黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

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絶望的な状況の中、俺、ウルフルムの心は折れかけていた。仲間たちの苦しむ声が、アトロポスの嘲笑と共に脳内に響き渡り、虹色の魂の剣も、もはやその輝きを失いかけている。

(ダメだ……もう……どうすれば……)

俺が膝をつきそうになった、その瞬間。
脳内に、直接、清らかで、しかし力強い声が響いてきた。

『ウルフルムよ、顔を上げなさい。あなたの心の中の光は、まだ消えてはいません』

「その声は……ホーラ様……!?」
俺は、驚いて顔を上げた。それは、確かに時間を司る女神ホーラの声だった。

『調律者が操るのは、あくまで可能性の一つ。未来は、決して一つではないのです。そして、古の盟約の真の意味は、宇宙のバランスを保つこと……それは、光と闇、秩序と混沌、そして「選択」とその「結果」、その全てを受け入れ、調和させること。調律者は、その盟約の負の側面――誤った選択がもたらす破滅の可能性――を具現化させ、世界を「無秩序」へと導こうとしていますが、それもまた、宇宙の大きな流れの一部に過ぎません』
ホーラの言葉は、まるで聖なる響きのように、俺の荒んだ心に染み渡っていく。

『ウルフルム、あなたの仲間たちは、今、それぞれの過去と未来の可能性に囚われています。しかし、それは彼らが弱いからではありません。むしろ、彼らがそれだけ強い想いと、深い絆を持っている証なのです。彼らを救う鍵は、あなた自身の心の中にあります。あなたが、仲間たちを信じ、そして未来を諦めない限り、道は必ず開かれます』

「俺の……心の中に……?」

『そうです。そして、もう一つ……あなた方に、力を貸してくれるかもしれない存在がいます。彼らは、調律者の出現を予期し、長きにわたり、その対抗策を練ってきました』

ホーラの言葉と共に、俺の目の前に、突如として空間の歪みが生じ、そこから二人の人物が姿を現した。
一人は、深い青色のローブを身に纏い、その瞳には宇宙の深淵を宿したかのような、賢者の風格を漂わせる老人。
もう一人は、燃えるような赤い髪を持ち、その両手には炎を纏った短剣を握りしめている、若く、そして精悍な女戦士だった。

「驚かせてしまったかな、ウルフルム殿」老人は、穏やかな声で言った。「我々は、『星の守り人』。古の盟約が破られ、調律者が目覚めるこの時のために、代々知識と力を受け継いできた者たちだ」

「まさか……あなた方が……」
俺は、驚きを隠せない。

「アトロポスの記憶操作は、確かに厄介だ。だが、我らが持つ『真実の星鏡(しんじつのせいきょう)』を使えば、その幻惑を打ち破ることができるやもしれん」
赤い髪の女戦士――名をフレアという――は、自信ありげにそう言うと、懐から星形の美しい鏡を取り出した。

「そして、アルドリス殿とセナ殿が解読を進めていた星の民の石板……あれにも、調律者に対抗するための重要な手がかりが記されているはずだ。我々が、その解読を手伝おう」
賢者――名をアークという――は、アルドリスとセナの幻影が囚われている方向を見据えながら言った。

「だが、なぜ俺たちを……?」

「それは、お前たちが、女神ホーラ様が言われた『揺るぎなき絆と、未来を諦めぬ心』を持つ者たちだからだ。そして、お前たちのその魂の剣……あれは、かつて我らが祖先が、調律者に対抗するために鍛え上げようとした『希望の剣』の、未完成の姿に酷似している」
アークの言葉に、俺は自分の剣を見つめた。この剣に、そんな秘密が……?

「時間はあまりない。ウルフルム殿、あなたはこの『真実の星鏡』を使い、仲間たちの心の闇を照らし、彼らを幻惑から解放するのだ。フレア、お前はウルフルム殿を援護せよ。私は、アルドリス殿とセナ殿の元へ向かい、石板の解読を急ぐ」
アークは、的確に指示を出すと、その姿を空間の歪みの中へと消した。

「さて、ウルフルム殿。まずは、どの仲間から助けに行く? 時間は限られているわよ」
フレアは、不敵な笑みを浮かべ、俺に問いかけた。

女神ホーラの啓示、そして「星の守り人」と名乗るアークとフレアの出現。それは、絶望の淵に立たされていた俺たちにとって、まさに天からの助けだった。

俺は、フレアから「真実の星鏡」を受け取った。その鏡は、温かく、そして清らかな光を放っている。
「……ありがとう、フレアさん。そして、アーク様にも、よろしくお伝えください」

俺は、まず、最も苦しんでいるように見えたザナックの元へと向かう決意を固めた。
「ザナックさんを、助けに行きます!」

「了解したわ。私も、少しは役に立てるはずよ」
フレアは、炎の短剣を構え、俺の後に続く。

仲間たちを救い出し、そしてアトロポスを打ち破るために。
そして、その先に待ち受ける調律者との戦いに備えるために。
俺たちの、反撃の狼煙が、今、上がろうとしていた――。
「星の守り人」という新たな協力者を得たことは、俺たちの希望を繋ぐ大きな力となるだろう。
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