂の剣も、砕け散ってしまった。

「ウルフルム!」
薄れゆく意識の中で、ルナのか細い声が聞こえたような気がした。

クロノスは、倒れた俺を見下ろし、そして意識を失っているルナに近づいた。
「さて、ドラゴンの娘よ。お前がその聖なる光を完全に手放せば、この世界の終焉を、ほんの少しだけ遅らせてやってもいいぞ?」

その時、どこからともなく、アウストラの凛とした声が響き渡った。
「……待ちなさい、クロノス。あなたが弄んだ『記憶』の真実を、今こそ明らかにする時です」
アウストラは、ガラン元隊長と共に、戦場に駆けつけてくれたのだ。彼らは、世界連合の最後の力を結集し、この絶望的な状況を打開するために現れた。

アウストラは、星詠みの力で、クロノスがルナから奪った記憶の真実を暴き出す。
「ルナが失ったのは、ウルフルムとの『悲しい記憶』や『苦しい記憶』だけではありません。彼女が自ら封印したのは、ウルフルムと共に未来を歩むという『強い願い』と、仲間たちへの『絶対的な信頼』の記憶。それは、絆の試練において、彼女が自らの意思で選択した『覚悟』の証なのです! そして、その記憶は、彼女の魂の奥底で、今もなお輝き続けている!」

アウストラの言葉は、まるで奇跡のように、ルナの心の奥底に眠っていた記憶を呼び覚ました。
「ウルフルム……みんな……! そうだ……私は……!」
ルナの瞳に、再び強い光が宿る。そして、彼女の体から、これまでにないほど温かく、そして力強い聖なる光が溢れ出した。それは、ドラゴンの始祖とも言える「原初の光の竜」の力の一部が、彼女の魂と完全に融合した瞬間だった。

ルナの覚醒した光は、倒れていた俺の体に流れ込み、砕け散ったはずの魂の剣の破片を、まるで磁石のように引き寄せ始めた。そして、その破片は、ルナの聖なる光と、俺自身の魂の奥底から湧き上がる不屈の闘志、さらには仲間たちの諦めない心が共鳴し合うことで、再び一つに結びつき、以前にも増して強く、そして温かい虹色の輝きを放つ、新たな剣として再生されたのだ。

「これは……俺の剣が……!?」
俺は、その奇跡的な光景に目を見張った。それは、もはや邪神の宝石のレプリカの力ではなく、俺と仲間たち、そしてルナの絆そのものが形となった、真の「魂の剣」だった。

そして、その光は、仲間たちの心にも届き、彼らを絶望の淵から呼び戻す。

「みんな……! 行くぞ!」
俺は、新たな力を感じながら、再び立ち上がった。

ウルフルムと仲間たちは、ルナの覚醒した力と、ガランたちの援護を受け、クロノス、アトロポス、そして無数のエコーに最後の戦いを挑む。

それは、もはや個々の力を超えた、絆と希望の総力戦だった。
ウルフルムの虹色の剣は、クロノスの時間の支配を切り裂き、
ルナの聖なる光は、アトロポスの運命の糸を浄化し、
仲間たちの連携は、エコーの虚無の囁きを打ち破っていく。

激しい戦いの末、アトロポスとエコーは完全に消滅する。

残るは、クロノスただ一人。
「なぜだ……なぜ、お前たちは時間に、運命に、そして虚無に抗えるのだ……!?」
クロノスは、絶望の声を上げる。

ウルフルムは、クロノスに告げる。
「時間は、誰にも支配できない。それは、未来への希望を紡ぐための、大切な贈り物なんだ。そして、俺たちの絆は、どんな運命だって変えてみせる!」

しかし、クロノスは最後の力を振り絞り、自らの存在そのものを時間の爆弾へと変え、世界そのものを道連れにしようとする。

絶体絶命の状況の中、天空の聖域で出会った、時間を司る女神ホーラが降臨する。

「……クロノス。あなたの歪んだ時は、ここで終わりです」
ホーラは、その絶対的な力で、クロノスの時間の爆弾を無力化し、そして、彼をカイロスの呪縛から完全に解放する。

クロノスは、本来の時の精霊としての心を取り戻し、自らの過ちを深く悔いた。そして、彼は最後の力で、歪んでしまった時間軸を修復し、世界を救う。

クロノスは、ウルフルムとルナに感謝の言葉を述べ、そして静かに消えていった。いつか、また正しい形で時の流れを見守る存在として転生することを願いながら。

世界は、真の危機から救われた。ウルフルムとルナの絆は、さらに強く結ばれ、仲間たちとの信頼も揺るぎないものとなった。

彼らは、これからもこの世界の平和を守り、そして未来への希望を紡いでいくことを誓う。
ウルフルムは、真の英雄として、そしてルナは、全てを愛する聖女として、人々の心に永遠に生き続けるだろう。

物語は、ここで大団円を迎える。
しかし、彼らが紡いだ希望の物語は、これからも新たな世代へと受け継がれていく。
そして、ウルフルムとルナ、そして仲間たちは、この平和な世界で、また新たな冒険の予感を感じながら、未来へと歩き出すのだった――。
もしかしたら、彼らの旅は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
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